農業早期復興プロジェクト/耐塩性作物による早期経営改善対策/塩分が及ぼす園芸作物への影響把握(花き類)
(農園研 園芸栽培部)
塩害に強いと想定される花き品目の塩分濃度と生育・収量の関係を明らかしにます。
試験・調査概要
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試験1
- 供試材料
輪ギク,ワタ,カーネーション
- 試験方法
25リットル黒ポットに褐色森林土15kgを充填し,海水を処理して各EC値に設定しました。
輪ギク:対照(海水処理無し),0.3,0.6,0.9,1.5
ワタ:対照(海水処理無し),0.8,1.5,2.0
カーネーション:対照(海水処理無し),0.5,1.0,2.0)
1ポットあたり,輪ギクとカーネーションは3株,ワタは1株を供試して5反復に設定し,輪ギクは平成23年6月23日,ワタは5月31日,カーネーションは6月1日に定植して,ガラス温室内で管理しました。
施肥は基肥として,a当たりN成分で輪ギク,ワタ,カーネーションそれぞれ15kg,0.4kg,7.5kg施用しました。
輪ギクは,定植後から8月3日まで5時間(21時30分~2時30分)の暗期中断を行い,消灯日以降は自然日長としました。
- 調査項目
生存株率,生育調査(草丈,葉数等),土壌中の塩基類濃度
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試験2
- 供試材料
カーネーション
- 試験方法
6号ポット(直径17cm,深さ10cm)に,名取市内のカーネーション農家圃場から採取した津波被害土壌を1.5kg入れ,設定した土壌EC値になるまで水道水をかん水し,各試験区の土壌EC値(1.0,2.0,7.4(無処理))を調整しました。
9月13日に鉢上げした苗を1ポットあたり1株定植し,温室ハウス内で管理しました。
- 調査項目
側枝長,展開葉対数,側枝数等
試験・調査状況(結果)
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試験1
- 輪ギクの生存株率は,EC0.6以下では100%でしたが,EC0.9では86.7%に低下し,EC1.5では53.3%となりました。切り花長は,ECが高くなるほど短くなりました。
- ワタの生存株率は,EC2.0でも100%でした。草丈は,生育中期まではECが高くなるほど短くなりましたが,生育後期には対照区以外の区はほとんど同程度の草丈で対照区よりも短かくなりました。収穫時期の果実数は,いずれの処理区も対照区と同程度となりました。
- カーネーションの生存株率は,EC1.0以下では100%でしたが,EC2.0では72.0%となりました。草丈は,生育後期までECが高くなるほど短くなりました。
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試験2
- 側枝長,展開葉対数および側枝数は,EC7.4区(無処理)で大きく低下し,生育低下が確認されましたが,EC1.0区と2.0区はほぼ同等の値となり,生育阻害程度が軽減しました。
以上のことから,ワタは降雨やかん水でECを下げ水分ストレスを減らすだけで作付けできる可能性があり,キク,カーネーションは中間的な耐塩性を示すものと考えられます。
(平成24年3月29日更新)
【輪ギク】
各EC値ごとの生育状況
キク(深志の匠)の生育および品質
【カーネーション】
各EC値ごとの生育状況
【ワタ】
各EC値ごとの生育状況