農業早期復興プロジェクト/海水流入農地の実態把握と早期改善/塩素濃度の簡易分析法の検討/土壌塩分検知管,カンタブによる簡易分析
(農園研 園芸環境部)
塩害土壌の除塩の指標と各作物の塩害耐性の指標は塩分(塩化ナトリウム)濃度および塩素濃度で示されており,塩素濃度はECと相関が高いことが報告されています(熊本県,香川県)。
普及センター等から塩素およびナトリウムを実測したいとの要望がありますが,分析に時間を要し煩雑であるため,簡易に測定可能な手法を検討しています。
本年度は,機器等の導入を必要としない,土壌塩分検知管・カンタブ等の土壌中塩素濃度測定試薬について検証しました。
試験・調査概要
1.供試試薬
土壌塩分検知管
- コンクリート中の塩素濃度測定用のものを土壌試料に用いる
- 製造元:光明理化学工業株式会社
- 価格:2200円 10本入り
- 塩素濃度0.005~3.0%で測定可能(低濃度用0.05~0.25% 高濃度用0.05~3.0%)
カンタブ
- コンクリート中の塩素濃度測定用のものを土壌試料に用いる
- 製造元:太平洋マテリアル株式会社
- 価格:3本入り12パック 10,500円
- 塩素濃度0.015~2.5%で測定可能(低濃度用0.015~0.35% 高濃度用0.08~2.5%)
2.分析方法
土壌塩分検知管
両側の先端を付属の専用カッターで折る。→
振とう液(試料 対 水=1 対 5)を吸い上げる。→
変色域の目盛りを読む。
カンタブ
→
振とう液(試料 対 水=1 対 5)に下端を浸す。→
変色域の目盛りを読む。
付属の表から値を換算する。
試験・調査状況(結果)
土壌塩分検知管,カンタブはイオンクロマトグラフを用いた精密分析と同程度の精度があり,十分活用できます。
土壌塩分検知管
- 10秒~1分ほどで極めて迅速に土壌試料の塩分濃度を直接測定できます。
- 地下水の塩分濃度も測定可能です。
- 管の目盛りが%なので結果を瞬時に判断できます。
- 管内で詰まるのを防ぐため,振とう液の上澄みまたはろ過液を使用するのが望ましいようです。
- 使用後は産廃扱いとなりますので,廃棄に注意を要します。
カンタブ
- 溶液に浸すのみで,一度に多量の試料を同時に測定できます(10分程度で測定終了)。
- かさばらず,持ち運びが容易です。
- 地下水の塩分濃度も測定可能です。
- 管内で詰まるのを防ぐため,振とう液の上澄みまたはろ過液を使用するのが望ましいようです。
- 使用後は産廃扱いとなりますので,廃棄に注意を要します。
(平成24年3月29日掲載)
精密分析による観測値との相関
土壌塩分検知管
カンタブ
試料の振とう時間
試料の振とう時間も10秒程度で十分