普及に移す技術第91号/普及技術5
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普及技術(平成27年度)
分類名〔野菜〕
タマネギの春まき7月どり栽培技術体系
タマネギの春まき7月どり栽培技術体系(PDF:429KB)
宮城県農業・園芸総合研究所
1 取り上げた理由
加工・業務用のタマネギは用途が広く,周年で需要がある。県内慣行のタマネギ栽培は秋まきであり,8月下旬~9月初旬播種,10月中旬~11月上旬定植,5~6月収穫の栽培スケジュールとなる。一方,露地園芸作物の生産を同一ほ場で春秋年2作体系とする場合,秋まきタマネギは在ほ期間が長いため,組み合わせる作物が限定される。
そこで,露地ほ場の効率的な利用と収穫期拡大を目的に,宮城県内で1月以降に播種する春まきタマネギについて,作型,品種,栽培技術を検討し,体系化したので普及技術とする。
2 普及技術
- 1)作型
宮城県内での春まき7月どりタマネギの作型を図1に示す。播種は1月下旬から2月中旬に行う。低温期のため,ハウス内の無加温育苗では出芽揃いに12~15日程度かかる。播種が早いほど,定植を早められ,球肥大までの生育量を確保できるため,収穫時の球重は重くなる(表1)。
図1 宮城県におけるタマネギ春まき7月どり作型
- 2)品種選定
中生から中晩生品種のうち,病害に強く貯蔵性の良い品種を選択する。「もみじ3号」,「ネオアース」は球重が重く,収穫後の腐敗が少ないため,収量が安定する(表2)。
- 3)育苗
播種,育苗時期は低温期なので,育苗はハウスで行う。定植後の初期生育を促進するには苗が大きいほうがよく,セルトレイ育苗の場合,ハウス内土壌にうね立てして,セルトレイ底面を埋め込む方法の効果が高い(表3,図2)。
3 利活用の留意点
- 1)品種選択の際,早生種は肥大期間が短くなるため球重が小さく,晩生や春まき用品種は倒伏が遅いため梅雨中の生育期間が長く,病害発生のリスクが大きくなる(表2)。
- 2)生育安定,雑草防除のためにはマルチ栽培が有効である。マルチ色は黒,白黒ダブルでは収量に差がない。黒マルチのほうが定植後初期の日平均地温が高めに推移する(表4,図3)。
- 3)栽植様式は秋まき慣行と同様に,株間10~12cm,条間20cmの4条植え,栽植密度は10a当たり22,500~26,000株程度が標準である。
- 4)球肥大から倒伏(収穫時期の目安)が梅雨期間にあたり,茎葉から病害が侵入しやすい上に薬剤散布できない日が続くこともあるため,貯蔵中の腐敗発生が問題になることが多い(東北南部の梅雨期間平年値:梅雨入り6月12日・梅雨明け7月25日,気象庁HPより)。予防剤の銅剤等を梅雨前から使うなど,早期の防除を行う。
- 5)掘り上げ後の乾燥,貯蔵は秋まき慣行と同様に行う。
- 6)過去の現地試験データ等をもとに,経済性の試算値を表5に示した。
(問い合わせ先:宮城県農業・園芸総合研究所バイオテクノロジー開発部 電話022-383-8131)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
みやぎ発信型の新規園芸品目の定着技術の確立(平成25年度)
食料生産地域再生のための先端技術展開事業露地園芸の実証研究(平成26~27年度)
- 2)参考データ
表1 春まきタマネギの播種時期が収量に及ぼす影響(平成27年・所内)
表2 春まきタマネギの品種が収量に及ぼす影響(平成27年・岩沼市)
表3 タマネギの育苗方法が定植時生育に及ぼす影響(平成25年・所内)
図2 春まきタマネギ育苗時のハウス内地温推移(平成25年・所内)
表4 作型とマルチ色の違いがタマネギの収量に及ぼす影響(平成26,27年・名取市)
図3 マルチ色の違いが地温に及ぼす影響(平成27年・名取市)
表5 経済性の試算(10a当り)
- 3)発表論文等
- a 関連する普及に移す技術
集落営農に導入が有利な加工・業務用タマネギの機械化栽培体系(第86号普及技術)
- b その他
- 4)共同研究機関
農研機構 東北農業研究センター
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