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掲載日:2019年1月10日

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ワークショップ活動の記録「塊から/への センス」

「塊 から/への センス」

  • 日時:2018年9月15日(土曜日)、16日(日曜日) 10時~15時
  • 場所:創作室1
  • 担当:大嶋貴明(当館学芸員)、細谷美宇(当館学芸員)
  • 参加者:1日目8人、2日目9人

1日目 9月15日(土曜日)

10時~ 粘土で真球をつくる

簡単なあいさつの後、最初の課題に取り組む。
水粘土1人4kg程度を配布し、直径15cm程度の真球を粘土で作る。
作り方は人それぞれだが、どうしたら正確な真球がつくれるか、粘土に慣れながら試行錯誤してみる。粘土板の上で転がす・手で丸めるなどの方法では歪みやすい。ある段階からは、粘土板の上に置いて、四方八方から見ながら粘土をかちっと(面を決めながら)つけたりとったりしたほうが彫刻家らしい作り方。

ワークショップの様子1

10時40分~ 最初の話

タイトル「塊 から/への センス」と名付けた、今回のワークショップの問題意識、立場について話す。
かっこよいものを、みつけられるか/つくれるか、そこで働くセンス(感性)について考えたいが、日常用語としては混乱して使われる感性と感覚の違いをとりあえず、説明する。
「感覚」は感覚器官から受け取る外部刺激で、その感覚は常に非選択的に働いている。
「感性」は外界と関係しながら、感受、判断や価値決定、感情の動きなどの無自覚的・直感的・複雑な情報をとりまとめる印象評価(論理的評価ではなく)。「理性」との違いにも注意する。

まず、性格の違う塊から、働く感覚・感性の違いを感じ取ってみる。

水粘土の真球では、正確さに対する感覚・感性が働く。
この課題は油粘土で行うことが多いが、今回は水粘土を使った。素材の条件としては作業上難しくなるが、1/100mmを合わせられるかどうか。職人だと1/1000mmで感覚が働く方もいる。

11時05分~ 粘土で「団子」をつくる

球と同じくらいの大きさの「団子」をつくる。真球とどう違うのか?

11時15分~ 作った「団子」を見てみる

「食べたい」と思えるのはどれか?
たとえば平たさ、張り(表現されている質を感じさせる曲面)、塊から受けるやわらかさはどうか。
真球を目指したものは無機的な感じがする。
個人それぞれに団子の経験があり、定義がある。経験値が高い対象ほど心を動かされやすい。「団子」に見えるかどうか、おいしそうに見える団子を作れるかどうかは、感性の問題に関わる。

ワークショップの様子2

11時30分~ 粘土で立方体をつくる

真球の直径程度を一辺の長さとした粘土の立方体をつくる。
粘土板にたたきつけて面を作るとひずみ歪んでしまう。
大まかに形ができたら粘土板に置いて、道具も使いしっかりと面・角をつくると、箱ではなく立方体に見えてくる。

ワークショップの様子3

(休憩)

13時~ 立方体と球体、両方の性質をもつ塊をつくる

真球、団子、立方体の3つの塊を並べて見てみる。
よく見た後、立方体と球体、両方の性質をもつ,ほぼ同じ大きさの塊1個をつくる。

ワークショップの様子4 ワークショップの様子5

14時~ つくった「立方/球体」を鑑賞する

真球と立方体の間に、つくった塊を置き、鑑賞する。
ポイントは、真球や立方体のどの要素が含まれていればそれらしく見えるか、という点。
たとえば三方向直交の角があれば、立方体のように感じる。では球はどうだろうか。
もう一つのポイントは、立体として一つになっていなければならないのでそれをどのよう成立させるか。立方体と球体の中間値をだすような機械的な解決方法でよいだろうか。
通常、経験したことのない矛盾した塊をつくるときに感性はどう働くか。元の形がくずれ変形していくとき、どの段階までもとの形が感じられ、どこから別の形と認識するだろうか。

14時50分~ 15時宿題の説明

2日目の最初の課題は紙、布、綿のうち2種類を使って塊をつくる。いいかえると、塊材で可塑性のある粘土を使わず、面材や可塑性は持たない材料で「塊」を作る。今回、紙をつぶして紙粘土化したり、ぎゅうぎゅうに丸めたりするのは禁じ手。この課題への作戦を考えてくる。

2日目 9月16日(日曜日)

10時~ 紙・布・綿のうち2種類を使って塊をつくる

内容を考え取り組む人、素材を扱いながら考える人。
紙(青色)は切って使う人が多い。布は普通の布と不織布が用意された。

ワークショップの様子6

10時50分~ つくった塊を鑑賞する

「塊に見えるかどうか」「どのようなアプローチだったか」などを話題にしながら見る。
塊に見えるかどうかは、素材の見せ方に関係し、たとえば紙なら、平らにしておくより曲面を出して、対応する曲面同士が互い関係に一つの塊の対面や連続する面の一部に感じられるほうが塊に見える。
自分の感性的判断だけではなく、つくられたものを見る他者の感性(心)を動かせるか。

ワークショップの様子7

11時30分~ 次の課題の説明

カンディンスキー≪水門≫のカラーコピーが配られる。
この絵画を多数の色面の集まりとみて、一つ一つの色面を色の塊として、粘土で粘土板の上に表現する。レリーフや模写ではない。
色面を塊でとらえることへの疑問が多く出る。
色面の広がりについて、それが表す形や空間の量(volume)を含んで、色面をマッス(mass)という造形用語がある。もともと、輪郭線で囲われた中を塗るというよりも、形や内部の充実を感じ取っている感性の問題。作品を構成する一つ一つの色の広がりを、厚みのある質のともなった粘土の広がりに置き換える。

ワークショップの様子8

(休憩)

13時10分~ 「色面の塊」を鑑賞する

筆触にひっぱられずに、色面の広がりが粘土の広がりに置き換えられるているか。

ワークショップの様子9 ワークショップの様子10

13時45分~ カップ、コップ、グラス類を見る/分類する

  • 1 スタッフがカップ、コップ、グラスに分類する。
  • 2 別のスタッフがある秩序を持って一列に並べる。
    持ち手の太さで並べた。
  • 3 参加者(代表)が5つのグループに分ける。
    回転体でできる形状と実際の形状との差の違いで分けた。
    参加者はそれぞれ、分類するところを見ながら考える。
    この課題では、いくつかのものが集まると、秩序(規則性)が無数に生まれる可能性があり、中には、これまで経験のない秩序があるかもしれない。秩序形成にもセンスが働く。

ワークショップの様子11

14時20分~ グラスを選び、あう物を選ぶ

気に入ったグラスを1つ選び、作業スペースに持ってくる。
そのグラスと並べたとき、それとは全然違うが面白そうだと思う物を1つ、創作室で探す。
探した物を先のグラスと並べて置く。

ワークショップの様子12

14時25分~ グラスと物の間にある規則性を強化する塊を粘土でつくる

それぞれの物体が持つ性質や要素をよく見てみて、新たな粘土の塊(立体)をつくってみる。が、なかなか手がかりがない。方針が立った参加者から徐々に作り始める。
規則性というよりは、ストーリーを作って(感じて)いる参加者が多いかもしれない。

ワークショップの様子13 ワークショップの様子14

14時40分~ 15時 鑑賞、まとめ

各参加者は自分のイメージやストーリーを語り、それを聞くことで他の参加者は見ている物に納得する場合が多い。また、制作物の塊としての強さや力は、粘土という素材の扱い方に大きく左右されていたようだ。

ワークショップの様子15 ワークショップの様子16

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