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令和6年9月18日
第393回宮城県議会知事説明要旨
本日ここに第393回宮城県議会が開会され、令和6年度一般会計補正予算案をはじめとする提出議案を御審議いただくに当たり、最近の県政の動きと議案の概要を御説明申し上げます。
説明に先立ちまして、この夏に開催されましたパリ2024オリンピック・パラリンピックで、我が県ゆかりの選手が世界の強豪相手に素晴らしい活躍をされ、見事銀メダル3個、銅メダル1個を獲得されました。これは県民にとりましても大きな誇りであり、その功績に敬意を表し心からお祝い申し上げますとともに、県民に多くの感動をもたらしていただきましたことに深く感謝いたします。
また、7月の梅雨前線による大雨や先月から続けて発生している台風では、東北地方においても河川の氾濫や土砂災害が発生するなど、地域生活や産業基盤に甚大な被害が生じました。亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。本県の対応としましては、7月の大雨において、北海道・東北8道県相互応援協定に基づき発災直後から山形県に職員を派遣し、東日本大震災での経験を活かして助言や被災状況の把握等を行ったところであります。近年、全国各地で地震や台風、大雨などによる災害が頻発化・激甚化しておりますことから、我が県におきましても、その備えの一層の強化に努めてまいります。
それでは、御説明申し上げます。
初めに、地域産業を支える人材の確保に向けた取組についてであります。
7月に公表された日本銀行の全国企業短期経済観測調査によれば、雇用状況は、産業や企業規模にかかわらず全体で人手不足感が強まっており、この状況は当面の間続くものと見込まれております。県内におきましても、人口減少による構造的な人手不足が各方面に深刻な影響を及ぼしており、私は、こうした現状に強い危機感を抱き、各分野においてDXの推進等により業務効率や生産性の向上を図りつつ、人材確保に向けた様々な施策を一体的に進めているところであります。中でも若者の県内定着については、県内学生の大都市圏への流出が続いていることから、今年度は、インターンシップの受入経験が少ない中小企業等を対象とした人事担当者向けセミナーの開催や個別企業への専門家派遣などによる支援に加え、情報サイトを開設し学生と企業とのマッチングをサポートするとともに、学生が企業の魅力、業界や社会のつながりを効率よく体験できるよう、テーマを設け複数企業によるパッケージ型インターンシップを実施しております。また、県内私立大学や産業界とともに新たに実施している「ものづくりカレッジプロジェクト」では、ものづくり企業の特色や魅力を大学生に伝える取組を開始したところであり、今後とも、県内企業や大学等と連携を図りながら、若者の県内就職や定着につなげてまいります。
外国人材の確保に関しては、インドネシアとの覚書締結を契機として、今月初めにジャカルタ市内で介護や製造業など人手不足に直面する県内企業46社が一堂に会し、大規模な「みやぎジョブフェア」を開催いたしました。就業を求める参加者は想定の倍以上となる約1,200人となり、企業が面談のほか、人材を送り出す機関と具体的な協議を行うなど、その成果に確かな手応えを感じたところであります。これからも関係者や関係団体との緊密な協力体制の下で、外国人材の受入促進を進めていくとともに、我が県で就業される皆様が安心して働き続けられる環境整備にも一層力を入れて取り組んでまいります。
半導体産業を支える人材確保に向けては、大規模な半導体工場の立地を契機として、台湾などから就業者の受入れが多数見込まれる我が県と熊本県が、国家戦略特区である「産業拠点形成連携“絆”特区」に指定されました。このことにより、外国人材の受入れや産業拠点形成を進めるための環境整備について、地理的に離れた両県が連携し規制や制度の改革を行うことで、共通の課題解決に取り組むことが可能となります。具体的には、在留資格の審査期間の迅速化を図るため、国が特区における規制の特例措置として県による受入企業の認定等が可能となるよう調整を進めており、半導体産業の拠点形成が加速するものと期待しております。また、産学官が連携して支援を行う東北半導体・エレクトロニクスデザインコンソーシアムでは、半導体産業の人手不足解消を目指し、足元の人材確保と将来の担い手育成を並行して多面的に展開する方針であり、引き続き関係団体とも連携を図りながら、しっかりと取組を進めてまいります。
加えて、半導体生産拠点の整備については、我が国の経済安全保障上の観点からも国の強力な支援の下で取組を進めることが重要であることから、半導体工場の立地が進む6道県が共同で、工場の安定操業に不可欠なインフラ整備や人材の育成・確保などに対する支援を7月に国へ要望したところであります。今後とも国や企業、大学、関係自治体等と連携し、我が県経済の持続的な成長・発展はもとより、国内における半導体サプライチェーンの強靱化に向けて、全力を挙げて取り組んでまいります。
次に、交流人口の拡大と地域経済の活性化についてであります。
我が県の令和5年観光統計概要の速報値では、観光客入込数はコロナ禍前の令和元年と同程度まで回復してきておりますが、観光業界においても人手不足が深刻化しており、その対応が急務であります。また、人口減少や高齢化により日本人観光客の減少が見込まれる中、全国的には好調なインバウンド需要の取り込みに本県も時機を逸することなく積極的かつ戦略的に取組を進めていく必要があります。
私は、こうした観光を取り巻く状況も踏まえ、観光産業の持続的発展と魅力ある地域づくりの実現には、交流人口やインバウンド需要の更なる拡大、DX等の社会変革にも対応できる観光地域づくりの構築が極めて重要と考えております。そのためには、観光産業の活性化、魅力ある観光資源の創出や観光客受入環境の充実などを地域と一体となって継続的に進めていくことが不可欠であり、安定的な財源確保が必要であります。このような認識の下、県では、みやぎ観光振興会議の開催に加え、県内各地域に担当者が出向いて、市町村や宿泊事業者をはじめとする観光関連事業者の皆様と地域が抱える課題や宿泊税導入の必要性、今後の観光施策に関して意見交換を重ねてまいりました。そして、皆様からの御意見や御要望を踏まえ、改めて地域課題に即した税の制度設計や新たな観光施策について検討を行いつつ、仙台市とも調整を図り、今議会に新たな条例案を提案しているところであります。今月12日には県民説明会を開催し、私から宿泊税導入の必要性について御説明を行うとともに、参加された皆様からこれまでの取組やこの先の観光振興に関して貴重な御意見を直接伺うことができました。今後とも財源を活用した効果的な施策のあり方について、県民の皆様の声にしっかりと耳を傾け検討を進めてまいりますので、議員各位におかれましては、御理解・御協力を賜りますようお願い申し上げます。
仙台医療圏における病院再編につきましては、現在、名取市に新設される統合新病院の概要について、県、日本赤十字社、県立病院機構に東北大学を加えた4者で検討を進めております。一方、東北労災病院と県立精神医療センターの合築については、センターのあり方に関し、柔軟かつ多角的な視点から検討を行いつつ、引き続き協議に当たっているところであります。また、懸念を抱いている仙台市との協議においては、救急医療及び精神医療を中心に議論を進め、病院再編が仙台医療圏の政策医療に与える影響等について、具体的に論点を確認しながら順次検証している状況であり、残る項目についても協議を継続していくこととしております。今後も再編による政策医療の課題解決に向けて、関係者や関係自治体と十分に調整を図りながら取組を進めてまいります。
東日本大震災からの復興に関して、先月、国の復興推進委員会が開催され、地震・津波被災地域における第2期復興・創生期間までの復興施策の総括と令和8年度以降の方向性に関する議論が行われました。私は、この会議に出席し、被災者の心のケアなどのソフト面や東京電力福島第一原子力発電所事故に起因する諸課題について、地域の実情に配慮した丁寧かつ継続的な支援が必要と訴えたところであります。復興の進展に伴い、今後、復興事業を一般施策へ徐々に移行していく方向性は理解できますが、復興のために必要なニーズに対して国の財政支援が確実に講じられるよう引き続き要望していくとともに、復興完了に向けて被災者に寄り添いながら地域の実情に応じた支援にしっかりと取り組んでまいります。
東北電力女川原子力発電所2号機について、東北電力は、原子炉内への核燃料の装荷を今月9日に完了しており、原子炉の漏えい検査等を経て、11月頃には東日本大震災以降初めて発電を再開する予定としております。県としましては、引き続き原子力防災対策に万全を期すとともに、東北電力に対して安全性確保の確実な履行のほか、進捗状況を関係自治体や県民に丁寧に説明を行うよう求めてまいります。
国において6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」、いわゆる骨太の方針では、令和9年度までの地方一般財源の総額について、今年度の地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保して、地域における賃金と物価の好循環の実現を支える地方行財政基盤の持続性を確保・強化することが示されました。地方一般財源総額の確保は、これまでも全国知事会等を通じて要望をしてきたところであり、地方の主張が反映されたものと考えておりますが、現在の物価高や民間の賃上げ等に伴う人件費、行政サービス・施設管理費等の増加、金利上昇を踏まえた公債費の財源など、地方歳出の拡大要素についても確実に措置されることが重要であることから、地方一般財源総額の確保・充実が図られるよう、今後とも国に対して強く求めてまいります。
我が県の今年度の歳入見通しは、普通交付税が当初予算計上額を上回る見込みとなったものの、財政調整基金の取崩しや特例的な県債の発行を取りやめるほどではなく、物価高に加え、国際情勢の影響に留意すべき状況が続いていることも踏まえれば、引き続き慎重な財政運営が必要と考えております。依然続く物価高騰への対応について、国では、予備費を活用し燃料油価格の上昇を抑制する激変緩和対策の実施のほか、酷暑対策として、8月から10月使用分の電気・ガス料金に対して補助を行うことを今月3日に閣議決定し、支援を講じていくこととしております。また、今秋にも国の経済対策が策定される動きがあることから、その動向を注視し概要が明らかになり次第、可能な限り早期に県の補正予算案が提案できるよう調整を進めてまいります。
このため、今回御審議をお願いいたします補正予算案は、特に緊急を要する物価高騰対策を計上するとともに、災害復旧等に要する経費など、速やかな対応を必要とする施策について措置することとして編成したものであります。
補正予算案の主な内容としましては、物価高騰への対応として、市町村が低所得世帯を対象として独自に行う物価高騰対策に助成するとともに、食材費等の高騰により活動が厳しい状況にある子ども食堂への支援を行います。また、農林水産分野については、飼料価格高騰の影響が著しい畜産農家や養殖業者を対象に配合飼料購入費への助成を行います。さらに、近年の海水温上昇により生育不良などの影響を受けている養殖業者に対して、海洋環境変化に対応するための資材等の導入を支援します。
災害対策に関しては、大規模災害時に避難等の機能を有する災害に強い道路の整備に要する経費を追加するほか、災害時の避難者支援に有用な自然災害避難支援アプリを導入するとともに、その普及拡大を図るため、アプリを登録した住民への地域ポイント付与事業の全県展開を実施します。また、今年2月の暴風・波浪により被災した女川漁港施設等の災害復旧に要する経費を計上するほか、令和元年東日本台風災害を受けた国道349号丸森地区の災害復旧や吉田川等の災害関連事業の実施に伴う国直轄事業負担金を増額します。
このほか、宿泊税創設に伴い必要となる税務システムの改修に要する経費を計上するとともに、医療機関や薬局への電子処方箋管理サービスの普及拡大を図るため、システム整備に係る費用への助成を行います。教育分野では、新たなタイプの学校「idealスクール」の開設に向け、校舎改修に係る実施設計の債務負担行為を設定します。
以上、補正予算案の主な内容について御説明申し上げましたが、今回の補正規模は、一般会計、総会計ともに54億8,160余万円となります。財源としては、県債28億7,030万円、国庫支出金12億1,700余万円などを追加しております。
この結果、今年度の予算規模は、一般会計で1兆292億9,420余万円、総計で1兆5,251億9,780余万円となります。
次に、予算外議案については、条例議案9件、条例外議案6件を提案しておりますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。
まず、条例議案でありますが、議第119号議案は、観光振興に係る施策を実施するため、財源の確保を目的として宿泊税を創設しようとするもの、議第120号議案は、医療機関における薬剤師の確保及び医療提供体制の整備のため、薬学生修学資金貸付制度を創設しようとするものであります。また、議第124号議案は、流域下水道の維持管理負担金の改定を行おうとするもの、議第126号議案は、宮城県立松陵支援学校を設置しようとするもの、議第127号議案は、若柳警察署と築館警察署を統合し栗原警察署を設置しようとするものであります。
次に、条例外議案でありますが、議第128号議案は、財産の取得について、議第129号議案は、財産の処分について、議第130号議案及び議第131号議案は、工事請負契約の締結について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。
以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
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