普及に移す技術第91号/第91号参考資料10
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参考資料(平成27年度)
分類名〔野菜〕
夏秋期における低段密植を用いたトマト増収技術
夏秋期における低段密植を用いたトマト増収技術(PDF:477KB)
宮城県農業・園芸総合研究所
1 取り上げた理由
近年全国的に温暖化の影響が強まり,宮城県のトマト生産においても夏秋作型・抑制作型で高温等の影響による収量低下が問題になっている。今回,低段密植栽培による夏秋期の収量増加技術を確立したので参考資料とする。
2 参考資料
- 1)空中ポットレストレー
土耕栽培において低段密植栽培は定植及び残さの片付けの面で取組が困難とされているが,空中ポットレストレー(株式会社阪中緑化社製,6穴タイプ)は直径15cmの筒状部分にヤシ殻等を充填し苗を定植,ドリッパー等でかん水を行うことでパイプハウス等でも低段密植栽培の取組が可能である。トレー側面及び底面にスリットが入っているため水はけが良好であり,トマトや夏イチゴで使用されている事例がある。1枚当たりの単価は約400円である。
- ポットレストレーは1a当たりのトマトの栽植密度を450株/a(畝間2,4m,6穴全て定植)とすると約76枚,794株/a(畝間1.4m,6穴全て定植)とすると約132枚使用する。
図1 ポットレストレー(上図)及び栽培の様子(下図,平成27年6月30日)
- 2)低段密植栽培
- a 低段密植栽培:低段栽培1作目として5月上旬に定植を行い,3段花房が開花した6月中旬に花房上葉を2枚残し摘芯した後,1作目の収穫収量後に7月下旬から8月上旬に2作目を一斉に植え替えることで,夏秋作型において低段密植栽培を2回行える(図2)。
- b 低段密植栽培(サイドプランティング):空中ポットレストレーの片側に1作目を5月上旬に定植を行い,5~6段花房が開花した6月下旬に花房上葉2枚を残し摘芯する。1作目の栽培途中の7月下旬に2作目の苗を1作目のとなりに定植する(サイドプランティング。図2,図3,図4)。1作目は収穫終了後の8月中旬に片付ける。
- c 低段密植栽培により平均1果重は減少するが,面積当たりの商品果収量は増加する(表2)。
- d 苗数は慣行の苗数を178株/aとすると,低段密植栽培2作合計で慣行の8.9倍の1588株(794株/a/作×2作)となる。
- e 1a当たりのポットレストレーの設置に係る資材費及び種苗代は表3となる。
図2 トマト低段密植栽培の夏秋作型
3 利活用の留意点
- 1)試験はパイプハウスにおいて,低段密植栽培は地面に黒マルチをひき,その上に空中ポットレストレーを設置して養液栽培を行い,対照区は土耕栽培である。
- 2)低段密植(サイドプランティング)は1作目と2作目の栽培が約1ヶ月重なるので,農薬の使用回数に注意する。また,密植して栽培すると葉が重なり薬液がかかりづらくなるので,病害虫の発生や蔓延に注意する。
- 3)無加温ハウスで密植栽培を行う場合は2作目は7月から8月上旬には定植する。定植が遅れると2作目の上位果房が収穫できなくなるおそれがあるので注意する。
- 4)低段密植栽培では果実が慣行より小玉化する傾向があるので注意する(表2)
- 5)低段密植栽培で葉が混み合う時は適宜適葉を行う。
(問い合わせ先:宮城県農業・園芸総合研究所園芸栽培部 電話022-383-8132)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
パイプハウス等簡易栽培施設の夏期環境制御技術の開発(平成25-27年度)
図3 低段密植栽培におけるサイドプランティング(イメージ図)
図4 サイドプランティングの様子(平成27年7月24日)
表1 低段密植栽培の収量の検討(平成26年)
表2 低段密植栽培の収量の検討(平成27年)
表3 ポットレストレーを1a当たり設置するのに係る資材費及び種苗費
- 3)発表論文等
なし
- 4)共同研究機関
なし
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