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平成30年6月18日
本日、ここに第三百六十四回宮城県議会が開会され、提出議案を御審議いただくに当たり、最近の県政の動きと議案の概要を御説明申し上げます。
説明に先立ち、先日、平昌オリンピック男子フィギュアスケート競技において、六十六年ぶりの二大会連続金メダルを獲得した羽生結弦選手に、国民栄誉賞が授与されることが発表されました。本県出身者として初めての受賞に加え、個人での歴代最年少受賞はまさに快挙であり、羽生さんと関係者の皆様に心からのお祝いを申し上げます。四月に開催いたしました祝賀パレードでは、爽やかな晴天の下、十万人を超える観衆が集まり、羽生さんの偉業を県民挙げて讃えることができました。今回の受賞は、被災された方々をはじめ、県民全体へ更なる勇気と希望をもたらす輝かしい出来事であり、創造的な復興の総仕上げに向け、これ以上ない後押しをいただいたものと深く感謝を申し上げるとともに、自らを奮い立たせております。
それでは、御説明いたします。
初めに、平成三十三年度以降を見据えた復興事業に対する国の支援策への対応についてであります。震災に係る国の手厚い支援制度は、復興・創生期間の終期である平成三十二年度まで継続される見通しでありますが、その後の支援策は、現時点では明確になっておりません。先日、私は、国の復興推進委員会におきまして、災害復旧事業の完遂、沿岸部のものづくり産業再生、被災者の心のケア、児童生徒へのきめ細かな対応など、真の復興に向けた国の継続的な支援の必要性を強く訴えてまいりました。引き続き、様々な機会を捉えて、他の被災自治体とも連携し、国に対して被災地の厳しい現状を訴えるとともに、必要な支援が確保されるよう、積極的に働きかけを行ってまいりたいと考えております。県といたしましても、平成三十三年度以降の復興事業の在り方や必要な財源を更に整理し、県の基金残高等も踏まえながら、将来的な事業の規模や期間について、精査・検討を進めてまいります。
次に、震災復興計画の推進と宮城の将来ビジョンの実現に向けた取組状況についてであります。
沿岸部の被災地においては、ハード面の復興は着実に進んでおり、今年度中に全ての災害公営住宅が完成し、防災集団移転促進事業も全地区で住宅等が建築できる状況となる見込みであるほか、公共土木施設等の復旧・復興事業も概ね順調に進捗しております。
また、三月には、三陸縦貫自動車道の大谷海岸から気仙沼中央インターチェンジ間が開通いたしました。部分開通とはいえ、気仙沼市まで延伸されたことは、復興の最終段階に向けた大きな一歩であると考えております。
一方で、未だ四千人を超える方々が不自由な仮設住宅での暮らしを余儀なくされており、復興の進捗度合いが、住まいや地域コミュニティなどの生活環境、被災者の心のケアをはじめとした健康問題などにも大きな影響を与えているのが現状であります。被災地が抱える問題には地域ごとに違いが生じてきており、真の復興に向け、地域の課題へのよりきめ細かな対応が求められております。
このような中、震災復興計画の最終ステージである発展期の初年度を迎え、私は、創造的な復興の総仕上げに向け、全身全霊でラストスパートをかけてまいりたいと考えております。そのためには、国や市町村等との連携が不可欠であり、しっかりと意見交換を行い、手と手を携えながらともに困難な課題にチャレンジしてまいる所存でありますので、議員各位の御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げます。
次世代放射光施設につきましては、国のパートナー公募に対し、一般財団法人光科学イノベーションセンターを代表とする仙台市、東北大学などとの連名による提案書を提出し、これまでヒアリングや現地調査などの審査に対応してまいりました。今回、整備が計画される次世代放射光施設は、諸外国と互角に競争するための先端性と安全性を兼ね備えた世界レベルの性能を有することとなります。仙台市の青葉山地区に施設が建設されれば、国内外の研究者が本県を訪れることになるほか、研究施設や企業の集積が進み、リサーチコンプレックス形成によるイノベーションの創出が大いに期待されます。この新たな施設が、我が国の科学技術、産業技術の発展に貢献し、地元産業への波及や、理工系学生の県内定着、雇用創出など、県内経済の更なる活性化につながるよう、共同提案者との連携を深めてまいります。
上水道、工業用水道、下水道三事業の一体化につきましては、官民共同で運営する「みやぎ型管理運営方式」の事業概要を公表するとともに、事業の対象となる各施設について、現地見学会を開催いたしました。今回の運営スキームは、民間事業者のノウハウを活かすコンセッション方式により、効率化や維持管理コスト削減を目指す全国初の試みであり、県は三事業の事業者として既存施設の所有権を有したまま、水道用水・工業用水の供給や汚水の処理、設備投資を行う民間事業者と運営権契約を締結することとなります。国の水道法改正の状況が懸念されますが、今後、事業者の募集・選定に向け準備を進めてまいります。
民営化から間もなく二年が経過いたします仙台空港につきましては、昨年度の利用者数実績の速報値が、国内線・国際線の合計で三百四十三万人余りと過去最高を記録いたしました。これは、昨年、格安航空会社のピーチ・アビエーションが、仙台空港を拠点として台北線と札幌線を新設したことなどによる効果が現れたものと認識しております。四月からは、フジドリームエアラインズの出雲線も新設され、この秋には新たな搭乗施設である「ピア棟」も完成する予定であり、今後、仙台空港利用者の一層の増加が期待されます。私としても、トップセールスを更に進め、仙台空港の利便性を高めることにより、交流人口の拡大に注力してまいる所存であります。
また、放射性物質による汚染廃棄物につきましては、仙南圏域と黒川圏域において、八千ベクレル以下の汚染廃棄物の試験焼却が始まりました。長く続いた一時保管状態の解消に向け、具体的な取組が開始されたことは、大きな前進と考えております。今後、石巻圏域と大崎圏域でも試験焼却に向けた取組が進んでいくものと考えており、試験焼却が円滑かつ安全に行われるよう、引き続き、国と協力して関係市町村等の取組を支援しながら、処理の促進を図ってまいります。
次に、地方創生についてであります。
三月に発表された国立社会保障・人口問題研究所の推計では、本県の人口は、二千四十五年には、約百八十一万人となり、高齢化率は四割を超えるものとされております。特に東日本大震災で大きな被害を受けた沿岸部の市町において、人口減、高齢化が顕著に進むと予想されております。
本県では、宮城県地方創生総合戦略において、二千六十年の目標人口を百八十四万人に設定するとともに、急激な人口減少に歯止めをかけるべく、様々な施策を講じているところであります。今回の推計は、総合戦略を策定した時点より更に人口減少、高齢化が進む見込みとなっており、被災した沿岸部を中心に地方創生の推進が待ったなしの状況にあるものと改めて認識しております。
私は、総合戦略を、宮城の将来ビジョンと震災復興計画を進めていく上でのエンジンであると捉えております。この総合戦略に基づき、安定した雇用の創出、移住・定住の推進、子育て支援の充実などの施策を推し進めることにより、次世代を担う子ども達に活力とやすらぎに満ちた宮城を託すことこそ、自身に課せられた大きな使命であると強い想いを抱いているところであります。そのためには、基礎自治体である市町村との連携が何より重要であり、県民一人ひとりが幸福を実感し、安心して暮らせる宮城の実現に向けて、より効果的な施策を検討し、ともに力を合わせて地方創生の推進を図ってまいります。
次に、働き方改革についてであります。
長時間労働の是正による労働生産性の向上や女性、高齢者をはじめとした働き手の増加を進める働き方改革は、少子高齢化により生産年齢人口が急速に減少している我が国において、持続可能な成熟した社会を実現する一つの切り札と考えられます。
先月、「日本創生のための将来世代応援知事同盟サミット」が、東北地方で初めて本県で開催され、私を含む十二県の知事等が一堂に会し、「しごとの創生」と「働き方改革」をテーマに熱い議論を交わしました。また、十月に、女性の活躍や働き方改革について話し合う全国フォーラム、「WIT二○一八宮城」を本県で開催することとしております。このような様々なフォーラムの開催などを通じて、一人ひとりが多様な場で活躍できる社会づくりを目指し、魅力ある働き方と女性の活躍を進める動きを、ここ宮城から全国に発信してまいりたいと考えているところであります。働き方を変えることにより社会を変えていくという考え方が、県全体に波及することを目指し、本県においても、全庁を挙げて働き方改革を推し進めてまいります。
最近の景気動向につきましては、一月から三月期の実質国内総生産が二年三か月ぶりのマイナス成長を示したものの、政府の月例経済報告によれば、個人消費は持ち直し、設備投資も増加しているなど、景気は緩やかに回復しており、雇用・所得環境の改善が続く中で、回復基調の継続が期待されております。
本県におきましては、生産に関しては、このところ弱含みであるものの高水準を維持しており、また、雇用情勢も改善していることから、基調としては緩やかに回復しているところであります。
一方で、住宅投資や公共投資に減少の動きもあり、個人消費についても、持ち直しに向けた動きに足踏みが見られ、被災された方々を含めた県民一人ひとりが、実感として景気回復の波を享受できる段階までには至っていないものと認識しているところであります。
こうした経済状況において、「再生期から発展期へ ジャンプアップ予算」と名付けました今年度の当初予算につきましては、引き続き被災者の生活再建や心の復興、地域経済の再生などを最優先として、次代を担う子どもたちへの支援や医療・介護の充実、交流人口の拡大等に取り組むべく、鋭意執行に努めております。
観光振興につきましては、昨年の観光客入込数及び宿泊者数がともに過去最高となり、国民的男性アイドルグループの御支援をいただいている今年の通年型観光キャンペーンにおきましても、動画の閲覧数が公開からおよそ二週間で二百五十万回を超え、ガイドブックの配布数も約十万部となるなど、上々の滑り出しを見せ、手応えを感じているところであります。
今後、通年型観光キャンペーンによる国内誘客に加え、仙台・松島復興観光拠点都市圏DMOを中心とした外国人観光客受入体制の構築や、気仙沼市、東松島市で整備が進んでいる宮城オルレなどの魅力あるコンテンツの開発、仙台空港をはじめとした交通拠点の機能向上とストレスフリー観光の実現などの取組を進め、国内外の交流人口拡大を図ってまいります。
この秋に本格デビューを迎えます米の新品種「だて正夢」につきましては、食味や食感など、他のブランド米との差別化を図るプロモーションを様々な機会を捉え展開していくことにより、県内及び首都圏を中心とした販路拡大に努めることとしております。また、先月、新たに本県の基幹種雄牛として選抜された「茂福久」号は、牛肉の霜降り度を示す脂肪交雑が国内歴代最高の成績を収め、県産肉用牛の一層の肉質向上に貢献することが期待されます。このようなブランド確立に向けた取組によって、県産品の認知度向上を図るなど農林水産業の振興に力を尽くしてまいります。
このほか、東京二○二○オリンピック聖火リレーに先立ち、岩手・宮城・福島の被災三県において、ギリシャで採火した火を「復興の火」として展示する方針が大会組織委員会から発表されました。被災地での展示が実現されれば、「復興五輪」の名にふさわしく、被災された方々の心に、未来に向けた希望の光を点すこととなり、非常に意義深いものと考えております。先月には、国際オリンピック委員会において、「ひとめぼれスタジアム宮城」がサッカー競技の会場に承認されたところであり、大会の成功に向け、競技開催自治体としての役割をしっかりと果たせるよう計画的に準備を進めてまいります。
なお、今年度当初予算は、震災復興計画の推進と宮城の将来ビジョンの実現に向けた取組に最大限配慮し、通年予算として年間所要額を計上したところであります。当面は現計予算の計画的かつ効率的な執行と歳入の確保に努めることとし、追加需要に対応する補正予算につきましては、復旧・復興事業の進捗状況を踏まえ、県税、地方交付税などの見通しがつく九月以降に、財源確保の状況を勘案しながら措置してまいりたいと考えております。
今回御審議をお願いいたします提出議案は、条例議案十四件、条例外議案二十二件でありますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。
まず、条例議案でありますが、議第百五十一号議案は、観光振興施策を実施するための財源の在り方に関する重要事項を審議する検討会議を設置しようとするもの、議第百五十三号議案は、地方税法の改正に伴い、個人県民税の非課税範囲の変更や県たばこ税の税率引上げなど県税条例等の一部を改正しようとするものであります。また、議第百五十六号議案は、療養病床を介護老人保健施設や介護医療院に転換した場合の既存病床数の算定について経過措置を定めようとするもの、議第百五十九号議案、議第百六十号議案及び議第百六十三号議案は、東日本大震災により被害を受けた者が職業能力開発校、農業大学校及び県立学校に入学する際の入学金等の免除の期間を延長しようとするものであります。
次に、条例外議案でありますが、議第百六十五号議案は、財産の取得について、議第百六十六号議案及び議第百六十七号議案は、工事委託契約の締結について、議第百六十八号議案ないし議第百七十六号議案は、工事請負契約の締結について、議第百七十七号議案ないし議第百八十三号議案は、工事請負変更契約の締結について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。また、議第百八十四号議案は、地方税法の改正に伴う県税条例の一部改正について、議第百八十五号議案は、石巻市立大川小学校国家賠償等請求控訴事件に係る上告の提起及び上告受理の申立てについて、議第百八十六号議案は、平成二十九年度宮城県一般会計予算の補正について、それぞれ専決処分を行いましたので、その承認をお願いしようとするものであります。
以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
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