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机に順次4人ずつ着席。それぞれが緩いグループとしてワークショップを進める。おのおののグループにはスタッフがファシリテーター役としてつく。ファシリテーターからそれぞれのメンバーに煎茶が出される。
参加者はさまざまな反応を示していたが、一つの行為・出来事で様々な感覚が働いていることをリラックスして確認するのが目的。お茶を味わう、ということに五感だけではなく、運動感覚や内臓感覚、人間関係の認識などが、意識的・無意識的に働き、「味わい」に収れんしていく。その過程を楽しむことが、このワークショップの目的でもあり、進行の鍵になる。
タイトルの「探検」は「散歩」と言い換える。この後出かける散歩では、未知の空間を探るとか、既知の空間の中の未知の物を探すというより、意識的に既知の空間を目的なしに歩いてみる。名所旧跡めぐりでも、観光でもなく、「探す」という目的や目的地に到達するための単なる過程でもない。「純粋な散歩」を目指す。
8月のワークショップ「コラージュへ」、9月のワークショップ「塊 から/への センス」に続いて、今回は「感覚 で/の 探検(散歩)」。「コラージュへ」ではイメージ=心象がテーマ、センスは感性、今回は感覚で、外界(世界)と内界(心)の関係でいえば、徐々に接面のほう、より外側になってきている。ワークショップは逆の順にやったほうがやりやすかったかもしれない。ただし、日常的にそれらの言葉を使う時は、意味的には混じり合って使われているので、厳密化しづらい。とりあえず、感性が判断と結びついているのに対して、感覚はより直接的で否応もなく心身に生じているものとして意識してみる。
また、外界認識には視覚が優位になっているが、今回は、できるだけ視覚以外の感覚や内臓感覚や体勢感覚も意識化してみる。
もう一点、普段意識化しない感覚を使うだけではなく、自己の感覚それ自体がどんなものか探ってみることも、このワークショップのテーマになっている。このとき、鋭敏さや優れたものをワークショップとして追求していくわけではない。できるだけ、日常の中での普通の感覚の有り様を大事にしていく。今回の散歩は可能な限り、特別なものにしない。でも、世界の中を歩いていくと、様々な刺激やイメージが襲ってくるし、内的に想起・想像する。それらはできるだけ大事に確保していく。
今回は、たまたま散歩という手段をとるが、自己の感覚を楽しみ、豊かにイメージを想起・産出するのは、それぞれ自分の得意な時間の過ごし方でよい。
最初に飲んだのは、それなりの価格の煎茶だったが、このワークショップの最後には、ティーバッグのお茶をのんでどう感じるかで、このワークショップを締めようと思う。
聴覚、味覚、体勢感覚や運動感覚など視覚以外の感覚を確かめてみる。
画像は、触覚。手のひらを合わせて、どちらがどちらに触れているのか、右手と左手の感覚を分け感じ取っている様子。
散歩コース:高低、広狭、明暗、遅速など、空間や時間感覚の変化がリズミカルにおこるコースを選んだ。
創作室2-美術館通用口-元支倉-川内大工町-為朝神社-仲の瀬橋歩道-西公園-大橋下-広瀬川早坂淵脇-銭形不動-花壇-東北大学グラウンド-藤阪神社-地下鉄東西線大町西公園駅-地下鉄移動-川内駅-東北大学川内キャンパス-萩ホール前-三太郎の小径-川内郵便局前-創作室2
ワークショップではない散歩だと、散歩それ自体で終わり、そこから何かをすることはあまりない。今回はワークショップなので、この散歩を、別なものに置き換え、自分が感覚・想起したものを再確認してみることを2日目にはおこなう。このとき、散歩の全体に注意してみること。
参加者から:自分の過去の生活圏を歩いたので、思い出すものが多かった。
:自分では行かないところが新鮮。
:地下鉄が不思議とおもしろかった。ワープ感覚。
2日目は、昨日の散歩で発生した感覚や心象を再構成する。今回は、ここまで最終形態やその方法を決めずに来た。再構成にあたっての条件はいくつかある。
一つは、再構成されたものを自分も含めて参加者間で再確認できるものにすること。その方法は本来各自の得意な手段でよいが、例えば、パフォーマンスや音楽、朗読あるいは、散歩Ver.2など形に残らないものではなく、今回は、消えて無くならないものをつくる。また、映像など、創作室で設備が用意しきれないものも今回は使わない。
二つめは、部分で全体を表す方式(お土産で全体を表す)や、類似な表現物(写真やスケッチ)などを用いて済ませるのは、今回は簡単になってしまう場合があるので禁じ手にする。
まず、それが最終形態になるかはもう少し先送りするが、散歩での感覚や事物、出来事一つ一つを思い出して言葉にし、ふせん紙に書き出して、模造紙を“場”に見立て、マッピングしてみる。これを一人で行うと無意識化されるものが多くなって、結果的に世界が貧しくなり、行き詰まる場合があるので、共同化してグループごとにおこなう。グループ内での方法はファシリテーターを交えて決めながら進める。
各参加者はグループで進めることにとまどいがあるのか、まず個人で感覚や出来事を思い出しながら書き出していった。この段階では、記憶が定かではなくても、とにかく多く書き出すことを優先すべき。マップの形式については、空間を中心に考えるか、時間軸でつくるか、シーケンスをどうするかなど、不慣れであればあるほど、不思議な形式が生まれる可能性がある。
散歩の空間の変化は、ワープするようにおこるのか、グラデーションなのか、カットイン・カットアウトなのか。その違いがわかるようにグループで分析して提示された言葉のマップ上での位置を整理してみる。
各グループのファシリテーターがグループメンバーからの補足をまじえつつ、現状の報告。どんな言葉が書き出され、それをどんな形式で並べているか。
他のグループの経験や分析方向を知ってみる。
この段階では、まだまだ、書き出されるものが足りていない。また、場を示す台紙(方眼入り模造紙2枚)をどう生かすかは各グループとも再検討が必要に見える。そして、ワークショップは参加者の多様性や複数性を前提にしているが、それをどう生かすか。散歩の場を共有したが、感覚したものは各人違うものがあるはず。マップは、それらを合成したもので、共同主観的な散歩の全体像であると仮定して、進める。
書き出された感覚や事物が増えると、マッピングも展開スピードが上がっていく。一方で、情報量が増えると、整理がむずかしくもなる。実際の散歩も一様なものではなく、空間やシーケンスが分節されるが、それはマップに生かせるか?
このワークショップの問題点が際立ってくる。
本来、マッピングは中間形態のはず。しかし、このワークショップはここまでで時間切れになりそうなので、マッピングの段階を十分に行って、終わることにする。
各グループ、マッピングされた散歩を報告。
コースの高低差に注目したグループ、感覚や出来事の価値の差を表したグループ。完全にフィクションとしての散歩物語をつくろうとしたグループなど、グループごとの個別性が際立った。
ワークショップの構想だけに終わった最終の形について、言葉によるマップから、再度、造形素材の組み合わせに置き換える。その時、例えばコラージュの場合、コラージュする支持体を、実際の散歩コースの空間の雰囲気の変化や分節に対応させて、複数あるいは多数化してみる。それぞれの基底面の大きさや広がりは、物理的空間や時間に縮尺を合わせるより、主観的な広がりや伸び縮みに対応させる。これを参加者個々に個人にもどってつくってみる。というものであった。
ワークショップの場では、「感覚」や「共同することで成立するもの」、「その世界の全体を表現する方法の条件」について対話しながら終了・・・。というところで最後のお茶を思い出し、ティーパックのお茶を飲んで解散。
「これもおいしい・・・」
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