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津波被災地域全体の農地について,これからの農地の復旧・復元のため,堆積した泥土・土砂中に含まれる硫化物等の混入分布や堆積層の量を把握し,硫化物等の量や海水による塩分などの成分が堆積層から作土層(0~10cm),作土直下層への浸透状況等を把握し,今後の除塩対策に役立てます。
津波被害地域全体の農地には海水によって過剰量の塩類が農地に侵入しました。除塩に関する既存資料,および国の除塩事業については水田の情報が主であり,園芸農地土壌の除塩に関する情報は少ない状況にあります。
農地復旧あるいは作付け誘導の前提として,被害地域の園芸農地土壌の実態を経時的に整理する必要があるため,調査を実施しています。
また,塩素の測定には煩雑な手順が必要となり,簡易に推定できる手法が求められています。すでに熊本,香川両県からECからのCl濃度の推定式が発表されていますが同一ではなく,本県の事例に沿った推定式の作成が望ましいと考えられます。除塩対策事業において,水田での検討は成されていますが,畑作地での検討は不十分でしたので,今回は特に畑作地での推定式の作成を目指します。
さらに,津波により海水が流入した農地では,これまでの土壌とは化学的,物理的あるいは生物的に変化が生じていると考えられます。これらの変化により,園芸作物の栽培に影響を及ぼす可能性があるため,園芸土壌の調査が必要になりますので,海水流入後の農地における生物性調査として,土壌のATP含量の調査による土壌微生物バイオマス測定を行っています。加えて,海水流入農地での作物栽培や,資材投入によるATP含量に及ぼす影響をモニタリング調査しています。
塩害土壌の除塩の指標と各作物の塩害耐性の指標は塩分(塩化ナトリウム)濃度および塩素濃度で示されており塩素濃度はECと相関が高いことが報告されています(熊本県,香川県)。普及センター等から塩素およびナトリウムを実測したいとの要望がありますが,分析に時間を要し煩雑であるため,簡易に測定可能な手法を検討しています。平成23年度は簡易分析機器の実用性を確認しています。
「塩害」とは,海水中の主に過剰の塩化ナトリウムが土壌へ流入することによる生育障害(葉枯れ,枯死)であり,
と言えます。
そして,「除塩」のメカニズムとしては,
と考えられます。
これまで,国の事業を含め,除塩方法は,熊本県の台風18号の被害時の事例が参考とされてきました。しかし、今回の災害においては,被害面積が膨大であること,除塩のための用水が確保できるか不明であることなど,条件が全て同じではないため,除塩方法についても検討が必要です。
津波被害農地は約12,500ha(内、畑地は1/5)にのぼり,現在,農地災害復旧事業,除塩事業等によって農地災害復旧が進められ,過去の被害時の事例等を参考として,土壌の除塩作業が急ピッチで進められています。しかし,施設園芸産地(亘理・石巻等)では、地下水(井戸水)の塩分濃度が高いことなどから,土壌の塩分濃度が低下しても栽培に必要な用水の確保が困難となっています。そこで栽培用水確保のため,逆浸透膜浄水装置等の導入による地下水除塩効果の確認及び効果的な利用法について検討しています。
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