普及に移す技術第91号/第91号参考資料22
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参考資料(平成27年度)
分類名〔病害虫〕
スピロテトラマト水和剤(商品名:モベントフロアブル)のイチゴ促成栽培における育苗期かん注処理による本ぽでの微小害虫抑制効果
スピロテトラマト水和剤(商品名:モベントフロアブル)のイチゴ促成栽培における育苗期かん注処理による本ぽでの微小害虫抑制効果(PDF:141KB)
宮城県農業・園芸総合研究所
1 取り上げた理由
県内のイチゴ促成栽培では,ハダニ類,コナジラミ類,アブラムシ類,アザミウマ類等の微小害虫が発生し,特に近年では各種殺虫剤の効力低下も顕在化している。また,本ぽでの微小害虫発生の多くは苗からの持込によるものと考えられている。そこで,スピロテトラマト水和剤の育苗期後半かん注処理による本ぽへの微小害虫持込回避効果を検討し,その効果が明らかとなったので参考資料とする。
2 参考資料
- スピロテトラマト水和剤500倍液を50ml/株の割合で育苗期後半に株上からハス口を用いてかん注することにより,ハダニ類(ナミハダニ),コナジラミ類(オンシツコナジラミ),アブラムシ類(ワタアブラムシ)の発生を抑制できる(表1,表2,表3)。
- 本剤により本ぽへの害虫持込みが回避され,長期間害虫の発生を抑制できる(表4)。
3 利活用の留意点
- 本剤は新規の作用機作(脂質生合成阻害)を有し,抵抗性出現の情報はまだないがリスク回避のため本剤のイチゴでの使用は育苗期後半かん注処理のみの年1回とすること。
- 本剤のイチゴにおける農薬登録内容は以下のとおりである。
a)使用方法「かん注」の場合
使用濃度:500倍 対象害虫及び液量:ハダニ類及びアザミウマ類には50ml/株,アブラムシ類及びコナジラミ類には25~50ml/株 使用時期:育苗期後半 使用回数:1回 b)使用方法「散布」の場合(参考)
使用濃度:2,000倍 散布液量:100~300リットル/10a 使用時期:収穫前日まで
使用回数:3回以内(かん注含)対象害虫:アザミウマ類,アブラムシ類,コナジラミ類
- 本剤の育苗期後半かん注処理は,農薬登録上25~50ml/株処理が可能であるが25ml/株処理ではハダニ類への効果が劣るため50ml/株で使用すること。
- 本剤はイチゴの株上から葉にも十分に薬液がかかるようにかん注(シャワードレンチ)すること。
- 本剤は害虫の発生が多くなると防除効果が劣るため,害虫が無~極少発生であることを確認してから処理すること。害虫密度が高い場合には,事前に気門封鎖型薬剤等により害虫の密度を下げてから処理する必要がある。
- 本剤をイチゴにかん注処理した場合には,カブリダニ類とマルハナバチへ45日程度影響することが知られているので,導入する場合には注意が必要である。本試験では,本剤処理3ヵ月後にチリカブリダニ及びミヤコカブリダニを放飼したが,それらの定着に影響はみられていない(表5)。なお,本剤のかん注処理によるミツバチへの影響はない。
(問い合わせ先:宮城県農業・園芸総合研究所 園芸環境部 電話 022-383-8246)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
食料生産地域再生のための先端技術展開事業
施設園芸栽培の省力化・高品質化実証研究(平成27年度)
農作物病害虫防除等の新農薬並びに新肥料資材効果確認試験(平成27年度)
- 2)参考データ
表1 ハダニ類の発生状況(本ぽ)
表2 コナジラミ類の発生状況(本ぽ)
表3 アブラムシ類の発生状況(本ぽ)
表4 ハダニ類の発生状況(現地試験)
表5 天敵の定着状況
- 3)発表論文等
- 4)共同研究機関 農研機構 野菜茶業研究所
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