普及に移す技術第91号/第91号参考資料15
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参考資料(平成27年度)
分類名〔病害虫〕
育苗管理を行う作業場環境に存在するばか苗病菌
育苗管理を行う作業場環境に存在するばか苗病菌(PDF:135KB)
宮城県古川農業試験場
1 取り上げた理由
温湯浸漬法による水稲の種子消毒が普及する一方で,イネばか苗病の発生が増加している。本病は典型的な種子伝染性病害で知られるが,近年の育苗現場での発生様相を観察すると,育苗箱内では均一に発生したり,育苗ハウス内のすべての育苗箱で発生したりするなど,種子伝染以外が疑われる事例に遭遇する。種子伝染以外の伝染経路を探るため,育苗管理を行う作業場においてイネばか苗病菌を探したところ,作業場環境にばか苗病菌が存在することが明らかになったので,参考資料とする。
2 参考資料
- 1)イネばか苗病菌は,作業場環境にあるイネの残さに存在する。特にもみ殻や稲わらで検出される割合が高く,あるいはこれらを含む作業場内の粉塵などにも存在している(表1,表2)。
- 2)イネばか苗病菌が存在する作業場環境は,過去に育苗時にばか苗病が発生していた場合に検出される傾向があるが,発生していない場合でも確認されることもあり,ばか苗病の発生の有無と明確な関係は認められない(表1,表2)。
- 3)育苗を行うハウスに保管してある稲わらやもみ殻にも存在しているが,育苗ハウスの土壌からはイネばか苗病菌は検出されない(表1)。
- 4)温湯浸漬した種子はばか苗病菌に感染しやすい性質があるため(普及に移す技術第91号参考資料),温湯浸漬処理済み種子の管理にあたっては,作業場環境にもみ殻や稲わらなどが存在する場所に保管しない,浸種から播種の工程を行わないようにする。
3 利活用の留意点
- 1)リアルタイムPCR(SYBR Green法)によりイネばか苗病菌を検出した結果である。サンプルからのDNA抽出はDNAすいすいW(リーゾ社製),使用したPCR試薬はBrilliant III Ultra-Fast SYBR Green QPCR Master Mix(Agilent社製)を用いている。リアルタイムPCRシステムはLightCycler®480SystemII(Roche社製)を用いている。ばか苗病菌を検出する特異的プライマーを用いている。
- 2)今回検出されたもみ殻や稲わらが伝染源となり,育苗前の種子にイネばか苗病菌が伝染しているかは明らかとなっていない。しかし,作業場環境の空気中から,育苗時期にイネばか苗病菌が捕捉された報告事例がある。
(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場作物保護部 電話0229-26-5108)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
高品質宮城米優良種子確保事業(平成26年-27年度)
- 2)参考データ
表1 育苗関連の作業場環境におけるイネばか苗病菌が検出されたサンプル(平成26年)
表2 育苗関連の作業場環境におけるイネばか苗病菌が検出されたサンプル(平成27年)
- 3)発表論文等
- a 関連する普及に移す技術
温湯浸漬処理した種子のイネばか苗病菌に感染するリスクの評価(第91号参考資料)
- b その他
なし
- 4)共同研究機関 なし
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