農業早期復興プロジェクト/海水流入農地の実態把握と早期改善/除塩効果確認試験/現地試験・イチゴほ場における検討
(農園研 園芸環境部)
農林水産省除塩事業等や熊本県等の除塩技術資料において,除塩技術として,石灰資材の施用が推奨されていますが,園芸土壌における具体的な効果の程度や必要な施用量等については検討の余地があります。また,降雨,灌水との除塩の関係を検討し,今後の除塩対策に役立てます。
試験・調査概要
- 調査場所:宮城県亘理町
- 調査期間:平成23年6月~8月
- ほ場概況:ビニールハウス(1,269平米4.5m×47.0m)
砂質系土壌。津波により4日間浸水し,土砂が堆積(5~10cm程度)し,5月上旬に撤去。ハウスのビニールフィルムを6月上旬に撤去し,雨水に曝された状態で実施。
- 調査方法
- 1)試験区
1区:石灰(石膏)資材(商品名:畑のカルシウム)100kg/10a+降雨
2区:石灰(石膏)資材(商品名:畑のカルシウム)100kg/10a+降雨+灌水
3区:石灰質資材無し+降雨+灌水
対照区(降雨のみ)
- 石灰資材は6月24日,灌水量総量100t/10a(8回に分けて灌水)
- 2)土壌サンプリング方法
3~5日間隔に土壌を採取。
表土から30cmを採取し,作土層(第1層(0~10cm層),第2層(10~20cm),第3層(20~30cm))毎に土壌分析を実施。
- 3)調査項目
pH,EC,交換性Na(総Na),水溶性Na
- 協力:東北農政局
試験・調査状況(結果)
EC
- 作土層0~10cmでは6月24日から7月1日にEC1.8程度から0.3程度まで急激に低下しました。
- 作土層20~30cmでは30日後に0.5程度まで徐々に低下し,石膏区では6月27日からECが一時的に高くなりました。
- 試験開始2~4日後に150mm程度の降水量があり,土壌が砂質系土壌であったため,作土層0~10cmでは急激にECが低下したと考えられます。 また,作土層20~30cmで降雨後ECが高くなる処理区が見られたのは,土壌中で塩基成分が上下したためと考えられます。
- 水はけの良い砂質系土除であれば,まとまった降水量があることでECが低下すると考えられます。
pH
- 全ての区において作土層0~10cmでは6月24日から7月1日にpH6.5程度から7.6程度まで高くなり,その後,徐々に低下し7.2程度となりました。
- 作土層20~30cmでは徐々に高くなる傾向を示しました。
- 調査開始2~4日後に150mm程度の降水量があり,土壌が砂質系土壌であったため,作土層0~10cmで作土層20~30cmと比較して10日間でpHの変化がやや大きく見られました。
ナトリウム
- 何れの処理区とも作土層0~10cm,10~20cm,20~30cmの順で総Na2O量が低下しました。
- 何れの処理区でも総Na2Oが200mg/100g程度から7月下旬には80mg/100g程度まで低下しました。
- 灌水処理を加えることで,下層30cmまで15日後には総Na2O量が低下しました。
- 調査開始まもなく150mm程度の降水量があり,土壌が砂質系土壌であったため,作土層0~10cm,10cm~20cmでは急激に総Na2O量が低下する傾向となり,作土層20cm~30cmではやや緩慢な低下となりました。
- 水はけの良い砂質系土除であれば,まとまった降水量が180mm程度あると総Na2O量が80mg/100g程度まで低下することが確認されました。
(平成24年1月13日掲載)
堆積した泥土
泥土の除去作業
泥土除去後
ハウスビニールの除去
石灰資材(石コウ)の散布
耕うん(写真:亘理普及センター提供)
作土層の違いによるECの推移
作土層0~10cm
作土層20~30cm
作土層の違いによるpHの推移
作土層0~10cm
作土層20~30cm
作土層の違いによる交換態ナトリウム(Na2O)の推移
降水量の推移(6月~8月)