農業早期復興プロジェクト/耐塩性作物による早期経営改善対策/現地試験における除塩処理後の施肥方法の検討と生育確認/野菜栽培現地試験
(農園研 園芸栽培部)
津波による海水流入地で早期に野菜栽培を開始するため,被災した現地ほ場において多種の野菜を栽培し,栽培可能な品目を検索するとともに,野菜の生育に影響を与える海水流入ほ場特有の問題点を抽出し,その解決を図ります。
試験・調査概要
県内の津波による海水流入ほ場において津波による瓦礫を撤去し,ほ場の整備をおこなった後,各種野菜をそれぞれの播種適期に播種または移植しました。
耕起・施肥等の肥培管理を現地の慣行栽培に準じて行い,生育状況や収量・品質等を調査した。
- 試験ほ場
- 仙台市実証圃(6a)
- 海岸より約2.5km内陸の仙台市二木地区の名取川左岸河川敷内に立地。
- 津波により2日間程度海水滞留,海砂等若干の津波堆積物あり。
- 岩沼市実証圃(10a)
- 海岸より約2km内陸の岩沼市下野郷地区の小河川背後地に立地。
- 津波により3日間程度海水滞留,ヘドロ等若干の津波堆積物あり。
- 南三陸町実証圃(5a)
- 海岸より約0.5km離れた南三陸町戸倉地区の段々畑に立地。
- 傾斜地につき,津波により海水滞留は1日程度,大量の瓦礫があり栽培前に撤去を要す。
- 供試材料
- アブラナ科
ブロッコリー早生,キャベツ早生,カリフラワー,ハクサイ,ダイコン,聖護院ダイコン,からみダイコン,カブ,ナバナ,三陸つぼみ菜,カラシナ,コマツナ
- アサザ科
ホウレンソウ
- キク科
シュンギク,リーフレタス
- 調査項目
- (1)野菜の生育概況(見取り調査)
- (2)野菜の収量・品質
- (3)野菜の生育状況(結果)に影響を与える海水流入ほ場特有の問題点(観察)
- 協力:(株)渡辺採種場
試験・調査結果
- 生育概況
- 野菜の播種後,岩沼市と仙台市では土壌表面に厚さ約0.5~2cmのクラスト(土膜)が発生し,出芽が遅いシュンギクで出芽苗立ちが阻害され,多くの欠株を生じたほか,ホウレンソウ,コマツナ等でも一部欠株が見られたましたが,南三陸町ではクラストの発生はあまりみられず,野菜の欠株は目立ちませんでした。
- 移植した野菜ではクラストによる生育への影響等はみられず,播種した野菜についても出芽苗立ち後は順調に生育しました。
- 各ほ場の全ての品目においてその後の生育は良好に推移し,目立った病虫害の発生もみられませんでした。
- 野菜の収量・品質
- 10月中旬ころよりダイコン,キャベツ等の収量調査を開始し,調査結果は現在未集計ですが,市場の規格と同等の品質のものが多く収穫されています。
- 岩沼市と仙台市のほ場主からは,野菜の生育や収量・品質は昨年とほぼ変わらないとの評価を得ました。
以上の結果から,津波による土壌の化学性の変化等が実証圃と同程度であれば,アブラナ科野菜を中心に野菜栽培は可能と考えられます。
(平成24年3月29日更新)
栽培試験時の土壌の化学性
現地実証圃での野菜栽培
- 各圃場において6~15品目の秋冬野菜を8月上旬より随時栽培。
- 野菜種子は株式会社渡辺採取場より提供されたものを使用し,同社の助言を基に播種または苗による移植を行った。
- 他の栽培管理は現地慣行に準じた。
生育概況
収量調査