宮城のプルサーマル情報|宮城県・女川町・石巻市の考え
宮城県・女川町・石巻市の考え
平成22年2月16日
女川原子力発電所3号機におけるプルサーマルの安全性に係る自治体の見解
宮城県
女川町
石巻市
宮城県、女川町及び石巻市は、「女川原子力発電所周辺の安全確保に関する協定」に基づき、東北電力株式会社から女川原子力発電所3号機へのウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(以下「MOX燃料」という)採用(以下「プルサーマル」という)に関する協議を受け、その安全性について検討した結果、次のとおり確認したので、自治体の見解としてここに示します。
第1 自治体の見解の取りまとめの経緯
プルサーマルの導入に際しては、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づく国による厳正な審査が行われ、その安全性が確認されるものでありますが、宮城県、女川町及び石巻市は、女川原子力発電所3号機の安全性について地域としても十分に理解する必要があると考え、改めて地域住民の目線でこれを確認することとしました。
なお、安全性の確認に当たっては、原子力発電は高度な専門性を要することから、3自治体共同で、女川原子力発電所に詳しい者でかつ、原子炉・放射線の専門家及び地震・耐震の専門家を委員とした「女川原子力発電所3号機におけるプルサーマルの安全性に係る検討会議」(以下「安全性検討会議」という)を設置して、プルサーマルの導入に当たって地域住民が疑問や不安に思う主要な15の論点について検討し、委員から意見を受けることとしました。
第2 自治体の見解
宮城県、女川町及び石巻市は、安全性検討会議における委員からの意見、東北電力株式会社の講じる対策及びこれまでの国の見解等を基に、女川原子力発電所3号機のプルサーマルに関する安全性を論点ごとに検討した結果、下記のとおり、プルサーマルを導入しても、その安全性はウラン燃料利用の場合と変わらず確保できるものと判断しました。検討の詳細を別紙に示します。また、原子力発電所の運営に当たっては、国の安全規制が適用され、原子力安全委員会のダブルチェックや原子力保安検査官事務所による常時の監視体制などおおむね適切なものであると判断でき、これにより女川原子力発電所としての基本的な安全管理は維持できるものと考えました。
記
- 計画は、原子力安全委員会が基本的にウラン燃料だけを使用した場合と同じ安全設計、安全評価が可能であるとしているMOX燃料の原子炉内への装荷率である3分の1以下となっていること。
- MOX燃料の健全性については、確保されていること。
- MOX燃料を採用しても原子炉の制御性には問題がなく、原子炉を停止するために必要な能力は十分確保されていること。
- 世界的にMOX燃料は40年以上の使用実績があり、女川原子力発電所3号機と同じ形式の炉でも十分な実績があること。
- 法令や通達による国の検査及び事業者や燃料加工メーカーの品質保証活動が適切に実施されることにより、MOX燃料の品質は確保されること。
- MOX新燃料の輸送及び取扱い時において、安全性は確保できること。
- 使用済MOX燃料の取扱いや保管は、安全に行えること。
- 国の政策として、今後、使用済MOX燃料の処理の方策の検討が始まること。
- 女川原子力発電所3号機の耐震安全性は新耐震指針に照らし、問題はないと考えられることのほか、MOX燃料の採用は耐震安全性に影響を与えるものではないこと。
- MOX燃料を採用した場合の平常時及び事故時における周辺への影響は、ウラン燃料と同等であること。
- 東北電力株式会社の安全管理の仕組みは十分なものであり、不断の努力により十分な安全は確保されること。
安全性に関する検討結果
論点
- プルトニウムの特性
- MOX燃料の使用実績
- 海外におけるMOX燃料の製造
- 輸送時の安全対策
- 使用済MOX燃料の再処理
- 使用済MOX燃料の処分
- 地震によるプルサーマルへの影響
- 燃料健全性への影響
- 原子炉の制御性への影響
- 緊急時の原子炉停止能力
- 作業時の被ばく
- 貯蔵設備の冷却能力
- 平常時の周辺への影響
- 事故時の周辺への影響
- 安全管理体制
【論点】1 プルトニウムの特性
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検討課題
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- プルトニウムは重金属で毒性が強く、また、放射性物質であるので、発ガンなど人体への影響が憂慮される。
- プルトニウムが含まれているMOX燃料は、従来のウラン燃料とは特性が変わり、原子力発電所の運転に悪影響を与えるのではないか。
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自治体の見解
- プルトニウムには、重金属としての化学的毒性のほかに放射能毒性も有する。放射能毒性については、人体に取り込まれるとプルトニウムから放出されるアルファ線により内部被ばくの影響が懸念される。
しかし、MOX燃料として使用する際には、プルトニウムとウランの混合物をセラミック状に焼き固めて燃料被覆管に密封して使用する等、プルトニウムが環境中に放出されることのない設計と構造になっており、原子力発電所の運転管理を適切に実施することにより、プルトニウムによる人体への影響は心配ないものと考える。
また、MOX燃料は従来から使用しているウラン燃料と比較すると、核的特性及びその物性に若干の差異は見られるが、原子力安全委員会※では、原子炉内へのMOX燃料の装荷率が約3分の1までであれば、基本的にウラン燃料だけを使用した場合と同じ安全設計・安全評価が可能であるとしている。
今回、MOX燃料の装荷率が3分の1以下であること、核的特性等を十分考慮した上で必要な対策を講じていることから、女川原子力発電所3号機におけるMOX燃料の使用は基本的に問題ないものと考える。
※「発電用軽水型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について」
平成7年6月19日 原子力安全委員会了承
【論点】2 MOX燃料の使用実績
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検討課題
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- 女川原子力発電所と同じ形式の原子炉(軽水炉)でのMOX燃料の使用実績や実証試験が少ないのではないか。
- 女川原子力発電所で使用されるMOX燃料のプルトニウム含有率、装荷割合はこれまでの実績と比べて高くないのか。
- 過去にMOX燃料が破損した例があるが、問題はないか。
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自治体の見解
- 世界的には10か国の原子炉で40年以上にわたる使用実績(原子炉58基:6、350体(平成20年12月現在))があり、女川原子力発電所と同じ形式の炉(BWR)としては、日本を含め7か国の原子炉14基で、計1、199体の実績がある。
今回、女川原子力発電所で使用されるMOX燃料のプルトニウム含有率及び装荷割合は、同形炉のドイツの実績と比べて高すぎるということはない。
また、これまでのMOX燃料及びウラン燃料の使用実績において、燃料の破損事例が見られるものの、対策や改善が済んでいることに加え、MOX燃料に起因する特異的な破損は確認されていない。
これらのことから、MOX燃料の使用実績については十分であり、使用についても問題はないものと考える。
【論点】3 海外におけるMOX燃料の製造
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検討課題
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- 過去に海外で製造したMOX燃料の検査データの改ざん事例があったが、MOX燃料加工事業者の品質保証をどのように確認していくのか。
- 製造過程の監査はどのように実施するのか。
- プルトニウム含有率の不均一性、プルトニウムスポットの有無等の品質を、どの様に評価するのか。
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自治体の見解
- 東北電力においては、国による輸入燃料体検査に関する通達に基づき、「海外MOX燃料調達に関する品質保証活動について」を定め、使用するMOX燃料を海外において製造委託する場合には、その製造期間中は社員を現地に駐在させ、燃料製造の各工程において製造状況及び品質保証活動の監査や確認を行うとともに、監査の信頼性を高めるために第三者機関も活用する計画としている。
法令や通達による国の検査や事業者及び燃料加工メーカーの品質保証活動が適切に実施されることにより、MOX燃料の品質は確保されるものと考える。
【論点】4 輸送時の安全対策
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検討課題
- MOX燃料は新燃料でもウラン燃料より放射線が強いが、安全に輸送することができるのか。
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自治体の見解
- MOX新燃料は、ウラン新燃料より放射線が強いが、その輸送は十分な遮へい能力を有する輸送容器を用いるため、安全に取り扱うことができる。
東北電力では、MOX燃料を海上輸送することとし、専用の輸送容器は、落下、火災、水没等の事態に遭遇しても十分耐えられるよう健全性が確保されることを試験されているほか、容器内部に水が浸入しても臨界にならないものを用いることとしている。
また、輸送船は二重船殻構造等の安全構造を有する専用船を用いることとしており、テロ等の脅威に対応するため、輸送中は武装護衛船による護衛も実施することとしている。
これらのことから、MOX新燃料の輸送に関する安全性は、確保されるものと考える。
【論点】5 使用済MOX燃料の再処理
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検討課題
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- 使用済MOX燃料は、どう処理していくのか。
- 使用済MOX燃料は使用済ウラン燃料よりも硝酸に溶けにくいなどの課題が指摘されており、再処理することができないのではないか。
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自治体の見解
- 使用済MOX燃料の再処理は、国内外での実績もあり、また、その特性はウラン燃料と大きく異なることはないことから、十分実施可能と考える。
なお、原子力政策大綱※では、使用済MOX燃料の処理の方策については、六ヶ所再処理工場の運転実績等を踏まえて2010年ころから検討を開始するとしている。
※「原子力政策大綱」原子力委員会 平成17年10月14日 閣議決定
【論点】6 使用済MOX燃料の処分
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検討課題
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- 使用済MOX燃料の処分方法が決定されるまでの間は、女川原子力発電所に長期保管されるのではないか。
- 使用済MOX燃料は、女川原子力発電所のどこに保管され、安全対策は万全か。
- 使用済MOX燃料を再処理すると、低・中レベル放射性廃棄物が発生するので、放射性廃棄物の全体量は増大するのではないか。
- MOX燃料は1回燃やすと質が劣る。再処理できなくなる可能性があるのではないか。
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自治体の見解
- 原子力政策大綱※1では、使用済MOX燃料の処理の方策について六ヶ所再処理工場の運転実績等を踏まえて2010年ころから検討を開始し、六ヶ所再処理工場の操業終了に十分間に合う時期までに結論を得ることとしている。
東北電力は、使用済MOX燃料等を再処理する「第二再処理工場」が操業を開始するまでは、女川原子力発電所3号機の燃料プールに保管することとしているが、最も厳しい条件下においても当該燃料プールの冷却能力は十分であること及び未臨界性が確認されていることにより、安全性は確保されると考える。
また、使用済MOX燃料の再処理を行うと、全量直接処分よりも全体の放射性廃棄物は体積にして同程度から6%増加するが、高レベル放射性廃棄物の量は3割から4割まで減らすことができると試算されており※2、高レベル放射性廃棄物の持つ有害度を低減することが可能となる。
なお、使用済MOX燃料の再処理に関しては、国内外での実績があるほか、原子力立国計画※3においては、回収されたプルトニウムについては、高速増殖炉での利用又は再度プルサーマル燃料として利用することとしている。
※1「原子力政策大綱」原子力委員会 平成17年10月14日 閣議決定
※2 原子力委員会第9回新計画策定会議資料第8号 平成16年10月17日
※3「原子力立国計画」総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会報告書 平成18年8月8日
【論点】7 地震によるプルサーマルへの影響
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検討課題
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- 新しい耐震指針により、どのようにして耐震安全性を確認(バックチェック)しているのか。
- 地震の想定が小さいのではないか。
- 中越沖地震における知見はどのように活かしたのか。
- 実際に地震により被災した場合、どのくらいの被害を想定していて、また、防災体制はどうなっているのか。
- プルサーマルを実施すると、地震の際に危険性が増すのではないか。
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自治体の見解
- 女川原子力発電所のプルサーマルについては、耐震性にかかわる変更を伴わず、燃料集合体の構造も同一であることから、ウラン燃料と同様の耐震安全性は確保されると考える。
また、女川原子力発電所では、平成18年9月に改訂された「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」及び平成19年7月に発生した新潟県中越沖地震を踏まえた耐震バックチェック※を実施しており、基準地震動の設定及びその地震動における耐震安全性について検討がなされている。
なお、女川原子力発電所各号機の耐震バックチェックに用いる基準地震動は、敷地周辺の地質やその構造について調査がなされ、また、地震動評価においては、断層モデル又は応答スペクトルを用いて「震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」を設定した上で適切に策定されており、原子力安全・保安院において妥当との評価が出されている。
安全性検討会議の専門家による確認においては、東北電力が実施した女川原子力発電所3号機に対する耐震バックチェックの手法は妥当であり、加えて、地震時に下位の耐震クラスの設備が損傷した場合でも、耐震クラスが上位の設備へ波及的影響がない設計となっていることも確認し、耐震安全性に問題がないものとの意見を受けている。
地震に対する防災体制については、中越沖地震における柏崎刈羽原子力発電所の経験を踏まえた地震直後の初期対応の強化が図られており、問題はないものと考える。
※改訂された耐震指針は、今後新設される原子力発電所等に適用されるが、稼働中の原子力発電所等についても、改訂後の耐震指針に照らして耐震安全性の評価を実施することとされており、この耐震安全性の評価を「耐震バックチェック」という。
【論点】8 燃料健全性への影響
検討課題
- 8-1 ペレット中心温度
MOX燃料は、ウラン燃料よりペレットの融点が低下し、熱伝導率も小さくなり、燃料中心温度が上昇する傾向にある。燃料の健全性を保つことはできるのか。
- 8-2 燃料棒内圧
MOX燃料はウラン燃料より、ペレットからの核分裂生成ガスの放出率が高く、燃料棒の内圧が上昇することで、燃料棒の健全性が損なわれるのではないか。また、反応度急昇事故時の試験が行われていないのではないか。
- 8-3 プルトニウムスポット
プルトニウムとウランを混合してMOX燃料を作るときに、プルトニウムの固まり(プルトニウムスポット)ができる場合があるといわれているが、燃焼の際に燃料棒の健全性が損なわれるのではないか。
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自治体の見解
- MOX燃料は、ウラン燃料よりも融点が低く、熱伝導率も小さく、燃料中心温度が高い傾向にあるが、使用期間全体を通じて、最高温度は融点に対して約1、000℃程度の余裕があることが確認されている。
また、MOX燃料は、ガス状の核分裂生成物の放出率が高く、ヘリウムガスの生成量も多いため、燃料棒内のガスため用空間(プレナム)の体積を大きくすることにより、内圧を安全の範囲内に保つこととしている。さらに、プルトニウムスポットについては、日本原子力研究開発機構(旧日本原子力研究所)において最大で直径1、100μmのプルトニウムを埋め込んだMOX燃料で反応度投入試験を行っており、燃料破損への影響はないことが確認されていることに加えて、その他の燃料の健全性に関しても日本のほか、米国やフランスにおいて実験が行われてきている。
今回、東北電力が使用を計画しているMOX燃料は、プルトニウムスポットの直径が400μm以下となるよう仕様を定めて製造管理を行うとしている。
これらのことから、燃料棒の健全性が損なわれることはないものと考える。
【論点】9 原子炉の制御性への影響
検討課題
- 9-1 出力分布の不均一性
MOX燃料はプルトニウムが中性子を吸収するために燃料集合体内の中性子が少なくなる。中性子が多く存在するウラン燃料を隣に配置すると、その部分のMOX燃料が反応しやすくなり、MOX燃料集合体外周部の燃料棒出力が高くなりやすいが、燃料の健全性や原子炉の制御に影響を与えないか。
- 9-2 熱中性子割合の減少
プルトニウムはウランより熱中性子を吸収しやすいため、MOX燃料を採用すると熱中性子の割合が減少することから、原子炉の制御が不安定になったり、制御が不能になることはないのか。
- 9-3 作業ミス・操作ミスの可能性
MOX燃料を導入すると燃料の種類が増え、炉心への燃料装荷時に間違いを誘発しやすく、また、制御棒引き抜けなどの操作ミスが事故につながる危険性も大きくなるのではないか。
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自治体の見解
- プルトニウムは、ウランよりも熱中性子を吸収しやすいが、MOX燃料採用に当たって、燃料集合体内で核分裂性プルトニウムの濃度を変えた燃料棒を適正に配置することにより、燃料集合体内部の出力分布をウラン燃料と同等にするように設計しており、燃料の健全性や原子炉の制御に影響を与えるものではないことが確認されている。
MOX燃料を採用すると、遅発中性子割合が少なくなるとともに減速材ボイド係数がより負となることから、ウラン燃料炉心と比較して炉心安定性等が悪くなるが、MOX燃料の設計や原子炉内における配置に配慮することにより、安定性の解析結果は基準を満足することが確認されている。
これらのことから、原子炉の制御性に問題はないと考える。
また、東北電力は燃料装荷時には手順書に従い複数人で燃料集合体の固有番号を確認する体制を実施してきている。MOX燃料を導入すると燃料の種類が増え、炉心への燃料装荷時に入れ間違う可能性が高くなるが、現在の対策が確実に履行されれば燃料装荷間違いの可能性及び事故につながる危険性は最小限に抑えられると考える。
【論点】10 緊急時の原子炉停止能力
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検討課題
- プルトニウムはウランより熱中性子を吸収しやすいため、MOX燃料を採用すると制御棒への熱中性子の吸収割合が減少し、制御棒の効きが悪くなる傾向があるが、原子炉の安全は確保されているのか。
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自治体の見解
- プルトニウムは、ウランよりも熱中性子を吸収しやすいため、制御棒付近では熱中性子数が少なくなることから、MOX燃料を装荷した炉心は、ウラン燃料のみの炉心と比較して制御棒の効きが若干低下するが、原子炉停止余裕の解析評価では、制御棒による原子炉停止能力が最も厳しいときでも十分な安全余裕を有していることが確認されており、原子炉を停止するために必要な能力は十分確保されていると考える。
【論点】11 作業時の被ばく
検討課題
- 11-1 MOX新燃料の取扱い
MOX燃料は新燃料でもウラン燃料より放射線が強く、輸送や検査時等における燃料取扱時に作業員の被ばくが大きくなるのではないか。また、燃料取扱中に燃料落下事故が発生した際、ウラン燃料と比較して影響が大きくなるのではないか。
- 11-2 使用済MOX燃料の取扱い
使用済MOX燃料は、使用済ウラン燃料に比べて放射線が強くなるが、使用済MOX燃料を貯蔵することにより作業エリアの線量が高くなることはないか。
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自治体の見解
- MOX新燃料は、ウラン新燃料より放射線が強いため、輸送や燃料検査等の取扱時においては作業者の被ばく低減を図る必要がある。東北電力では遮へい体の設置、遠隔操作の実施及び作業時間の短縮の措置を講ずるとしており、作業者の被ばくを低減することが可能であると考える。
また、燃料落下事故については、装置の二重化などによる安全対策を施すとしており、仮に落下した際の影響評価でも判断基準を満足していることが確認されており、MOX新燃料の取扱いにおける被ばくについては特段の問題はないものと考える。
使用済MOX燃料は、使用済ウラン燃料と比較して中性子線が多く放出されるが、ガンマ線は放出量が少なく、使用済ウラン燃料の方がわずかに高い線源強度となる。
使用済MOX燃料の保管に当たっては、従来の使用済ウラン燃料と同様に、遮へいに必要な水深とコンクリート厚を確保した状態で燃料プールで行うこととしていることから、作業エリアの線量が高くなることはないと考える。
【論点】12 貯蔵設備の冷却能力
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検討課題
- 使用済MOX燃料の発熱量は使用済ウラン燃料に比べて大きいが、使用済MOX燃料を保管する際、十分に冷却することができるか。
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自治体の見解
- 使用済MOX燃料の発熱量は、使用済ウラン燃料に比べて大きいが、女川原子力発電所3号機におけるMOX燃料の使用計画においては、MOX燃料の燃焼期間が短いことから、燃料プールに保管する際の使用済MOX燃料の崩壊熱は使用済ウラン燃料のものと同等であり、現在の冷却設備で対応可能であることが確認されている。
このことから、使用済MOX燃料を保管する燃料プールの冷却能力は十分であると考える。
【論点】13 平常時の周辺への影響
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検討課題
- MOX燃料を使用することにより、通常の運転時において周辺住民の被ばく量が増えるのではないか。
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自治体の見解
- MOX燃料はウラン燃料と比較して、原子炉運転中でのプルトニウムの核分裂が多いため、燃料棒中の核分裂生成物の存在割合も多く、放射性ヨウ素は若干増加するものの放射性希ガスは1/3MOX炉心で7割程度まで少なくなる。放射線量は放射性希ガスに起因するものが支配的であるので、MOX燃料による線量はウラン燃料による線量を超えることはなく、通常の運転時において周辺住民の被ばく量は増えないことが確認されている。
このことから、平常時の周辺への影響は従来と変わらないものと考える。
【論点】14 事故時の周辺への影響
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検討課題
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- MOX燃料を使用すると事故が発生した際、住民の被ばく量が増えるのではないか。
- プルトニウムが環境中に放出されるのではないか。
- 炉心溶融等の過酷事故対策が必要ではないか。
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自治体の見解
- MOX燃料中のプルトニウムは、沸点が高いため、燃料破損に至る事故が発生したとしても気体状になりにくい。仮に粒子状物質として原子炉格納容器内に放出されたとしても各種装置による除去や原子力発電所が有する放射性物質を閉じ込める能力により、環境中にプルトニウムが放出されることは考えにくい。
また、燃料ペレットからの放射性希ガスと放射性ヨウ素の放出率については、MOX燃料はウラン燃料と比較して、若干大きくなるが、これまでのウラン燃料使用時の安全評価に用いている放出率の範囲内となっていることから、安全評価上は住民の被ばく量は増加しないことが確認されている。
さらに、過酷事故対策についても、評価上の想定はウラン燃料使用時の条件に包含されていることから、MOX燃料を使用したときに限った対策は必要と認められない。
これらのことから、MOX燃料を使用した際においても、事故時の周辺への影響は、従来のウラン燃料によるものと同等であると考える。
【論点】15 安全管理体制
検討課題
- 15-1 核物質防護対策、教育
MOX燃料を導入することに伴いテロ等に備えた核物質防護対策や、社員教育等は行っているか。
- 15-2 安全管理等への取り組み
- 東北電力では、安全確保に向けてどのように取り組んでいるのか。
- 過去のトラブル等において、どのような対策を取ってきたのか。また、その結果はどうであったか。
- 安全確保に向けて、組織内で連携を充分に図っているか。
- 東北電力では、一連のトラブルを風化しないように、今後どのような取り組みを行っていくのか。
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自治体の見解
- 女川原子力発電所のテロ等の対策については、原子炉等規制法に基づき国の認可を受けた「女川原子力発電所核物質防護規定」を定めており、各種の厳重な防護措置が講じられていることから、MOX燃料の使用においても現状の対応で可能と考える。
教育に関しては、保安教育等が規定や計画に基づいて実施されており、今後はMOX燃料に関する教育も行うこととしている。また、職種や職歴に応じた種々の研修・教育、訓練などを社内だけでなく、社外の様々な手段を活用して実施しているほか、今後、新人教育の在り方を検討している。
これらのことから、核物質防護対策に関しては適切であり、また、教育に関しては、今後も社員及び協力会社作業員に対して適切かつ積極的に実施していくことで、安全管理体制が維持できるものと考える。
安全管理等への取組みについては、東北電力においては、平成18年7月、女川原子力発電所における品質保証体制が十分に機能していないおそれがあるとして、国からの指示を受け、総点検を実施している。また、同年11月には発電設備の総点検の指示を受け、これを実施している。
平成20年には、原子力発電所構内及び原子炉格納容器内での連続火災や平成21年には、非常用炉心冷却系の機能が不十分な状態で原子炉を運転していたこと等、県民に不安を与える不具合やトラブルが散見されたが、原因の分析及び再発防止対策を策定し、組織の見直しや人員配置等の対策を施しているところである。
現在の東北電力の安全管理体制については、社長をトップとした組織体で構成されているほか、品質保証活動は、ISO9001の品質マネジメントシステムを基本とした「原子力発電所における安全のための品質保証規定(JEAC4111)」にしたがって品質保証計画が制定されており、仕組みとしては十分なものとなっている。
現在、品質保証活動については、目標設定の在り方や品質保証マネジメントの有効性評価などにおいて、なお完成の途上にある状況ではある。今後、継続的に品質マネジメントシステムの改善を進め、原子力安全に係るPDCAサイクルの継続的改善が見えるようにするとともに、事業者は、過去に自ら定めた再発防止対策を遵守することはもとより、不具合やトラブルの未然防止に資するよう、現状の安全管理体制の下、確実な品質マネジメントを実施し、新たな不具合やトラブルを限りなくゼロに近づける不断の努力を行うことで、プルサーマルを実施するに当たっての十分な安全が確保されるものと考える。