普及に移す技術第91号/参考資料(震災関連)4
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参考資料(平成27年度)
分類名〔作業技術〕
改良型逆浸透膜装置を利用した地下水の脱塩システム - 震災復興関連技術 -
改良型逆浸透膜装置を利用した地下水の脱塩システム - 震災復興関連技術 -(PDF:310KB)
宮城県農業・園芸総合研究所
1 取り上げた理由
東日本大震災の影響により,地下水の塩水化が広範囲で発生しており,施設園芸の栽培用水に使用することが困難になっている。
その対策として,「逆浸透膜浄水器を利用した地下水の除塩方法-震災復興関連技術-」を普及に移す技術第88号参考資料(平成25年4月)で公表しているが,今回,システムを改良し,コストを低減した技術を確立したので参考資料とする。
2 参考資料
- 1)システムの改良
- a 逆浸透膜装置の変更
- a)装置の台数を,2台から1台に減らしている。
- b)装置内の逆浸透膜を1本増設し,造水能力を3,024L/日(カタログ値)に高めている。
(アクア・カルテック(株)製,LC900HP/SE)
- b システム構成の変更
- a)くみ上げた原水の一時貯留タンク,原水タンクから装置に送水する補助ポンプ,浄水の一時貯留タンク及びフラッシング用ポンプを撤去し,システムを簡略化している
- 2)改良システムの概要
- a 井戸から砂ろ過器を通して地下水をくみ上げ,さらにポリプロピレン繊維フィルター(10μm)を通して装置に送水する。浄水は貯水槽に貯める(図1)。
- b 1時間45分造水・15分休止の条件で稼働すると,電気伝導度(EC)が1.34dS/mの地下水では,本装置によりEC0.11dS/m,ナトリウムイオン濃度19ppm,塩化物イオン濃度18ppmの水質の浄水を1,904L/日造水可能である(表1,図1,図2)。
- c 設置及び稼働にかかるコスト(試算)は,装置本体を含むシステムの設置経費が631千円,フィルター類の年間消耗品が112千円である。また,造水にかかる電気代は94.4円/m と水道料金の1/2以下である(表2)。
3 利活用の留意点
- 1)造水量は、地下水の塩分濃度や水温の影響を受ける。また,日数の経過とともにフィルターの目詰まり等により徐々に造水量が減少する。本装置の実証試験地では,造水能力3,024L/日に対し,試験期間中の造水量は平均1,904L/日である。
- 2)冬期間の凍結防止のため,装置及び配管の設置場所に留意し,保温対策を行う。
- 3)排水のECは地下水の1.5倍程度になるので,塩類による生育障害を起こさないよう,作物の近くでは地下浸透等による排水処理をしない。
- 4)システム内部の藻類等の発生を防止するため,フィルターハウジング,配管等を遮光する。
- 5)定期的に造水量や水質の点検を行い,必要に応じてフィルター類を交換する。
(問い合わせ先:宮城県農業・園芸総合研究所情報経営部電話022-383-8114)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
食料生産地域再生のための先端技術展開事業
宮城県南部沿岸地域の水資源・未利用エネルギーを活用した中規模園芸生産システムの技術開発(平成24~26年度)
- 2)参考データ
図1 改良型逆浸透膜装置を利用した地下水脱塩システム
表1 改良型逆浸透膜装置の脱塩効果(平成26年)
図2 造水量の推移(平成26年)
表2 逆浸透膜装置を利用した地下水脱塩システムにかかるコスト試算(平成26年)
- 3)発表論文等
- a 関連する普及に移す技術
- a)逆浸透膜浄水器を利用した地下水の除塩方法-震災復興関連技術-(第88号参考資料)
- 4)共同研究機関
農研機構農村工学研究所,農研機構食品総合研究所
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