普及に移す技術第91号/普及技術3
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普及技術(平成27年度)
分類名〔水稲・草地飼料〕
耐冷性に優れ大粒で飼料用米向けの多収性専用品種「東北211号」
耐冷性に優れ大粒で飼料用米向けの多収性専用品種「東北211号」(PDF:140KB)
宮城県古川農業試験場
1 取り上げた理由
宮城県の飼料用米への取組みは,主に食用品種での対応となっているが,新たな政策(平成25年12月)では助成制度が拡充され,多収性専用品種の導入及び多収穫による生産拡大が推進されている。一方,多収性専用品種として利用されている「夢あおば」等は,障害型耐冷性が弱く安定生産上の課題となっている。
「東北211号」は,収量性及び耐冷性,耐倒伏性に優れ,玄米千粒重が大きく食用米との識別性があり,宮城県における飼料用米向けの多収性専用品種(知事特認品種)として,平成26年4月に認定されたので普及技術とする。
2 普及技術
- 1)来歴
「東北211号」は,宮城県古川農業試験場において,多収品種の育成を目標として,やや晩生の耐倒伏性に優れた多収品種「東北189号(げんきまる)」を母,WCS用イネ・飼料用米兼用品種「クサユタカ」を父として,平成18年8月に人工交配を行い,その後代から育成した系統である。
- 2)特性の概要
- a 障害型耐冷性は“強”と「げんきまる」より優り,収量性は「げんきまる」並の多収で,玄米千粒重は「げんきまる」より重く,玄米品質は「げんきまる」より劣り食用米との識別性がある。(表1)
- b 出穂期は「げんきまる」より2日程度遅く,成熟期は4日程度遅い,宮城県での早晩性は“晩生”である。(表1)
- c 稈長は「げんきまる」よりやや短く,穂長はやや長く,穂数はやや少なく,草型は“偏穂重型”である。(表1)
- d 耐倒伏性は“強”,穂発芽性は“難”と「げんきまる」並で,いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pib”と推定され,葉いもち,穂いもちほPib場抵抗性はともに“不明”である。(表1)
- e 現地実証(前作:2か年とも大豆)においては,「夢あおば」より出穂期は6日程度遅く,成熟期は13日程度遅い。稈長は「夢あおば」より長く,穂長はやや長く,穂数は多い。収量性は「夢あおば」並の多収で,玄米千粒重は「夢あおば」より重い。(表1)
- 3)対象地域等
- a 普及見込み地帯北部・南部平坦地
- b 普及見込み面積800ha
3 利活用の留意点
- 1)ほ場においていもち病の発生が確認されているので,適期防除に努める。
- 2)基肥は,窒素成分量で7kg/10a(「ひとめほれ」の1.4倍)程度が適当である。
- 3)追肥は,「減数分裂期に窒素成分量で4kg/10a」又は,「幼穂形成期と減数分裂期にそれぞれ窒素成分量で2kg/10a(計4kg/10a)」が適当である。
- 4)落水時期は,良好な登熟を得るため出穂後40日頃を目安とし,可能な範囲でできるだけ遅くまで湛水又は湿潤状態を保つ。
- 5)成熟期頃の籾水分は28~30%程度と高く,コンバイン収穫が可能となる時期(刈取早限:籾水分25%)は,倒伏程度が高いほ場を除き出穂期以降の積算平均気温が1,200~1,290℃頃(出穂後64~70日頃)である。
(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場水田利用部電話0229-26-5106)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
飼料用米の省力低コスト多収栽培技術の確立(平成26~27年度)
- 2)参考データ
- 3)発表論文等
- a 関連する普及に移す技術なし
- b その他
- a)平成26年度東北農業研究成果情報
- b)佐藤浩子・遠藤貴司・佐伯研一・中込佑介(2015),耐冷性に優れる多収の水稲新品種「東北2 1 1号」の特性,東北農業研究第68号,p11-12
- 4)共同研究機関なし
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