農業早期復興プロジェクト/海水流入農地の実態把握と早期改善/除塩効果確認試験/資材効果確認試験
(農園研 園芸環境部)
塩害土壌の交換性ナトリウムの除去には石灰資材の施用が効果があるとされています。
そこで,数種の石灰資材のうち有望と思われる石コウと転炉スラグの施用効果について,実用的な範囲の施用量で効果を検証しました。
試験・調査概要
- 調査方法
- 1)「砂質土」における除塩処理方法の検討
1区:海水処理なし
2区:海水処理→かん水250mm
3区:海水処理→かん水150mm→石コウ150kg/10a施用→かん水100mm
4区:海水処理→かん水150mm→転炉スラグ500kg/10a施用→かん水100mm
- 2)「埴土(粘土質)」における除塩処理方法の検討
1区:海水処理なし
2区:海水処理→かん水350mm
3区:海水処理→かん水250mm→石コウ300kg/10a施用→かん水100mm
4区:海水処理→かん水250mm→転炉スラグ1,000kg/10a施用→かん水100mm
- 実験施設
園芸用プランターに各土壌を風乾土で10kg充填しパイプハウス内の高架台に設置し,ドリップチューブをプランター上部に配置し電磁弁とタイマーの組合せにより設定水量をかん水しました。
また,プランター下部にドレインを配置し排水を回収しました。
試験・調査状況(結果)
- 短期間でのナトリウム除去効果
石コウと転炉スラグはナトリウム除去効果が認められました。資材施用前に,降雨やかん水を利用し水溶性のナトリウムを落とす必要があります(今回の試験ではEC0.5mS/cm程度)。ただし,大量施用した場合は,石コウは副成分の硫酸根でECが高まりやすく,転炉スラグは特に砂土でpHが上がりやすいので,留意が必要です。
- 砂質土
ナトリウム除去に必要な石コウの量は概ね100~200kg/10a,作土の除塩に必要な総かん水量は概ね150~200mmで,石灰の補給,塩基バランス補正が主目的であれば転炉スラグが良いでしょう。
- 埴土(粘土質)
ナトリウム除去に必要な石コウの量は概ね200~300kg/10a,作土の除塩に必要な総かん水量は概ね400~500mmで,資材施用後のかん水は水溶性ナトリウムを低下させるために100mm以上の十分な量が必要です。
- 他の石灰資材の効果
消石灰:石コウに近い効果が期待できますが,散布中の事故(失明)が報告されていますので,取り扱いに注意が必要です。
炭カル,苦土石灰:カルシウムがク溶性で含まれますので,ナトリウム除去効果は期待できませんが,石灰の補給,塩基バランスの補正には有効と考えられます。
- 海水流入による土壌物理性の悪化
海水中のナトリウムの影響で団粒構造が壊れ,土壌の粒子が細かくなり,その結果,透水性が悪化し除塩処理の効率が落ち,作物の根にも悪影響がありますので,除塩の前には粘土質や砂質に関わらず,縦浸透を高める作業が望ましいと考えられます。
(平成24年3月29日掲載)
ナトリウム除去の効果
砂質土
埴土
土壌のpHに及ぼす影響
砂質土
埴土
土壌のECに及ぼす影響
砂質土
埴土
除塩処理後の土壌中の石灰含量
植土
砂土
海水流入による土壌物理性の悪化