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令和4年2月14日
第三百八十二回宮城県議会知事説明要旨
本日ここに第三百八十二回宮城県議会が開会され、令和四年度一般会計当初予算案をはじめとする提出議案を御審議いただくに当たり、令和四年度の県政運営の考え方と議案の概要を御説明申し上げます。
東日本大震災の発生から間もなく十一年を迎えようとしております。
我が県の総力を挙げた取組により、復興まちづくりや県民生活を支える施設・設備の再建などのハード事業は概ね完了し、沿岸被災地の姿は震災直後とは大きく変貌を遂げました。昨年十二月には、国が整備を進めてきた三陸沿岸道路が全線開通し、水産業をはじめとする地域産業の活性化や観光振興、災害への対応などに大きな役割を果たすものと期待されております。
一方で、被災された方々の心のケアや地域コミュニティの再生といったソフト面の取組は、ある時点をもって完結するといったものではなく、一つひとつの課題に応じた丁寧かつ継続的な支援が大変重要であると認識しております。また、私たちの経験した悲しみを二度と繰り返すことのないよう、震災の記憶や教訓を国内外に発信し将来に伝え継いでいくことは、最大の被災地としての重要な責務であります。平成二十三年三月十一日から今日までの歩みを心に刻み、今後の県政運営に当たることを固くお誓い申し上げるものであります。
今年は、明治五年に宮城県が誕生してから百五十年という節目の年となります。我が県は豊かな自然環境や多彩で豊富な食材、歴史や文化に富んだ多様で特色ある地域の魅力などを生かしながら発展し、東北の中心地として歩みを進めてまいりました。一方で、多くの自然災害や戦災など、数々の困難にも直面してまいりましたが、明るい未来を展望しながら幾度もそれを乗り越え、現在の姿が形作られてきたものであります。先人によるこれまでの絶え間ない努力に思いを致し、県民が幸福を実感し安心して暮らせる場所として、我が県が今後とも発展を続けていくためには、とりわけ若い世代が地域に愛着を持ち、更に次の世代を健やかに育んでいける環境を整えていくことが極めて重要であると考えております。
そして、県政を預かる立場として、私も県民の皆様の思いを汲み取り、御理解をいただきながらその任に当たっていかなければならないと考えております。昨年の知事選挙においては、富県宮城の実現や東日本大震災からの復興に向けた取組を訴え御支持を賜ったところでありますが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止をはじめ、対応すべき課題は山積しております。知事就任時に思い描いた「生まれてよかった、育ってよかった、住んでよかった」と言える宮城県の実現に向け、今後とも民の力を最大限に生かしつつ、県民の皆様や市町村の意見にもしっかりと耳を傾けながら、これまで以上に力を注いでまいる所存でありますので、議員各位の御理解・御協力を賜りますようお願い申し上げます。
我が国を取り巻く国際・経済情勢に関しては、アジア・太平洋地域における貿易の自由化を目的とした包括的な経済連携であるRCEPが先月一日に発効となりました。世界の国内総生産の約三割を占める巨大な経済圏における今回の協定は、我が県にとっても輸出の拡大などにつながることが期待されております。
一方、アメリカ合衆国では議会における与野党の勢力が拮抗する中、秋に控える中間選挙が大きな焦点となっているほか、欧州連合からの離脱が完了し一年余りが経過したイギリスは、貿易量の減少や労働力の不足によるコストの増大などの問題を抱えております。
来年度の世界経済の見通しについては、全体としては回復基調が見込まれますが、供給制約やエネルギー価格の高騰のほか、インフレへの対応や中央銀行による金融緩和政策の行方など、その先行きはなお不透明な状況にあります。また、先月発表された国の経済見通しでは、感染症が内外経済を下振れさせるリスクはあるものの、経済対策の迅速かつ着実な実施により、来年度は実質で三・二パーセント程度のプラス成長を見込んでおり、国内総生産は過去最高となることが見込まれております。
感染の波が繰り返される中で、飲食業や観光業を中心に県内経済も大きな影響を受けておりますが、感染拡大防止に向けた取組と並行して社会経済活動の維持・活性化に向けた施策を機動的に講じることにより、その下支えに努めてまいります。
令和四年度は、「新・宮城の将来ビジョン」がスタートしてから二年目となります。令和二年国勢調査において、我が県の人口は前回から三万人以上の減少となりました。この流れは今後加速することが避けられず、労働力不足による地域活力の低下や過疎化の進展など、県民生活に広く影響を及ぼすものであることから、私は強い問題意識を持っているところであり、今年度新たに設置する「次世代育成・応援基金」も活用しながら、様々な手立てを講じてまいりたいと考えております。
また、コロナ禍を契機として生活の様々な場面におけるデジタル化が急速に進展する中、デジタル技術を活用した効率的な行政運営の実現は、時代の要請であります。我が県においては、「みやぎ情報化推進ポリシー」を情報化政策における基本方針としているところであり、地域課題の解決に向け、来年度は5G技術を活用した実証実験に取り組むとともに、市町村におけるDXの推進に向けたコンサルタントの派遣やAI・RPA等の導入を支援いたします。また、高齢者に対するデジタルスキルの向上支援など、その恩恵が全ての県民に行き渡るよう施策の充実を図ります。
県民生活や企業活動に欠かすことのできない水道三事業をコンセッション方式により一体的に管理運営する「みやぎ型管理運営方式」については、業務引継ぎなどの最終調整を進めております。料金収入の減少や更新投資の増加などに対応しつつ、料金上昇を可能な限り抑制しようとする今回の取組は全国に先駆けたものであり、来る四月からの事業開始に向け、万全の準備を整えてまいります。
さらに、政策医療における各種課題の解決や持続的・安定的な医療サービスの提供に向けては、地域における医療機能の連携や相互補完が不可欠であります。昨年九月に県としての方向性をお示しした四病院の統合・合築に関しては、仙台医療圏全体としてバランスの取れた医療体制の確保と病院の持続的な経営を実現するためにも必要な取組であり、来年度中の基本合意を目指し、関係者との調整を進めてまいります。
新型コロナウイルス感染症への対応については、昨年十一月以降、国においてオミクロン株への水際対策を進めてきたところですが、県内においても先月に入り初めての感染例が確認され、これまでに例の無いスピードで感染の拡大が進んでおります。一方で、感染者数に占める重症者の割合や世代ごとの感染状況などに、これまでとは異なる傾向も見られることから、感染の拡大防止と社会経済活動の維持との両立を図るため、今月を「緊急特別要請」の期間とし、ワクチン接種の加速化や教育現場などでの感染防止対策の徹底、社会福祉施設における事業継続への支援、テレワークの推進などに重点を置くことといたしました。経済面への影響を最小限に食い止めながら、この状況を早期に転換できるよう、県としても全力を傾けてまいりますので、県民の皆様におかれましては感染防止対策の励行等に今後とも御協力をお願いしますとともに、議員各位におかれましても引き続きの御理解を賜りますようお願い申し上げます。
脱炭素社会の構築は世界共通の課題であり、国においては、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、二〇三〇年度における温室効果ガスの削減割合を二〇一三年度比で四十六パーセントとする新たな計画を公表したところです。一方で、二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現には更なる省エネルギー化の推進や再生可能エネルギーの活用が求められるところであり、来年度は地球温暖化対策や再生可能エネルギーに関する新たな計画を策定するとともに、その実現に向けた施策の検討を進めてまいります。また、再生可能エネルギーの導入拡大には地域住民の理解が必要であることから、環境への適正な配慮や地域との対話を拡充する環境影響評価条例の改正や、地域との共生を図りつつ太陽光発電の普及や拡大を目指す新たな条例の制定を検討しているところであり、早期に条例案をお諮りできるよう準備を進めてまいります。
(当初予算の編成方針)
次に、当初予算の編成に当たっての基本的な考え方を御説明申し上げます。
国の令和四年度予算案は、新型コロナウイルス感染症への対応に万全を期しつつ、「成長と分配の好循環」による「新しい資本主義」の実現を図る予算として編成され、一般会計の総額は十年連続で過去最大の規模となりました。東日本大震災復興特別会計は、「第二期復興・創生期間」の二年目を迎え、二年連続で一兆円を下回る規模となりましたが、被災者に対する生活再建のステージに応じた切れ目のない支援などに関する予算が計上されているところです。
地方財政対策では、社会保障関係経費の増加が見込まれる中、地方公共団体が行政サービスを安定的に提供しつつ、地域社会のデジタル化や脱炭素社会の実現をはじめとする行政課題に対応できるよう、地方一般財源について地方交付税交付団体ベースで前年度を上回る規模となりました。また、臨時財政対策債については、財源不足を国と地方が負担しあう折半ルールが解消されたことに加え、その規模もこれまでにない大幅な減少となりました。このことは、地方一般財源の質の改善という観点から評価できるものであります。
令和四年度当初予算案は、昨年十月に策定した「令和四年度政策財政運営の基本方針」に基づき、新型コロナウイルス感染症への対応のほか、被災者の心のケアや地域コミュニティの再生をはじめとする復興の完遂に向けた中長期的な支援に加え、「政策展開の方向性」でお示ししたデジタル技術の活用による県民サービスの向上や、子ども・子育てを社会全体で支える環境づくりに向けた施策に予算を重点配分し、編成したものであります。また、社会経済活動の再開などを円滑に進める観点から、令和三年度補正予算案と一体的に編成することにより、継続的な事業展開を図ります。
以下、主な施策について、「政策財政運営の基本方針」に掲げた六つの「政策推進の基本方向」に沿って御説明申し上げます。
(新型コロナウイルス感染拡大防止対策と社会経済活動の両立)
初めに、新型コロナウイルス感染症対策についてであります。
医療提供体制の確保に向けては、地域外来・検査センターをはじめ様々なルートによる検査体制を継続するとともに、感染拡大の兆候があった際の無料検査の実施に要する経費を計上します。また、病床や宿泊療養施設の確保による療養体制の構築を図るほか、介護を要する高齢者や障害者が感染した場合も想定した受入体制を整備いたします。医療機関に対する支援としては、診療や検査に必要となる設備整備への助成を拡充するとともに、診療の休止等を余儀なくされた場合の経営支援を継続いたします。
感染の拡大防止に関しては、東北大学をはじめとする関係団体の御協力のもと、昨年末から再開した大規模接種会場でのワクチンの追加接種を進めるとともに、飲食店に対し営業時間の短縮要請等を行うこととなった場合に備え、協力金の支給に要する経費を予め計上いたします。
また、県内経済の回復に向けては、宿泊・観光需要の喚起策をはじめとする今年度補正予算による取組に加え、中小企業経営安定資金の融資や利子補給による支援のほか、オンラインモールの活用や量販店における県産品の販売促進策などを講じることにより、需要の創出や事業の継続を支援してまいります。
(被災地の復興完了に向けたきめ細かなサポート)
次に、被災地の復興完了に向けたきめ細かなサポートについてであります。
生活再建の状況に応じた切れ目のない支援としては、被災者の生活再建や見守りに大きな役割を果たしているNPO等による様々な活動や、住民が主体となったコミュニティ再生に向けた取組を支援いたします。また、心の問題等を理由に長期的な支えが必要となる被災者や地域における支援者をサポートする拠点として心のケアセンターの運営支援を継続するとともに、学校生活に困難を抱える児童に対しては、スクールカウンセラーの配置・派遣や市町村が設置する子どもの心のケアハウスにおける支援を継続してまいります。
回復途上にある産業・なりわいの下支えに関しては、様々な事情により復旧に着手できなかった事業者に対しグループ補助金により施設の復旧等を支援するほか、沿岸地域の中小企業における労働力不足に対応するため、事業再開などに当たり被災求職者を雇い入れる際の経費を助成いたします。また、生産体制の回復に呼応し飲食店や小売店と連携した県産品の販売促進策を展開します。
東京電力福島第一原子力発電所事故被害への対応としては、農林水産物を対象とした放射性物質検査を通じ県産食品の安全性を発信するとともに、農林業系廃棄物を保管する市町の処理等に向けた取組を継続的に支援してまいります。なお、多核種除去設備等処理水については、引き続き「処理水の取扱いに関する宮城県連携会議」において関係者の意見を集約し、国や東京電力に対し責任ある対応を求めてまいります。
震災の記憶や教訓の伝承に向けては、県内の震災遺構や伝承施設へのゲートウェイとしての役割が期待される「みやぎ東日本大震災津波伝承館」の運営管理を通して、県内各地で伝承活動を担う関係者と連携した様々な取組を行うとともに、コロナ禍においても復興情報を国内外に広く発信できるよう、オンラインコンテンツの充実や広報媒体の多言語化を図ります。
(富県宮城を支える県内産業の持続的な成長促進)
次に、富県宮城を支える県内産業の持続的な成長促進についてであります。
ものづくり産業等の発展と新技術・新産業の創出に向けては、県内中小企業のデジタル化に対する意識の底上げを図るため、専門家の派遣やサービス導入に際しての初期費用を支援するとともに、地域経済を牽引する企業が行うAI・IoT等を活用した生産性向上等の取組を促進します。幅広い産業におけるイノベーションの一助となることが期待される次世代放射光施設については、リサーチコンプレックスの形成に向けた取組を継続するほか、令和六年度の本格運用開始に向けた施設整備を支援いたします。
観光産業や商業・サービス業の振興に関しては、県制百五十周年を契機に県土の歴史や文化を振り返り、地域の魅力を発信する新たな観光キャンペーンを展開するほか、ポストコロナを見据えて、東北観光推進機構などと連携した外国人観光客の誘致に取り組みます。また、地域経済の構造が変化する中にあっても商店街の持続的な発展が可能となるよう、ビジョン形成や新たな担い手の育成を支援してまいります。
地域を支える農林水産業の国内外への展開に向けては、今年度開設した県産品アンテナサイトを通じて得られたデータを事業者への支援に活用するなどデジタルマーケティングの取組を推進するとともに、コロナ禍による需要環境の変化を踏まえ、海外に向けた県産品の販路開拓の取組を拡充いたします。
農業分野では、主食用米から園芸作物等への作付転換やアグリテックの活用による省力化・低コスト化を進めるほか、「金のいぶき」など実需者のニーズを踏まえた県産米の作付を推進します。あわせて、中小規模の生産者が多い採卵養鶏・養豚農家に対し、ICTを活用した機械設備の導入を支援し生産性の向上に繋げてまいります。
水産業分野では、スマート水産業の推進のため、AIによる自動魚種選別機の実証試験や養殖業におけるリモートセンシング技術の確立に向けた検討を行うほか、立地の制約や自然環境の影響を受けない閉鎖循環式陸上養殖研究施設を整備し、その成長産業化を図ります。
林業に関しては、四月に開校するみやぎ森林・林業未来創造カレッジにおいて、未就業者からトップリーダーまで幅広い層を対象とした研修を開催し担い手を養成するとともに、自伐型林業の普及に向けて、関係者による連携体制の構築を進めます。
若者をはじめとした多様な産業人材の育成・確保については、富県躍進に向けたものづくり人材の育成拠点として高等技術専門校の再編整備を進めてまいります。また、生産年齢人口の減少に伴い更なる活躍が期待される外国人材の県内定着のため、県内企業とのマッチング支援など受入体制の強化を図るとともに、公的関与による日本語学校の開設に向けた可能性調査を行います。
宮城・東北の価値を高める産業基盤の整備・活用に関しては、東北縦貫自動車道大和ICと周辺の工業団地とのアクセスを向上する観点から、主要地方道仙台三本木線の拡幅事業に着手します。また、仙台塩釜港においては、コンテナ取扱量の増加を踏まえ、既存のコンテナターミナルの隣接地を埋立拡張するほか、仙台空港については、新規路線の誘致に加え、若者を対象とした利用促進キャンペーンを行い、航空利用者の獲得に繋げてまいります。
(社会全体で支える宮城の子ども・子育て)
次に、社会全体で支える宮城の子ども・子育てについてであります。
我が県は合計特殊出生率が全国平均を下回る状況にあるほか、若い世代の県外への転出も多いことから、関連施策を継続的に実施できるよう、「次世代育成・応援基金」に必要となる財源を積み立てることといたします。令和四年度は、この基金を活用した新たな事業として、総合型地域スポーツクラブを拠点とした子育て支援プログラムを実施するほか、子どもを希望する夫婦の不妊検査に要する費用を助成します。さらに、地域の実情に応じて市町村が行う少子化対策事業への支援を拡充するとともに、これまで実施していた子育て支援パスポートと連携して結婚応援パスポートを新たに発行し、社会全体で結婚や子育てを応援する機運の醸成に努めます。あわせて、子ども連れでも外出しやすい環境づくりを目的とした置き型授乳室の設置促進については、部局を横断した検討体制のもと、県産木材を使用した授乳室の製作や普及に向けた市場調査を行うとともに、県としての今後の支援の在り方を検討してまいります。
このほか、結婚・出産・子育てを応援する環境の整備に関しては、乳幼児医療費助成や待機児童の解消に向けた保育所等の整備のほか、みやぎ結婚支援センター「みやマリ!」を拠点としたAIマッチングシステムの活用を進めます。また、医療的ケアを必要とする児童やその家族の生活を社会全体で支えるための相談支援センターを設置し、様々な相談対応や関係者による連携に向けた体制を整備いたします。
家庭・地域・学校の連携・協働による子どもを支える体制の構築に向けては、子ども食堂の立ち上げを支援するなど子どもの居場所づくりを進めます。あわせて、ヤングケアラーに対する支援を強化する観点から、学校現場と連携し県内の実態調査を行うとともに、適切なサービスの利用に繋げるための専門家の配置や民間団体と連携した相談体制の構築を図ります。
子どもたちが、多様で変化する社会に適応し、活躍できる力を育成するため、オンライン教育推進等の観点からICT支援員の配置を拡充し、授業におけるICT機器の効果的な活用支援を進めます。また、児童生徒の体力・運動能力の向上に向けた取組を継続するとともに、県立高等学校における部活動指導員の体制を強化することにより、教育環境の改善や教員への支援の充実を図ります。
安心して学び続けることができる教育体制の整備に関しては、児童生徒一人ひとりの確実な学力の定着に引き続き取り組みます。また、学び支援教室へのサポート体制を強化するとともに、教育的支援が必要な児童生徒が継続して学ぶことができるよう、学びの多様性を活かした教育プログラムの検討を行うほか、外国人児童生徒を対象としたサポーター派遣やオンラインによる日本語教室の開催など、多様な教育機会の確保に努めます。さらに、私立幼稚園の運営費に対する補助について、県による加算を大幅に拡充し、安定的な運営に繋げてまいります。
(誰もが安心していきいきと暮らせる地域社会づくり)
次に、誰もが安心していきいきと暮らせる地域社会づくりについてであります。
就労や地域活動を通じた多様な主体の社会参画の促進に関しては、若者の県内定着を図るため、大学生や企業に対する意識調査や情報発信に取り組むほか、新規就農者の確保に向けた女性を対象とする農業体験や水産加工業における女性の活躍を目的とした伴走型支援を行います。また、移住・定住推進施策の充実強化を図るとともに、過疎地域等の持続的な発展をサポートする専門家を確保し、市町村における施策立案等を支援いたします。
文化芸術・スポーツ活動と生涯学習の振興については、県民会館とNPOプラザの複合施設に係る新築設計業務に着手することとし、関係者の御意見も頂戴しながら、我が県の文化芸術や民間非営利活動の更なる振興を図る拠点となるよう整備を進めます。また、多賀城創建千三百年を迎える令和六年に向け、各種記念事業を展開するとともに、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会での経験をレガシーとして将来に引き継ぐため、アスリートとの交流事業や次代を担う競技者への支援を進めます。さらに、仙台市が開設準備を進める夜間中学校の整備を支援し、義務教育の機会を十分に得られなかった方などの学習機会の確保に努めてまいります。
生涯を通じた健康づくりと持続可能な医療・介護サービスの提供については、人材確保に向けた緊急対策を進めるとともに、介護現場における外国人材の確保の観点から、外国人介護職員の資格取得に要する経費を支援いたします。また、既存の特別養護老人ホームについて、長寿命化に資する改修を行う場合の補助制度を創設いたします。
障害の有無に関わらず安心して暮らせる社会の実現に関しては、昨年度に制定された条例の理念に沿って、差別の解消に向けた普及啓発に取り組むとともに、障害者の経済的自立や社会参加に繋げるため、県内企業等との応援体制を構築し受注機会の拡大を図ります。また、平成三十年度から工事を進めている船形の郷について、新たな居住棟や活動棟の供用を開始いたします。
暮らし続けられる安全安心な地域の形成に向けては、(仮称)栗原警察署及び岩沼警察署の庁舎建設を進めます。さらに、特殊詐欺電話の撃退装置等の購入費補助を拡充し、特殊詐欺被害の未然防止に繋げるほか、夜間・休日における性暴力被害に係る相談体制の強化を図ります。
(強靱で自然と調和した県土づくり)
次に、強靱で自然と調和した県土づくりについてであります。
環境負荷の少ない地域経済システム・生活スタイルの確立に関しては、事業者に対する二酸化炭素の排出削減への支援に関し、より大きな削減を目指す事業者への新たな採択枠を設けるほか、高い省エネ性能を持つスマートエネルギー住宅に対する補助制度を拡充します。また、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化等により仙台塩釜港でのカーボンニュートラルを推進するため、関係者と連携した計画づくりを進めます。さらに、物流部門における二酸化炭素の排出削減に向け、商用車での水素利活用に係る調査検討を行います。
豊かな自然と共生・調和する社会の構築については、野生イノシシ等の個体数管理やICTを活用した捕獲による農業被害の防止に向けた取組を継続します。また、第四十回全国豊かな海づくり大会の開催を契機とした森から海へと至る環境保全活動の更なる定着に向け、民間団体等と連携した取組を推進いたします。
大規模化・多様化する災害への対策の強化としては、今年度補正予算とあわせ、道路・河川等の公共インフラの強靱化に向け積極的に取り組むほか、原子力防災対策の観点では、環境の変化などを踏まえた避難交通シミュレーションを行うとともに、避難退域時検査等場所のハード面も含めた改善策を検討いたします。
生活を支える社会資本の整備、維持・管理体制の充実については、公共施設の長寿命化に向けた計画的な管理とともに、道路・橋りょうの維持管理の効率化を目的として、ビッグデータやドローンを活用した実証実験を行います。また、「みやぎ型管理運営方式」については、運営状況や水質検査に関するモニタリングを行うほか、様々な手法により正確な情報提供と説明に努めてまいります。
以上、施策の主な内容について御説明申し上げましたが、令和四年度の当初予算規模は、一般会計で一兆一千百四十六億三千九百余万円、総計で一兆五千八百八十四億一千八百余万円となります。財源の主なものとして、県税三千五十二億円、地方交付税一千五百五十四億円、国庫支出金二千六百十二億九千五百余万円、繰入金二千五十九億四千百余万円を計上し、また、臨時財政対策債及び借換債を含め県債一千七百十四億二千六百余万円を発行することにしております。
(令和三年度補正予算案)
次に、令和三年度補正予算案について御説明申し上げます。
今回の補正予算案は、感染症への対応や「成長と分配の好循環」の実現を目的とする経済対策の内容を織り込んだ国の補正予算に対応し、令和四年度当初予算と合わせた執行による切れ目のない支援の実現を目指すとともに、トンガ諸島付近で先月発生した大規模な火山噴火による潮位変化で被害を受けた養殖施設への緊急的な対策に要する経費を計上するため編成したものであります。
主な内容としましては、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向け、緊急小口資金等の貸付原資の追加計上を行うとともに、県有施設における感染症対策として衛生資材の整備や施設改修を進めます。
社会経済活動の再開に関しては、感染拡大の影響を受ける中小企業や小規模事業者に対する市町村の取組を支援するとともに、宿泊・観光需要の早期回復を目指した需要喚起策のほか、米価下落や燃油高騰への対策として機械設備等の導入を進める生産者への支援を拡充いたします。
県内経済の成長に向けては、ポストコロナを見据え、事業の再構築を行う中小企業や小規模事業者の取組を支援します。また、TPPへの対応として大区画ほ場や木材加工施設等の整備を進めるほか、県立高等学校における教育環境の向上を図る観点から情報機器の整備を図ります。
防災・減災、国土強靱化などの取組としては、国の五か年加速化対策に呼応した公共事業を幅広く計上するほか、社会福祉施設等が行う非常用自家発電設備などの整備を支援いたします。
また、被災した養殖施設への対応については、その回収や処分に対する市町の取組を支援いたします。今後とも、生産者の事業継続が図られるよう、市町とも十分に連携した対応に努めてまいります。
今回の補正規模は、一般会計、総会計ともに六百十四億六千二百余万円となり、財源としては、国庫支出金三百八十八億五千余万円、県債百八十八億七千八百余万円などを追加しております。
この結果、今年度の予算規模は、一般会計で一兆三千三百五十億九千余万円、総計で一兆七千八百五十億六千九百余万円となります。
次に、予算外議案については、条例議案二十二件、条例外議案二十三件を提案しておりますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。
まず、条例議案でありますが、議第十九号議案は、非常勤職員に係る育児休業等の取得要件を緩和しようとするもの、議第二十一号議案、議第三十一号議案、議第三十二号議案及び議第三十六号議案は、各種使用料及び手数料を新設及び改定等しようとするもの、議第三十号議案は、国民健康保険の安定的な財政運営のため基金の取崩しに関する規定を整備しようとするものであります。
次に、条例外議案でありますが、議第三十九号議案は、包括外部監査契約の締結について、議第四十号議案は、地方独立行政法人宮城県立こども病院が作成した業務運営に関する目標を達成するための計画の認可について、議第四十一号議案ないし議第六十号議案は、工事請負変更契約の締結について、議第六十一号議案は、市町村受益負担金について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。
以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
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