普及に移す技術第91号/普及技術4
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普及技術(平成27年度)
分類名〔水稲〕
水稲直播栽培における鉄コーティング種子の保存可能期間
水稲直播栽培における鉄コーティング種子の保存可能期間(PDF:165KB)
宮城県古川農業試験場
1 取り上げた理由
近年,全国的に普及している鉄コーティング湛水直播栽培は,種子の長期保存が特徴の一つとされるが,適切な保存場所や保存可能期間はこれまで明らかとなっていない。そのため,水稲生産現場では,鉄コーティングの作業計画を立てにくく,コーティング後の保存方法が栽培者により異なり,苗立低下等の問題が発生していることから適正な保存方法等について明らかにしたので,普及技術とする。
2 普及技術
- 1)鉄コーティング後,発芽率90%以上を確保できる保存期間は,5℃(保冷庫等)で390日間程度,10℃(保冷庫等)で210日間程度,23℃(空調なし農業倉庫等)で30日間程度である(図1)。
- 2)鉄コーティング後,10℃で保存した場合の発芽率は,保存期間210日まで90%程度を維持するが,保存期間390日以上では大きく低下する(図2)。
- 3)鉄コーティング後,10℃で保存した場合の苗立率は,保存期間210日まで安定的であるが,保存期間390日以上では大きく低下する(図3)。
図1 鉄コーティング後の保存条件別の発芽率(平成23年~25年)
(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場水田利用部 電話0229-26-5106)
3 利活用の留意点
- 1)使用した鉄コーティング種子は,品種「ひとめぼれ」を温湯浸漬63℃5分で種子消毒後,積算温度50℃の浸漬もみで,慣行の被覆方法によりコーティングマシンを用いて被覆比0.5で行った後,農業倉庫内にブルーシートを広げ,適時かく拌と散水作業を作成し,乾燥させたものである。
- 2)鉄コーティングに用いる種子は,移植栽培同様,塩水選及び種子消毒を実施した種子を用いる。
- 3)鉄コーティング終了後は,野外や軒下等に放置すると再発熱する可能性があるので,速やかに保冷庫や農業倉庫等に保存する。
- 4)鉄コーティング終了後と播種前は,必ず発芽試験を実施し,発芽率を確認する。
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
主要農作物高位安定生産要因解析(平成23-24年度)
震災復興に向けた担い手の規模拡大を支援する省力・低コスト・多収栽培技術の確立(平成25-27年度)
食料地域再生のための先端技術展開事業土地利用型営農技術の実証(平成24-27年度)
- 2)参考データ
図2 10℃保存における保存期間別の発芽率推移(平成23年~27年)
図3 10℃保存における保存期間別の苗立率推移(平成23年~27年)
- 3)発表論文等
- a 関連する普及に移す技術
- a)「環境保全米」基準に準じた水稲湛水直播栽培(鉄コーティング)(第91号参考資料)
- b その他
- a)平成27年度東北農業試験研究成果情報(2015)
- b)菅野博英・白土宏之・佐々木哲・牧原邦充(2015),水稲鉄コーティング湛水直播栽培における種子の保存期間が発芽と苗立ちに及ぼす影響,日作東北支部報58,P27-28.
- 4)共同研究機関 農研機構東北農業研究センター,(株)クボタ,小泉商事(株)
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