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掲載日:2012年9月10日

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農業早期復興プロジェクト/耐塩性作物による早期経営改善対策/海水流入土壌における園芸作物の反応(キュウリ病害)

(農園研 園芸環境部)

2011年3月11日に発生した地震により,大津波が発生し,沿岸部の野菜圃場が大規模な浸水被害を受けました。この地域は園芸作物の重要な産地でもあり,早急な復興対策が必要となっていますが,海水が流入した圃場における病原菌の動向についてはわかっていません。
そこで,海水が流入したと想定した土壌を人工的に作成しキュウリを栽培し,病害の発生動向を調査しています。

試験・調査概要

  1. 耕種概要
    • 試験場所:試験場内のパイプハウス内ドレンベット
    • 穂木:グリーンラックス,台木:ゆうゆう一輝黒,定植10月3日
    • 区の構成:土壌は場内の褐色森林土を使用した。対照区:パイプラインの水を88リットル潅注
      EC0.5区:パイプラインの水72リットル+海水16リットル潅注
      EC1.0区:パイプラインの水52リットル+海水36リットル潅注×接木キュウリ
      自根キュウリ
    • 防除暦:11月9日 ストロビーフロアブル 11月15日 ゲッター水和剤 11月18日 ベルクート水和剤,ベトファイター顆粒水和剤,プレオフロアブル
  2. 調査対象病害
    べと病,うどんこ病,褐斑病
  3. 調査方法
    各株の全葉について下記の発病指数別に調査し,発病葉率および発病度を算出
    • 【べと病】
      葉の病斑面積が
      0;なし 1;1 /3以下 2;1/3以上2/3未満 3;2/3以上 4;全面
      発病度=(シグマ発病指数別葉数×発病指数)/(調査葉数×4)
    • 【うどんこ病】
      葉の病斑面積が
      0;なし 1;25%以下 2;26~50%以下 3;51~75%以下 4;76%以上
      発病度=(シグマ発病指数別葉数×発病指数)/(調査葉数×4)
    • 【褐斑病】
      葉の病斑面積が
      0;なし 1;5%以下 2;6~25%以下 3;26~50%以下 4;51~75%以下 5;76%以上
      発病度=(シグマ発病指数別葉数×発病指数)/(調査葉数×5)

試験・調査状況(結果)

  1. EC1.0区では葉の展開が少なく調査葉数が異なり,また病害ではない黄化する葉が多く見られました。一方のEC0.5区や対照区では概ね同等の葉数となりました。
  2. また,接木キュウリの方が自根キュウリより生育が良好でした。
  3. べと病は対照区では発病葉率が50%を超えており,発生が目立ちましたが,EC0.5区,EC1.0区の土壌ではほとんど発生しませんでした。
  4. うどんこ病は12月1日調査でEC1.0区がやや発生が少ない傾向が認められ,対照区,EC0.5区はほぼ同等の発生でした。
  5. 褐斑病はEC0.5区では発病葉率は対照区よりやや低い程度でしたが,発病度は低いものでした。EC1.0区では発病が少ない結果でした。
  6. 接木キュウリと自根キュウリの発生の違いを比較したところ,べと病は大きな違いが認められませんでした。うどんこ病および褐斑病は接木キュウリが発生が多い傾向でした。

以上のことから,海水流入によりECが高くなった場合,EC1.0区ではキュウリの生育が悪く栽培には適していませんでした。また,ECが高い圃場では自根キュウリよりも接木キュウリの生育が良好でした。
よって,生育や収量品質について別途詳細な検討が必要ですが,栽培を考えた場合には接木栽培でEC0.5程度に除塩が必要と推察されます。
しかし,病害の発生程度では,EC0.5,接木栽培にすると,べと病および褐斑病の発生が少ない傾向が認められました。

(平成24年3月29日掲載)

表1 べと病の発生葉率の推移表
処理区 11月17日 11月24日 12月1日
接木 対照区 3.7 44.8 59.2
EC0.5区 0 0 2.2
EC1.0区 0 0 0
自根 対照区 19.1 51.4 52.7
EC0.5区 0 0 0.8
EC1.0区 0 0 0
表2 べと病の発病度の推移表
処理区 11月17日 11月24日 12月1日
接木 対照区 0.9 11.5 15.3
EC0.5区 0 0 0.6
EC1.0区 0 0 0
自根 対照区 4.8 14.4 14.2
EC0.5区 0 0 0.2
EC1.0区 0 0 0
表3 うどんこ病の発生葉率の推移表
処理区 11月17日 11月24日 12月1日
接木 対照区 45.1 42.7 57.7
EC0.5区 53.9 48.2 51.3
EC1.0区 43.4 38.8 38.8
自根 対照区 39.5 32.0 37.7
EC0.5区 48.0 45.9 45.5
EC1.0区 36.7 34.8 26.2
表4 うどんこ病の発病度の推移表
処理区 11月17日 11月24日 12月1日
接木 対照区 12.7 13.8 15.1
EC0.5区 16.4 15.7 14.9
EC1.0区 12.6 10.5 9.7
自根 対照区 10.1 8.2 9.4
EC0.5区 12.5 11.9 11.6
EC1.0区 9.2 8.7 6.6
表5 褐斑病の発生葉率の推移表
処理区 11月17日 11月24日 12月1日
接木 対照区 37.6 39.0 36.7
EC0.5区 32.2 35.7 25.7
EC1.0区 7.4 8.5 3.8
自根 対照区 27.3 37.8 27.1
EC0.5区 14.8 27.8 16.6
EC1.0区 1.4 1.2 3.8
表6 褐斑病の発病度の推移表
処理区 11月17日 11月24日 12月1日
接木 対照区 13.4 12.5 11.1
EC0.5区 9.5 12.1 7.9
EC1.0区 1.7 3.6 0.8
自根 対照区 8.8 10.4 7.7
EC0.5区 3.5 7.1 4.2
EC1.0区 0.3 0.2 0.8

お問い合わせ先

農業・園芸総合研究所花き・果樹部

名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

電話番号:022-383-8132

ファックス番号:022-383-9907

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