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参加者が創作室にやってくると、机の上に広げられた、何点かの銅版画に出迎えられた。
銅版画は見慣れていないと、ペンでのドローイングのようにも見えたりする。
間近でインクの浮き上がりやプレスする際にできる凸凹(エンボス)などを見てみた。
銅版画は、なんだか手順が多そう、薬剤を使いそう、などと、難しいものだと思われがちだ。
このワークショップは、銅から傷跡をうつすだけという凹版画の基本的な原理を理解し、銅という素材の特徴やうつす行為を楽しむことを目的とした。
凹版画の原理を、凸版画と比べながらお話した。
版の断面を見たときに、凸の部分にインクが乗るのが凸版画。
凹んだ部分にインクが詰まるのが凹版画。
版画といえば、学校で習う木版画(凸版)などはなじみのある人が多い。
銅版画をはじめとする凹版画は、インクがつく部分が逆なのでイメージしにくかったりする。
同じ版(銅版画の版)を凹版画、凸版画としてそれぞれ刷ってみる。
バレンとプレス機の刷りの違いなども実践。
参加者にははじめてプレス機を触る人も多かったため、圧のかかり具合を変えて回し、感触を確かめた。
次は実際に、創作室の試用の版を用いて参加者自身が銅版画を刷ってみた。
紙は事前に湿しておく(左)、版にインクを詰める(右)
余分なインクを拭き取る(左)、プレス機で圧をかける(右)
午後のはじめ、参加者がこのワークショップで使用する銅板を配布。
一見新品のようだが、銅板の表面にはいくつもの傷がついている。
両面の傷を見て、まず自身の版の「表」を決める。
「表」が決まったら、金やすりとスクレーパーを用いてプレートマーク(プレス機での印刷をスムーズにするために作る、版の端の傾斜)を作る。
早めにプレートマーク作りが終わった人たちで、インクを練ってみる。
後に刷りをして実感することになるわけだが、インクの硬さや練り加減は刷り上がりに影響する。
この日は3種類インクを練ったが、そのうちひとつは柔らかすぎてうまく刷りとれない仕上がりに。
プレートマークができあがったら、銅の板に元々ついていた傷跡をうつしとってみる。
傷跡は、すでに版として画を描いている。午前中に体験した銅版画の刷りと同じ要領で刷りとる。
とはいえ、ほぼ新品のままの銅の板を刷れば、どこに画があるかわかりづらく、細かな傷を刷りとるのも難しい。1人3枚刷ることとして、だんだんと作業に慣れた。2枚目、3枚目と刷っていくうちに、プレス機の圧力、インクの硬さ、拭き取り方、紙の厚みなどの影響が明らかになる。
3枚刷れたら、一番よく刷りとれたと思ったものを水張り。
うつしとった傷を確認し、自分が気に入った傷を見つける。
気に入った箇所をそのまま残しておきたい人は、版の該当部分を黒ニスで覆っておく。
覆った部分は、新たに傷がつきにくくなるほか、翌日の作業の際、気に入った箇所の目印にもなる。
2日目は、1日目に銅の板からうつしとれた傷跡を活かしながら、さらに傷を加える。
まずは傷をつけられる道具になるものを、創作室で探してみる。
銅版画で使う道具以外でも、銅より硬い素材であれば石や釘のようなものでも使える。
さまざまなもので、銅の板に傷をつけてみる。使うものによって傷の表情もさまざま。
傷がついたら、どのようにうつしとれるか試し刷り。
昼休みをとった後のタイミングで、他の人の制作を見てみる。
午後は、午前中とは違ったアプローチも試してみたいところ。
描きたいイメージを最初に持って下絵などを持ってきた人は、忠実にイメージを再現することよりは、どのような傷のつけ方が自分のイメージに合うかを試してみる。
傷をつけるだけでなく、磨くことによって傷をなくすという方法をとる人もあらわれる。
磨くにしても、紙ヤスリ、金属磨き粉、バニッシャーなど使う道具はさまざま。
試しに刷ってみると、思い通りの画になっていないということもある。
何度も繰り返して、版を作りこんでいく。
最後に、それぞれの参加者の、1日目に最初の傷だけうつしとったもの、2日目の試し刷りの経過・最終版として選んだもの、など3~4つの作品を、参加者全員で鑑賞した。
傷跡をつくり、うつしとっただけでも、点・線・面など異なった表現や傷の深浅によるインクの濃淡など、さまざまな画が現れた。
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