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参加者に自己紹介を兼ね、このワークショップに参加した理由を話してもらう。
「物からうつしとる影」というタイトルに惹かれたという人が多かった。
何人かは共通して、「物」や「影」などの言葉に不思議さを感じたようだ。
三次元の「物」に光があたって二次元の「影」が生まれると、なにか思いもよらないイメージが現れるかもしれない。
今回のワークショップのねらいは、つくるための技術を得るだけではなく、思いもよらない新しいイメージやアイディアを持ち帰ってもらうことだと伝えた。
参加者各々が気になる物を持ってテラスにでて、自分や物の「影」を見る。
物の形状や透明度、変化する物体(ホースからでる水など)で影がどうでるかを観察した。
各自のカメラ(携帯電話などの機能もOK)で、「影だけ」を撮影し、全員で見せ合った。
ふたつ以上の物体を組み合わせて感光紙の上に配置し、感光紙を使って現れる形や調子を楽しむ。
今回は一部を覆い光に当てたあと、アイロン等で熱を加えると、光の当たらなかったところが青く発色する感光紙を使用。
スタッフが手順を説明したあと、参加者は数枚ずつ制作し、お互いの作品を鑑賞した。
現れた画像の不思議さは、「物」自体の形や配置によるものなのか、
それとも光の強さによる濃淡の調子によるものなのだろうか?
「陰」「影」はどちらも「かげ」のことだが、立体のうち光が当たっていない部分の「陰」に対し、
光が遮られてできた「影」は平面的な性質をもつ。
午前中に制作した感光紙の画像から各自1つを選び、青い部分(影になっていた部分)を切り抜く。
切り抜いたものを裏返すと濃淡の調子が消え、二次元にうつされた「影の形」の輪郭がはっきりする。
向きや角度などを変更できる撮影用ライトをつかって、壁に影を投影する。
参加者は、気になる物を持ち寄り、影をつくってみる。
影の輪郭を厚めの紙に書き写し、切り抜く。(この紙は翌日に使用する)
昨日切り抜いた紙を見る。
向きを変えるなど、元の物体の形をうつしとったものとは違う、切り抜かれた形自体のおもしろさを探してみる。
タルボットやマン・レイの作品を参照しながら、印画紙に直接露光して像を定着する「フォトグラム」について説明。昨日の感光紙による制作と似ているが、フォトグラムでは露光した部分が黒くなり、光の当たらなかった部分が白く残るので、印象としては色調が反転する。また、暗室での作業が必要になる。
スタッフの作業を見て手順を確認し、まずは全員が一回ずつフォトグラムに挑戦。
暗室になる場所(創作準備室)。印画紙(露光しないよう袋に入っている)、光源(懐中電灯)、現像液、停止液、定着液(ワゴンの上)などを用意。
(左から)暗室での作業、水洗い、干しているところ
フォトグラムの体験をふまえて、瑛九の作品画像(油彩、版画、フォトグラム等)を見る。
瑛九《影》1958年 油彩 宮城県美術館
瑛九は「フォトデッサン」と自称するフォトグラム作品を制作しており、さまざまな物体のほか、切り抜いた紙も使ってイメージを作り出していた。これらは光によるデッサンとも考えられていた。
瑛九のフォトデッサンを参考に、参加者も昨日切り抜いた「影の形」を型紙として用い、制作を重ねた。
露光をともなう暗室での作業は、一人ずつ行う。
待ち時間には、できたものをじっくり見て、次の制作の計画をたてていく。
強い光を短い時間で揺らさずにあてると、きりっとした明暗がうまれ、
逆に、弱い光を比較的長くゆらしてあてると、暗めのハーフトーンが全体につく。
参加者は徐々にこうした効果をコントロールし始めた。
また、光を遮る物体の配置も型紙を平らに置くだけではなく、深さのある物体や半透過の物体、印画紙との間を空けるなどの工夫が施された。
各自3枚程度制作できたところで、乾燥用のヒモにそれぞれのマイベスト作品をつるして、全員で鑑賞。
新鮮なイメージを楽しんだ。
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