農業早期復興プロジェクト/耐塩性作物による早期経営改善対策/耐塩性転作作物の検証/ワタ(花き)
(農園研 園芸栽培部)
津波に伴う高塩分濃度水田に対し,塩分濃度の回復までの期間に水田転作作物として利用できる耐塩性の転作作物を選定し,営農回復の促進を図る必要があります。
塩害に強いと予想される棉花の育苗の有無と定植時期および仕立て方法の違いが,生育や収量性に及ぼす影響を検討し,宮城県の気候に適した栽培時期と仕立て方法を明らかにします。
試験・調査概要
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- 供試材料
ワタ(アップランド種)
- 実施場所
所内露地圃場
- 試験方法
- 1)育苗の有無と播種・定植時期の検討
- (1)試験区の構成
- 5月下旬定植区:育苗有,播種日3月28日,定植日5月27日
- 6月下旬定植区:育苗有,播種日5月26日,定植日6月24日
- 6月上旬播種区:育苗無,播種日6月8日
- 6月中旬播種区:育苗無,播種日6月16日
- 6月下旬播種区:育苗無,播種日6月29日
- 7月上旬播種区:育苗無,播種日7月6日
- (2)耕種概要
施肥:基肥N-4kg/10a(CDUたまご化成),追肥無し,ベット幅100cm,株間100cm,1条植え,摘心栽培(主茎100cmで摘心)
- (3)供試株数
1区6~8株,反復無し
- (4)播種・定植方法
各定植区は128穴セルトレイに1粒/穴播きした苗を,露地圃場に5株/穴づつ定植し,14日後に1株に間引き
各播種区は露地圃場に5粒/穴づつ播種し,本葉展開後に1株に間引き
- (5)側枝の採取・開絮の方法
各側枝を1果開絮した時点で主茎から切り取り,無加温ハウス内で保管し,残りの果実を開絮
- 2)仕立て方法の検討
- (1)区の構成
主茎50cm摘心区,主茎100cm摘心区,無摘心区
- (2)耕種概要
播種日:3月28日(128穴セルトレイ),定植日:5月27日
施肥:(1)と同じ
- (3)供試株数
(1)と同じ
- (4)定植方法
128穴セルトレイに1粒/穴播きした苗を,露地圃場に5株/穴づつ定植し,14日後に1株に間引き
- (5)側枝の採取・開絮の方法
(1)と同じ
- 調査項目
草丈,葉数,側枝数,側枝長,開花日,果実数,開絮日等
試験・調査結果(状況・情報)
- 育苗の有無と播種,定植時期の検討を行ったところ,5月下旬定植区の第1花平均開花日は7月下旬でしたが,その他の全ての区は8月下旬となりました。また,5月下旬定植区の第1果実開絮時期は10月上旬でしたが,その他の全ての区は11月17日時点で未開絮でした。
- 仕立て方法を検討を行ったところ,各区の1株あたりの長さ別側枝数は,無摘心区では「30cm未満」,100cm摘心区では「70cm以上80cm未満」,50cm摘心区では「90cm以上100cm未満」および「110cm以上120cm未満」が最も多くなりました。
- 1株あたりの着果数別の側枝数は,無摘心区に比べて摘心区,特に50cm摘心区で1本当たりの着果数が多い側枝が増える傾向でした。
以上のことから,宮城県において11月中旬時点の判断では露地栽培の棉花は開花,結実はするもの開絮に至らない果実が多く,収量に問題がある可能性が示されました。今後,さらに開絮の動向を検討します。
(平成24年1月13日掲載)
ワタの露地栽培(農園研圃場)