農業早期復興プロジェクト/耐塩性作物による早期経営改善対策/耕種的方法による生育改善効果の確認/トマトの萎凋症状等の調査
(農園研 バイオテクノロジー開発部)
土壌への海水流入により園芸作物に生じる生育障害,生理障害,病害発生等を調査しています。
本年度は,施設でトマトを作付けしていた海水流入土壌を用いて,所内温室でトマトを栽培し,萎凋症状を引き起こす土壌病害及び土壌微生物相について調査しています。
試験・調査概要
- 土壌採取地
トマト作付施設内土壌(海水流入地域),平成23年6月1日採取
対照土壌区に使用した土壌は所内の畑地土壌
- 試験場所
所内温室試験:バイオテクノロジー開発部4号温室
- 材料
トマト 接木:桃太郎ヨーク(トマト萎凋病レース1,2抵抗性)
トマト 台木:がんばる根3号(トマト萎凋病レース1,2抵抗性,トマト青枯病抵抗性)
- 試験区
採取土壌による慣行栽培,無除塩区(EC2.1),除塩区(EC0.74),対照土壌区(EC0.03)
EC値は基肥施用前,除塩は水道水によるかん水で実施
栽植距離:ベッド幅90cm,株間40cm,条間40cm,2条千鳥植え(156株/a)
施肥量(a当たり):N,P2O5,K2O 各1.5kg
- 調査項目
- 1)生育概況
- 2)病害菌の単離,培養,同定
- 3)土壌の環境DNA(eDNA,メタゲノム)解析,クローンライブラリ法,PCR検査
試験・調査状況(結果)
- 試験区に用いたトマト作付け後の海水流入土壌からは,全真菌中の6%の割合でFusarium oxysporumが検出されました。
- ECが高い無除塩区では,生育抑制と萎凋症状が現れ半分の株が枯死しました。枯死したトマトの株からもF. oxysporumが検出され,トマト萎凋病と診断しました。植物体及び土壌から単離されたF. oxysporumの分化型・病原性レース等については,未だ確定していません。
- 土壌は海水の流入により30%以上が海洋細菌,特にフラボバクテリウムにより占有され,微生物相は大きく変化していました。海水には細菌が多く含まれ,真菌は少ないので,海水流入による海洋細菌の流入は確認されましたが,海洋真菌の流入は確認されませんでした。
- 震災前から土壌を採取したほ場では,萎凋症状を示すトマト細菌性青枯病Ralstonia(Pseudomonas)solanacearumが発生しており,このためトマト青枯病抵抗性を有する台木を用いて栽培してきました。採取した土壌から培養とPCR検査によりトマト青枯病菌の検出を試みましたが,検出できず又発病もありませんでした。
(平成24年1月13日掲載)