農業早期復興プロジェクト/耐塩性作物による早期経営改善対策/耐塩性転作作物の検証/棉花
(古川農業試験場 水田利用部)
津波に伴う高塩分濃度水田に対し,塩分濃度の回復までの期間に水田転作作物として利用できる耐塩性の転作作物を選定し,営農回復の促進を図る必要があります。
ここでは,宮城県北部における標準ほ場での棉花の生育特性把握,収量性及び棉花の機械化栽培について検証することとし,今年度は棉花の生育特性及び機械播種に向けた綿毛の脱皮技術の開発等について検討しています。
試験・調査概要
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- 生育特性調査
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区の構成
- 慣行移植-常温苗
- 慣行移植-保冷苗
- ポット移植-常温苗
- ポット移植-保冷苗
- 品種
アップランド種(アメリカ)
- 直播
播種時期:6月1日,ほ場:F3 36m2,栽植密度:条間150cm×40cm,施肥:大豆化成550(N-P-K:5-15-20%)40kg/10a(N-2.0kg/10a),中耕培土:7月1日,7月17日の2回,無摘心栽培
- 移植
移植:トレイ付移植,慣行移植,苗:保冷苗,常温苗,移植時期:5月23日,ほ場:G3 30m2(7.5m2/区),条間150cm×株間50cm,施肥:イセグリーン(鶏糞肥料,N-P-K:3.0-4.7-3.0%)85kg/10a(N-2.55kg/10a),中耕培土:7月17日の1回,無摘心栽培
- 調査項目
直播:発芽率,生育状況観察,生育ステージ,収量・品質等
移植:移植後生育状況,生育ステージ,収量・品質等
- 機械播種技術の開発
- 脱綿毛処理
インペラ式籾摺り機 大竹ミニダップ FS2K
- 処理方法
種子100gを脱毛作業90秒/回(ゆっくり投入)15回処理
- 調査項目
作業精度と作業能率,生育状況と作業の機械化
試験・調査結果(状況・情報)
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- 生育特性調査
- 移植では,慣行移植でもポットのまま移植した場合も,苗を保冷すると生育が劣りました。
- 直播の子葉展開後及び移植後,地上部の生育は停滞し新たな成葉の出葉まで約1ヶ月を要しました。
- 施肥の違いはありますが,直播の方が生育量及びボール数も多くなりました。しかし,移植・直播どちらも開絮率が低く,今後,直播栽培の株について開絮状況を継続調査します。
- 機械播種技術の開発
- 5~10回程度までは処理量が多く,きれいな種子が調整できましたが,今回の超小型機での処理能力は,サンプル戻し工程を含めると20分/100gサンプルで,30gの整粒確保量(約11時間/kg)かかり,作業効率に課題は残ります。しかし,インペラ式又はインペラを改良したジェット式の籾摺り機が有効に使える目処がつきました。脱毛処理による発芽への影響もなく,逆に安定した発芽が得られました。脱毛及び衝撃による傷などにより,吸水条件が良好となったと考えられます。
- 中耕培土は1~2回行いましたが倒伏が見られ,栽植密度を考慮しても2回の中耕培土では倒伏を防ぐには足りないと考えられます。
以上のことから,移植は慣行の移植方法でも栽培可能ですが,直播でも十分生育量は確保できるものと考えられますが,開絮率の向上が課題とされます。
機械作業を考えた種子の脱毛処理は,インペラ式の籾摺り処理が有効とされますが,作業効率について実機レベルでの検討が必要と考えらます。
(平成24年1月13日掲載)
ワタ種子の脱毛処理(古試)