農業早期復興プロジェクト/津波被災水田の実態調査と除塩法・栽培管理技術の確立/被災水田における病害虫・雑草の発生状況調査(病害虫)
(古川農業試験場 作物保護部)
津波により海水が流入した農地においてイネを作付けした水田や休耕田における病害虫の発生実態を調査して栽培管理上の問題点を抽出するともに,今後の農地復旧に向けて必要な対策を講じるための基礎とします。
試験・調査概要
- 水稲栽培における病害虫の発生状況調査
除塩作業後にイネを作付けした水田において病害虫の発生状況を調査。
- 調査場所:仙台市3地点,名取市1地点,石巻市4地点,東松島市1地点 合計9地点
- 調査方法:病害虫防除所の発生予察調査に準じて実施
- 調査時期:6月中旬~成熟期
- 調査機関:古川農業試験場,病害虫防除所(調査協力:仙台・亘理・石巻農業改良普及センター)
- 休耕田における斑点米カメムシ類の発生状況調査
被災により休耕し雑草が繁茂した水田において斑点米カメムシ類の発生状況を調査。
- 調査場所:仙台市1地点,石巻市2地点,名取市1地点 合計4地点
(石巻の1地点はコウキヤガラ,他の地点はイヌビエが優占)
- 調査内容:すくい取り調査,産卵状況調査
- 調査時期:7月下旬~8月上旬
- 調査機関:古川農業試験場(調査協力:石巻農業改良普及センター)
試験・調査結果(状況・情報)
- 水稲栽培における病害虫の発生状況調査
- いもち病の発生は認められませんでした。紋枯病は2地点で被害程度が高かったです。
- イネドロオイムシ,イネミズゾウムシ等の初期害虫は一部で確認されましたが,被害程度は低かったです。
- イネツトムシは1地点でやや高い密度で発生しました。
- ヒメトビウンカは全般に密度が高かったですが,加害に伴う縞葉枯病の発生は確認されませんでした。
- 斑点米被害は2地点で0.1%を超えました。近隣に雑草が繁茂した休耕田が存在したことや薬剤防除を実施しなかったことなどが影響したと考えられます。
- 休耕田における斑点米カメムシ類の発生状況調査
- 全地点でカメムシ類が捕獲され,アカスジカスミカメとアカヒゲホソミドリカスミカメが多くを占めました。
- イヌビエおよびコウキヤガラの穂からふ化した幼虫は,いずれもアカスジカスミカメとアカヒゲホソミドリカスミカメのみでした。両種の構成比率は,いずれの草種でもアカスジカスミカメが90%以上を占めました。
(平成24年1月13日掲載)
雑草が繁茂した休耕田におけるカメムシ類の発生状況
コウキヤガラ群生地
イヌビエの穂に集まったアカスジカスミカメ成虫
カメムシ類の発生種と発生密度