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掲載日:2012年9月10日

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農業早期復興プロジェクト/被害地域における農業経営の実態調査と地域農業再生支援/作物導入等に係る経営試算

(農園研 情報経営部)

東日本大震災(大津波)により,農業用施設の破壊と海水(砂,汚土,塩分)の流入がおこり,多くの農業者が経営を断念せざるを得ないことが懸念されています。
そこで,被害にあった農地の生産性の回復を目指し,関係機関との連携のもと,除塩作業における作業方法・機械について,経営費の参考提示を行います。

試験・調査概要


園芸環境部が現地試験として,普及センターおよび農機メーカーと共同で設置する名取市の除塩実証ほデータを基に,その中で使用されている,サブソイラを基本とした各種作業機械を組み合わせた除塩方法について,現場において導入する場合にどれ位の費用がかかるかを示すため,作業時間調査および機械の導入費用の試算を行います。
なお,基本となるサブソイラーの作業は,現地実証ほ(30a,30×100m)において本暗きょと斜めに交差するように長辺方向に計14本施工しました。また,各作業機の組合せによる各区の設定事例は次のとおりです。

試験・調査表
区分 A B C D
前半
6月
サブソイラー
ロータリ
サブソイラー
額縁明きょ
ディスクローター
サブソイラー
リバーシブルプラウ
サブソイラー
スタブルカルチ
後半
8月
サブソイラー
ロータリ
サブソイラー
ロータリ
バーチカルハロー
サブソイラー
バーチカルハロー
サブソイラー
バーチカルハロー

試験・調査状況(結果)

  • 1)作業時間調査
    一連の作業機械について,実証ほ(30a)の測定時間を基にした試算では,基本となるサブソイラーは13分41秒で,1日(8時間)に換算すると10.52haになり,同じように各作業機の試算結果は,スタブルカルチが19分19秒で7.45ha,アップカットローターでは1時間36分41秒で1.48haの作業面積となります。
    リバーシブルプラウを除いて,各機械ともカタログデータの作業能率範囲内でした。なお,バーチカルハローは実測を行っていないため,ディスクローターの2倍の作業能率として数値を記入しています。
    各作業における必要人員は基本的にオペレーター1人です。
  • 2)機械の導入費用
    基本となるサブソイラーについては,JAが1日3,150円で賃貸している事例もあります。
    参考価格を1日の可能作業面積×年100日×7年間使用とした場合を「1ha当たり償却相当額」として比較すると,サブソイラー1に対し溝堀機の0.85からアップカットローターの24.98まで,差があります。
    実証ほは各作業機を組み合わせた形で各区の組み立てをしており,それらの作業機を組み合わせた形での1ha当たり償却相当額を試算すると,A(サブソイラ+ロータリー)を1とした場合,B(サブソイラ+額縁明きょ+ロータリ)は0.73,C(サブソイラ+プラウ+バーチカルハロー)は0.59,D(サブソイラ+スタブルカルチ+バーチカルハロー)は0.33となり,作業にかかる時間も幅があります。
    なお,この試算にはトラクターに係る経費及び人件費は含んでいません。

以上のことから,除塩対策における各作業機の選定あたっては,除塩の効果に加え,各作業機の可能面積と導入費用を考えて行うことが経営上必要と考えられます。
また,リバーシブルプラウがカタログデータよりも能率が悪かったのは,通常の耕起作業と違う排水のための作業に時間がかかったためと思われます。

(平成24年3月29日掲載)

表1 機種別作業時間(実証ほデータによる試算値)
No. 機種名 規格等 適応トラクタ 作業時間(30a) 10a当たり作業時間 1日(8時間)当たり作業面積 標準作業速度 作業能率
1 サブソイラー 2本爪 40~60ps 13分41秒 4分34秒 10.52ha 2.0~4.0km/h -
2 アップカットローター 200cm 50~70ps 1時間36分41秒 32分14秒 1.48ha - 14~40分/10a
3 ディスクローター 198cm 24~32ps 58分46秒 19分35秒 2.45ha 1.5~3.0km/h 14~27分/10a
4 溝掘機 耕深25cm 30~100ps 8分32秒 2分51秒 16.87ha 4.0~6.0km/h -
5 リバーシブルプラウ 14インチ×3連 50~80ps 1時間3分27秒 21分9秒 2.26ha 4.0~6.0km/h 10~15分/10a
6 スタブルカルチ 6本爪190cm 65~85ps 19分19秒 6分26秒 7.45ha 5.0~8.0km/h 5~7分/10a
7 バーチカルハロー 10ロータ210cm 40~60ps 30分 10分 4.8ha 7km/h以下 7~14分/10a
  • 実証ほの区画は30a(30×100m)
  • 実証ほで使用したトラクタ:セミクローラ型50ps級(リバーシブルプラウ,スタブルカルチは95ps)
  • 作業時間は調整等を除くほ場内の時間で,ほ場間の移動は含まれていない
  • バーチカルハローはディスクローターの2倍の作業能率と仮定し,作業時間,1日当たり面積を算出した
表2 機種別の参考価格等
No. 機種名 参考価格 年間可能面積(100日) 1ha当たり償却相当額 同左比
1 サブソイラー 373,800円 1052ha 51円 1.00
2 アップカットローター 1,313,550円 148ha 1,268円 24.98
3 ディスクローター 869,400円 245ha 507円 9.99
4 溝掘機 510,300円 1687ha 43円 0.85
5 リバーシブルプラウ 1,753,500円 226ha 1,108円 21.84
6 スタブルカルチ 746,550円 745ha 143円 2.82
7 バーチカルハロー 1,134,000円 480ha 338円 6.65
  • 年間可能面積は1日当たり面積に年間100日稼働として乗じた
  • 1ha当たり償却相当額は,参考価格を(年間可能面積×7年)で除した
表3 区分別の1ha当たり償却相当額費用試算(機種合計)
区分 使用機械
(表1のNo.)
1ha当たり
償却相当額
同左比 サブソイラー
2回との比
10aの合計時間
前半 後半
A 1+2+1+2 2,637円 1.00 25.98 36分48秒 36分48秒
B 1+4+3+1+2 1,920円 0.73 18.91 27分00秒 36分48秒
C 1+5+7+1 1,547円 0.59 15.24 25分43秒 14分34秒
D 1+6+7+1+7 869円 0.33 8.56 11分00秒 24分34秒
  • 各区分にはトラクターにかかる経費,人件費は含まれない

お問い合わせ先

農業・園芸総合研究所情報経営部

名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

電話番号:022-383-8119

ファックス番号:022-383-9907

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