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掲載日:2016年4月8日

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普及に移す技術第91号/第91号参考資料2

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参考資料(平成27年度)

分類名〔水稲〕

苗立がよく省力低コストな水稲湛水直播土中播種法への改善 - べんがらモリブデン被覆種子の利用 -

苗立がよく省力低コストな水稲湛水直播土中播種法への改善 - べんがらモリブデン被覆種子の利用 -(PDF:1,265KB)

宮城県古川農業試験場

1 取り上げた理由

水稲直播栽培は,省力低コスト技術として近年急速に全国各地へ普及している。しかし,既存の技術では種子被覆資材のコスト高や処理方法に手間がかかること等から普及上の問題点となっている。農研機構九州沖縄農業研究センターで開発された「べんがらモリブデン被覆種子」は,過酸化石灰被覆種子と比較し資材代が安く,被覆作業が簡便で,モリブデン添加により根に有害な硫化物イオンの生成を抑制し,苗立ちの安定化が期待できることから,直播栽培の新技術として有効なので,参考資料とする。

2 参考資料

  • 1)「べんがらモリブデン被覆種子(以下:べんモリ)」は被覆比0.1及び0.3で,播種後出芽揃日までの日平均気温14℃以上で苗立率80%程度が確保され,「過酸化石灰被覆種子(以下:過酸化石灰)」と比較し苗立率が高く(図1),出芽揃いが早い(図2)。
  • 2)「べんモリ」は被覆比が低く「過酸化石灰」と比較し,資材代が安価である(表1)。
  • 3)「べんモリ」は,「過酸化石灰」や「鉄被覆種子(以下:鉄)」に準じた手順で被覆できる(図5左)。被覆作業は,容易に短時間で処理でき塊ができにくい。催芽籾の場合は,「過酸化石灰」と作業の経過日数が同じであるが,浸漬籾の場合は,その半分で終了する(表1)。
  • 4)「ベンモリ(浸漬籾)」は被覆終了後,10℃の低温庫に保管すると約30日間,発芽率を維持できる(図3)。
  • 5)播種方法は「過酸化石灰」同様,土中播種機等を用いて,深さ5~10mmとなるよう調整し,乾籾2.5~3.0kg/10a程度で播種し,落水出芽とする(図5右)。
  • 6)播種後30日頃の生育は,「べんモリ」が「過酸化石灰」より草丈はやや短く,葉数はやや少ないが,白化茎長は同程度で,乾物重は重い。また収量,倒伏程度は同程度である(図4)。
    苗立率と出芽揃日までの日平均気温のグラフ
    図1 苗立率と出芽揃日までの日平均気温(平成24年~27年)

(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場水田利用部 電話0229-26-5106)

3 利活用の留意点

  • 1)品種「ひとめぼれ」を用いての試験結果である。
  • 2)被覆作業時は,健康被害を防ぐため,ビニール手袋,防じんマスク,防じんメガネ等を必ず使用する。
  • 3)被覆比0.1と0.3の苗立に差はないが,被覆比0.1は0.3より重量が軽く,表面が円滑なため,播種量を調整しにくく,ほ場や気象条件等によっては,表面に浮いてくる場合があることから,被覆比0.3が取り扱い易い。
  • 4)被覆後,「還元鉄」のような発熱作用は起こらず,種子が死滅する可能性は低い。しかし,直ぐに播種しない場合,籾水分が高いと種子表面に糸状菌が発生することがあるので,風通しの良い場所で乾燥後に10℃以下で保管する。
  • 5)播種後は「過酸化石灰」に準じて落水出芽管理を行い,出芽揃後は湛水管理とする。
  • 6)スズメに対する食害抑制効果はほとんどないので,スズメが多い地域は避ける。
  • 7)モリブデン連作による収穫物のモリブデン含有量は,2年間連用は問題なく,牛等への過剰症はないが,3年以上は調査中(九州農研)。
  • 8)使用する資材は,混合資材「三酸化モリブデン+べんがら(酸化鉄)+ポリビニールアルコール」として2種類(被覆比0.1と0.3)が,農研機構九州沖縄農業研究センター発行の「水稲べんモリ直播マニュアル」に掲載されている販売先から購入(各7,000円程度/10kg:税・送料別)できる。

4 背景となった主要な試験研究

  • 1)研究課題名および研究期間
    震災復興に向けた担い手の規模拡大を支援する省力・低コスト・多収栽培技術の確立(平成24-27年度)
    農作物病害虫防除等の新農薬及び新肥料資材効果確認試験(平成26-27年度)
  • 2)参考データ
    種子被覆に伴う作業時間及び資材代の表
    表1 種子被覆に伴う作業時間及び資材代(平成27年)
    出芽揃日までの日数のグラフ
    図2 出芽揃日までの日数(平成24年~27年)
    「べんモリ」浸漬籾の保存期間別発芽率のグラフ
    図3 「べんモリ」浸漬籾の保存期間別発芽率(平成24年~27年)
    種子被覆方法別の生育状況の写真と表
    図4 種子被覆方法別の生育状況(平成24年~27年)
  • 3)発表論文等
    • a 関連する普及に移す技術
      なし
    • b その他
      • a)平成27年度東北農業試験研究成果情報(2015)
      • b)菅野博英・原嘉隆・安田善広(2015),モリブデンを用いた水稲直播における苗立ちと種子の保存期間,日本作物学会第240回講演要旨,P7.
      • c)菅野博英・横山裕美・渡邊真紀子・安田善広・庄山寿・原嘉隆(2015),宮城県におけるべんがらモリブデン被覆種子(べんモリ)による湛水直播の苗立ち,日本作物学会第241回講演要旨,印刷中.
  • 4)共同研究機関
    農研機構九州沖縄農業研究センター,ヤンマーアグリジャパン(株),井関農機(株)
    「べんモリ」種子準備から本殿初期の管理の図
    図5 「べんモリ」種子準備から本田初期の管理

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お問い合わせ先

農業・園芸総合研究所企画調整部

名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

電話番号:022-383-8118

ファックス番号:022-383-9907

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