普及に移す技術第91号/第91号参考資料9
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参考資料(平成27年度)
分類名〔野菜〕
イチゴの土耕栽培におけるクラウン加温技術
イチゴの土耕栽培におけるクラウン加温技術(PDF:137KB)
宮城県農業・園芸総合研究所
1 取り上げた理由
イチゴ促成栽培は,厳冬期の草勢維持が栽培管理上重要であり,厳冬期の草勢を維持しながら,省エネルギーな加温技術の確立が求められている。そこで,クラウン部を加温することにより,慣行の温度管理よりハウス内加温温度を下げることができ,また燃料費が削減できることを明らかにしたので参考資料とする。
2 参考資料
- 1)イチゴの土耕栽培において,ハウス内最低気温を5℃でクラウン加温すると,ハウス内最低気温8℃でクラウン加温しない場合と比較して厳冬期の草高は高く維持され(表1),出葉日数も1~2日短くなる(表2)。
- 2)商品果収量はハウス内最低気温5℃でクラウン加温を行うことで慣行の最低気温8℃でクラウン加温しない場合と同等となる(表3)。
- 3)試験における燃料消費量をもとに試算した燃料費は,ハウス内最低気温5℃でクラウン加温を行った場合,ハウス内最低気温8℃でクラウン加温しない場合と比較して,31%~35%削減できる(表4)。
3 利活用の留意点
- 1)クラウン加温は,クラウン部にポリエチレンパイプ(平成24~25年は外径25mm,平成26年は外径16mmを使用)を沿わせ,11月上旬から3月下旬までNEPON社製温湯ボイラーにより加温した温水を通水し,チューブ表面温度が20℃程度になるように制御している。
- 2)この試験は以下の条件で行っている。品種は「とちおとめ」,「もういっこ」を用い,試験は所内鉄骨硬質フィルムハウス(3a)土耕栽培で,うね幅120cm,株間20cm,2条千鳥植え,基肥N/P/K=1.5/0.87/1.5(イチゴエース12-7-12を使用し全面施肥後,耕転うね立て)栽植密度800株/a。苗は7月中旬に空中採苗方式により35穴すくすくトレイに挿し苗し,9月中旬に定植している。ハウスは2重カーテン設置,11月2日より5℃または8℃でハウス内加温。電照は10月下旬から2月下旬まで草高25cmを目標に適宜調節(1~4時間日長延長)している。
(問い合わせ先:宮城県農業・園芸総合研究所園芸栽培部電話022-383-8132)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
食料生産地域再生のための先端技術展開事業
- 施設園芸栽培の省力化・高品質化実証研究(平成24年~26年度)
- 2)参考データ
表1 クラウン加温がイチゴの草高に及ぼす影響(平成24~26年)
表2 クラウン加温が出葉日数に及ぼす影響(平成26年)
表3 クラウン加温が商品果収量に及ぼす影響(平成24~26年)
表4 燃料費比較(100坪当たり)(平成24~25年)
表5 初期投資の費用(参考)
- 3)発表論文等
- a 関連する普及に移す技術
クラウン温度制御による夏秋どりイチゴ栽培の増収技術(第86号普及技術)
イチゴ超促成栽培におけるクラウン温度制御が生育と収量に及ぼす影響(第90号参考資料)
- b その他
高山詩織・鹿野弘・高野岩雄・小野寺康子(2015),土耕栽培におけるクラウン加温がイチゴの生育と収量に及ぼす影響,東北農業研究第68巻,p135-136
- 4)共同研究機関
農研機構九州・沖縄農研,東北農研,岡山大学,カネコ種苗(株),東北大学大学院
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