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最初に、ワークショップについての説明。「徹底鑑賞」とあるとおり、パウル・クレーの作品について、参加者全員で徹底的に鑑賞するワークショップである。今回は、講師からクレーについて予備知識となるような話は極力せず、参加者自らの眼で発見するのが大切であること、を伝える。続いて参加者が自己紹介。クレーの作品について、好きではあるが難解で自分には理解できない、という印象を持つ人が多かった。
常設展示室へ移動。ウォーミングアップを兼ねて、講師がファシリテーターとなり、カンディンスキーの作品を全員で鑑賞しながら、描かれた内容(物語)を中心に絵を見る見方と、素材や技法などの造形的要素に着目し、物質として絵を見る見方とを体験した。
先にカンディンスキーの作品を通して体験した二種類の「絵の見方」で、各自がクレーの作品をよく観察する。展示されているクレー作品の中から、あらかじめ講師が4点の作品を選び、参加者にランダムに割り振った。いつもの自分流の見方にとらわれすぎないよう、上記の「絵の見方」に即したワークシートを各自に配布し、それに基づいて、一人一人が絵と向き合った。
創作室に戻り、同じ作品を見た人同士でグループを作って、各自のワークシートをもとに意見を出し合いながら、さらに作品を詳細に分析した。同じ作品でありながら、メンバーの意見がかなり異なっており、まとまらないグループもあった。しかし、まとめることより互いの意見を聞くことで、さらに作品をよく見ることが、このグループワークの目的である。
グループごとに分析の結果を代表者が他の参加者に説明した。各グループの発表後、一つの作品を例にとり、実際にクレーが読んでいた小説の場面と作品とを見比べながら、実際にクレーがどのように画面を構成したかを講師が例示した。作品ごとに異なるものの、どのグループも、クレーが音楽、戯曲、小説、現実社会の状況、自分自身の感情など、あらゆるものを絵の要素としていたことや、素材、技法においても様々な方法を取り入れていたことなど、クレー作品を構成する重要な点に迫る分析を行っていた。何よりも、ここまで徹底的に絵を見る経験することで、今後美術館で絵を楽しむときに、少しでも自分自身の見方が広がっていれば幸いである。
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