ここから本文です。
多くの人々は、既に完成させたいイメージの像が頭の中にあり、それを実現するために素材を選び、立体に起こそうとする。そこでこのワークショップでは、参加者が素材そのものをよく観察し、ふれてみることで、その素材の特質から生まれるイメージを捉え、それをもとに造形に挑戦することを目的とした。
1日目は、水の入ったビニール袋をモチーフとして、線材・面材・塊材に対応した立体造形に取り組んだ。まずはじめに全参加者が粘土を使って造形し、その後は各々が工作用紙と竹ひごのどちらか1つを選び、制作した。水の入ったビニール袋は一定の量感を湛えており、同じく量感のある粘土でこれをつくるのは、参加者が粘土自体に慣れていることもあり、比較的容易に取り組めているように見えた。
午後からは線材としての竹ひご、面材としての工作紙のどちらかを選び、それを用いて水の入ったビニール袋をつくった。両素材とも量感に乏しい素材であり、参加者は試行錯誤しながら水の入ったビニール袋の感覚をいかに表現するかに苦戦していた。それでも参加者の中にはモチーフの持つかたちの成り立ちや物質性などから特質を抽出し、竹ひごや工作紙の性質を利用してこれをうまく捉えようとする姿が見られた。
2日目には参加者に粘土の塊とゼラチンの塊を手渡し、それらを用いて2つの素材を組み合わせたひとかたまりの作品をつくるという課題を設定した。特にゼラチンは柔らかく、一度切断するとくっつけることができないという使いにくさから、はじめ参加者は戸惑っていた。そこで、まずはアイデアをスケッチすることから始めた。筆が止まり始めたところで、素材そのものに焦点を当てたアーティストの作例を紹介した。その後はじめのものとは別に粘土とゼラチンを用意し、それを使って色々試してもらうことで、粘土とゼラチンを使うことへの抵抗を減らすようにした。そうして遊ぶことで現れた成果物を互いに確認し、そのアイデアや着眼点を共有し合った後で、再び粘土とゼラチンを用いた作品の成立を目指した。
時間をかけて粘土とゼラチンに向き合う中で、初めはおっかなびっくりだった参加者もだんだんと大胆になり、粘土とゼラチンを混ぜてみたり、粘土板の上から机の上まで作品を展開したりするような取組も見られた。
最後には各々の成果物について意見を交わし、素材の特質をもととして表れる面白さを確認した。また、スタッフから様々な素材を用いるアーティストの作品を紹介し、素材から生まれる作品の広がりについて考えた。
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください
こちらのページも読まれています
同じカテゴリから探す