普及に移す技術第91号/第91号普及情報1
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普及情報(平成27年度)
分類名〔果樹〕
ナシ新品種の特性
ナシ新品種の特性(PDF:106KB)
宮城県農業・園芸総合研究所
1 取り上げた理由
本県の平成26年産ナシの結果樹面積は163ha,出荷量は3,070tで主要果樹品目の一つとなっている。今回,国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所が育成し,品種登録された4品種の生態,果実品質を検討した結果,品種特性が明らかとなったので,普及情報とする。
2 普及情報
- 1)「はつまる」
- a 来歴:「筑水」に「筑波43号」を交配育成した品種である。
- b 品種登録:平成26年12月
- c 特性:本研究所における5年間の平均値で,発芽期は4月2日と「幸水」,「豊水」より早く,開花始は4月24日,収穫始は8月12日と「幸水」より18日早い極早生品種である(表1)。平均1果重は256g程度と小果の赤ナシであり,果実品質は硬度4.2lb,糖度12.6°,pH5.0である(表2)。果肉が軟らかく,多汁である。樹勢は中程度で,短果枝の着生は中程度であり,えき花芽の着生は少ない。黒斑病抵抗性を有する一方,黒星病に対しては罹病性であるが,慣行防除で栽培できる。
- 2)「凜夏」
- a 来歴:「269-21(「おさ二十世紀」に「豊水」を交配)」に「あきあかり」を交配育成した品種である。
- b 品種登録:平成25年11月
- c 特性:本研究所における5年間の平均値で,発芽期は4月6日,開花始は4月26日,収穫始は9月1日と「幸水」と同時期である(表1)。平均1果重は482g程度の赤ナシであり,果実品質は硬度4.5lb,糖度11.9°,pH4.6である(表2)。食味は酸味がやや強く,多汁である。樹勢は中程度で,短果枝の着生が多く,えき花芽の着生は中程度であり,安定して花芽が着生する。黒斑病抵抗性を有する一方,黒星病に対しては罹病性であるが,慣行防除で栽培できる。
- 3)「ほしあかり」
- a 来歴:「314-32(「巾着」に「豊水」を交配)」に「あきあかり」を交配育成した品種である。
- b 品種登録:平成26年12月
- c 特性:本研究所における5年間の平均値で,発芽期は4月1日と「幸水」,「豊水」より早く,開花始は4月24日,収穫始は9月16日と「幸水」,「豊水」の間の収穫期となる(表1)。平均1果重は410g程度の赤ナシで,果実品質は硬度4.6lb,糖度12.5°,pH4.9である(表2)。果形の揃いはやや悪く明瞭に条溝が発生する特徴を持つ。食味は甘く,多汁である。樹勢はやや強く,短果枝の着生が中程度,えき花芽の着生はやや多い。黒斑病,黒星病共に抵抗性を有し,殺菌剤散布回数を削減した減農薬栽培が期待できる。
- 4)「甘太」
- a 来歴:「王秋」に「あきづき」を交配育成した品種である。
- b 品種登録:平成25年11月
- c 特性:本研究所における5年間の平均値で,発芽期は4月5日,開花始は4月26日,収穫始は10月14日で「新高」と同時期である(表1)。平均1果重は532g程度と大果の青ナシで,果実品質は硬度4.2lb,糖度13.2°,pH4.8である(表2)。食味は甘みが強く,果肉が軟らかく,多汁と良好である。樹勢は中程度で,短果枝の着生は多程度,えき花芽の着生は少程度である。黒斑病抵抗性を有する一方,黒星病に対しては罹病性であるが,慣行防除で栽培できる。
3 利活用の留意点
- 1)「はつまる」は,年によりみつ症がみられるが,程度は軽い。
- 2)「凜夏」は,年により赤道面の果皮近くにみつ症が生じるが,程度は軽い。また,年により条溝果が発生する。
- 3)「甘太」は,無袋栽培では果面のさびが多く発生し,赤ナシのような見た目となる。また,地色が緑色のまま変化に乏しいため,収穫期の判断が難しい。
- 4)各品種の苗木は民間の果樹種苗会社で販売されている。
(問い合わせ先:宮城県農業・園芸総合研究所園芸栽培部 電話022-383-8132)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
みやぎ発信型の新規園芸品目の定着技術の確立(平成21~25年度)
宮城から提案する新規園芸品目の生産技術の開発(平成26~27年度)
- 2)参考データ
表1 各品種の生育概況(平成23年~平成27年)
表2 各品種の果実品質(平成23年~平成27年)
- 3)発表論文等
なし
- 4)共同研究機関
なし
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