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デモンストレーション
浮世絵版画制作の流れ、制作面(分担方法)から見た木版画の分類、多彩な摺り技法などについてお話をうかがった。
参加者からの質問も多く寄せられた。
質問内容は見当の付け方、版木はどのくらい(何枚摺るまで)もつのか、紙やその原料についてなど多岐に渡り、ひとつひとつ丁寧に回答いただいた。
道具や版木もご紹介いただいた。
写真(右)はバレンの中を見せていただいたところ。
一勇斎国芳(歌川国芳)《萩に鮎》(復刻・15版)×2枚
事前に新聞紙を湿らせ、摺った版画を置くための床を用意する。
紙が乾いてしまうと縮んで見当(多色摺りの際、いくつもの版を同じ場所に摺るための印)がずれてしまうため。
絵の具(顔料を水や膠で溶いたもの)や糊、水、刷毛、ブラシなども用意してセッティング。
講師持参の道具
両面彫りの版木
まずは主版(主な線による版)を摺る。
版木を湿らせしばらく待つ。色が入りやすくなり、版面に自然に色が乗るようになる。
絵の具と糊を版面でブラシによって混ぜ合わせる。
見当を合わせ、バレンで摺り上げる。
紙の繊維の間に色が摺り込まれるので、摺ったものをすぐに同じ床に重ねても色が移ったりはしない。
摺り順は、一般的に薄い色や、面積の小さい部分を先に摺るが、摺師によって異なる。
ぼかしの幅や形など画面構成や色のバランス、摺りの技術を様々に駆使しながら、木版画としての最良の色と表情を出して完成させていく。
同じ動作で色数を摺り重ねていく。
当日は多くの参加者に恵まれたため、モニターによる作業手元の上映も行った。(写真右)
バレンを替えて摺り方に変化をつける。こともある。
バレンを持つ手のどこに力を入れるかでも摺り上がりや風合いに影響する。
版木や和紙の状態によって、和紙に色が摺り込まれない(摺った時の色の出方が悪い)ときは、通常は一度摺りのところをうすい色で二度摺りしたり、水摺りをしたりしてよい表情の摺りを目指す。
広い面を摺る時には版面全体を湿らせ、糊で膜を作ってから色をのせる。
このような下準備をしてから摺らないと、版木の中に以前に摺った色が残って、シミのように点々と出てくることがある。
ぼかしでは水で湿らせた木綿の布を使う。
版面に水をのせて5~6分なじませ、ぼかしの少ない(色の濃い)部分の水分を取ってから色をのせる。
沼辺さんのご厚意により、見学している方にも少しだけ摺りを体験していただいた。
やはり、均一に摺り込むのはなかなか難しい。
2枚のうち、1枚は水摺りを実演していただいた。
水摺りは潰し摺りの特殊な技術で、版面に色をのせてから摺る直前に和紙に水をはって摺る。
この技法では、和紙の繊維の中に色が摺り込まれていき、木版独特の色と表情を出すことができる。
完成した2枚の作品を見比べ、実演終了。
ぼかし部分の色の濃さ・幅の広さや水摺りの有無など、異なる仕上がりを見せていただいた。
15時~15時30分 鑑賞&トーク「良い摺、悪い摺」
最後に、持参していただいた版画を鑑賞しながら、摺りの各種技法を実見した。
また、職人の関わる木版画のオリジナル性や摺りだけで可能な表現の豊かさについて、沼辺さんのご経験や日頃心がけていることなどをうかがった。
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