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掲載日:2012年9月10日

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農業早期復興プロジェクト/津波被災水田の実態調査と除塩法・栽培管理技術の確立/土壌塩分濃度が作物生育に及ぼす影響評価(大豆)

 

(古川農業試験場 土壌肥料部)

東日本大震災により,本県の太平洋沿岸地帯の農業は津波によって甚大な被害を受け,早急な農業復興対策の提示・実施が必要となっていますが,灌漑用水を利用した除塩に必要な用水量・灌漑回数・施肥法等の実測データがほとんど無く,有る場合でも高潮等に起因したもので,津波に関連する知見が少ないため,今年度の作付けに向けた除塩作業は,試行錯誤的に実施され,今後の除塩作業に向け,適切な手法と効果検証が求められています。
ここでは,土壌塩分濃度の違いが大豆の生育に及ぼす影響を明らかにします。

試験・調査概要

  • (1)供試品種
    タンレイ
  • (2)供試ほ場
    古川農業試験場G3ほ場作土,風乾土10kgを1/2000aポットに入れ,海水処理し最大容水量の水分に調製。施肥は慣行のとおり。8月18日播種。
  • (3)試験区の構成
    ポット試験:海水添加区(NaCl0.05%,0.1%,0.2%乾土),海水無添加区
  • (4)調査項目
    節数,茎長,分枝数(開花期頃),作付け前の土壌NaCl濃度(水稲と同様の方法で抽出)

試験・調査結果(状況・情報)

  1. 大豆は土壌NaCl濃度が0.05%乾土以下で発芽率および開花期頃の茎長,主茎節数,分枝数が海水無添加区と同等でした。

(平成24年3月29日更新)

大豆の耐塩性

大豆における土壌EC・NaCl濃度と出芽率・開花期頃生育の関係グラフ
大豆における土壌EC・NaCl濃度と出芽率・開花期頃生育の関係

※大豆作付け安全水準は,塩分濃度0.05%(EC0.35mS/cm)レベル

(古川農業試験場 水田利用部・土壌肥料部)

津波に伴う高塩分濃度水田に対し,塩害に弱いとされる大豆作付について除塩後の塩分動態や生育状況から除塩方法及び作付の可否条件などについて検討しています。
過去に鹿島台淵花地区塩害田調査結果報告書(1988年宮城県農業センター土壌肥料部)では,地下の蓄積塩分の毛管上昇による水稲被害が報告されています。
今年度は,除塩対策ほ場での塩害発生地区の特徴を把握し,土性層序から塩害発生の難易を検討しました。

【試験・調査概要】

  • 1)調査地域
    石巻市蛇田地区及び大瓜地区,仙台市六郷地区
  • 2)調査内容
    • (1)生育中の塩害発生ほ場の検土杖による土性層序の記録
    • (2)代掻き除塩後の層位別EC・塩素濃度等の追跡データとの検証
  • 3)除塩方法
    • 蛇田地区:代掻き除塩,弾丸施工なし
    • 大瓜地区:代掻き除塩,一部弾丸施工ほ場有り
  • 4)大豆播種
    • 蛇田地区:7月19日,慣行栽培
    • 大瓜地区:6月下旬,慣行栽培

試験・調査結果(状況・情報)

  1. 蛇田地区のECデータでは,除塩後下層のECは停滞しており,その後ほ場の乾燥に伴い表層での濃度が高まっています。9月21日の台風による冠水により作土は濃度が低下しましたが,次層以下は濃度が維持されています。
  2. 蛇田地区1では,次層以下がシルト質の粘土層で40cm以下にグライ層があり湿潤状態にありました。蛇田地区2では,弱い粘土層であるが大豆が枯死したほ場では地下水が高いほ場でした。いずれの地区でも影響のなかったほ場では湿潤層がなく地下水位の差が影響したと考えらます。
  3. 大瓜地区では,同一ほ場内で大豆の枯死とほぼ順調に生育した大豆がありました。下層に強い粘土層がありましたが,蛇田地区のような湿潤状態ではありませんでした。大豆が枯死した周辺は,作土層の下に砂混じりの層がありこの層位が乾燥時に塩分濃度が上がりやすくしていると考えられます。

以上のことから,大豆の枯死したほ場では,地下水位が高かったり透水性の悪い粘土質の層があり塩分が停滞しやすい条件にあること,又は作土の下に砂混じりの層があり乾燥時に作土層に塩分濃度が上がり易い条件となっていると考えらます。
除塩後の水田ほ場では,湛水管理が可能な水稲の作付を優先し,大豆作付けにおいては,排水性の悪いほ場は避け,生育中の塩分上昇に注意し,常に排水条件を保ち降雨による除塩効果を高める必要があります。

(平成24年3月29日更新)

除塩作業時期と農作業

除塩作業時期と農作業

大豆の写真

※代掻きによる除塩により排水が悪く大豆の播種遅れや砕土率低下
除塩としての溶出法と地下浸透法

除塩としての溶出法と地下浸透法
大豆の塩害(仙台市六郷)

大豆の塩害(仙台市六郷)の写真 大豆の塩害(仙台市六郷)の写真

※初期生育は順調であったが,根の伸びに影響し,後半では葉枯れが
大豆の塩害(石巻市):除塩後の発芽と生育状況(8月中旬) 石巻市蛇田地区

石巻市蛇田地区の写真
(7月19日頃播種) 石巻市大瓜地区

石巻市大瓜地区の写真
(6/下旬播種)

除塩後の層位別ECの動態(水稲)

除塩後の層位別ECの動態(水稲)グラフ
(石巻蛇田区)
下層土に塩分が残るが,湛水管理により作土の塩分濃度は低く維持されている。(大豆)

除塩後の層位別ECの動態(大豆)グラフ
(石巻蛇田区 大豆枯死ほ場 7月19日大豆播種)
下層塩分は停滞し,乾燥が続くと作土の濃度が上昇。

大豆枯死ほ場の層位別土壌 ~土性層序の比較~

石巻市蛇田地区の層位別土壌
大豆の生育悪化・枯死したほ場(石巻市大瓜地区)

大豆の塩害(石巻市大瓜地区)の写真

お問い合わせ先

農業・園芸総合研究所企画調整部

名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

電話番号:022-383-8118

ファックス番号:022-383-9907

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