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令和6年6月13日
第三百九十二回宮城県議会知事説明要旨
本日ここに第三百九十二回宮城県議会が開会され、提出議案を御審議いただくに当たり、最近の県政の動きと議案の概要を御説明申し上げます。
初めに、最近の経済情勢と人口減少への対応についてであります。
日本銀行は、三月の金融政策決定会合で、二パーセントの物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったとの判断を示し、マイナス金利政策の解除など大規模な金融緩和策の転換を図りました。先月公表された国の月例経済報告によれば、国内景気はこのところ足踏みが見られるものの、緩やかに回復しており、先行きについてもこの傾向が続くと見込まれております。県内におきましても、弱い動きが見られながらも経済は持ち直してきており、今月からは国の経済対策の一環として所得税及び個人住民税の定額減税が実施されることから、消費の底上げにつながることを期待しているところであります。その一方で、世界的な金融引締めに伴う影響や先行き不透明な中国経済、物価上昇、地政学的リスクの高まりなど様々な懸念が指摘されており、引き続き経済動向を注視する必要があると考えております。
また、物価高や人手不足を背景に、大企業を中心に雇用・所得環境の改善が進んでおり、この動きが中小企業・小規模事業者へ拡大するよう、国は「賃上げ促進税制」などの支援を講じているところです。賃金と物価の好循環、そして個人消費の活性化に向け、我が県としましても、持続的成長を支える経済基盤の強化に意を用いていかなければならないと考えております。このような認識の下、「次代への連綿予算」と銘打った今年度当初予算では、急激に進む人口減少や変動する経済環境においても、富県躍進に向けて持続的な経済成長と発展が遂げられるよう、少子化対策や若者の県内定着、DXの推進、半導体産業の振興と集積など、次の時代を見据えて積極的かつ重点的に予算化を図ったところであります。
我が国の昨年の人口推計における総人口は十三年連続で減少し、企業の人手不足や地域の担い手不足など各方面で深刻な影響が憂慮されております。私は、こうした現状に強い危機感を持ち、人口減少対策を重要な政策課題に掲げ、我が県の総力を挙げて取り組んでいるところであります。
必要な対策としましては、まずは少子化傾向に歯止めをかけることが重要であり、今年度は不妊治療費用への助成や産後ケアサービスの受け皿確保に向けた支援などの新たな施策に取り組むとともに、市町村において地域の実情に応じた子育て支援が講じられるよう交付金の拡充を図るなど、市町村との連携を強化して対策を進めております。また、当面の構造的な人手不足への対応では、質の高い雇用の創出や若者の県内定着の促進、外国人材の受入確保に向けた施策を一体的に取り組んでいるところでありますが、外国人材については国際的な獲得競争が激化しており、関係国との協力体制の構築や受入体制の整備が急務となっております。このような状況を踏まえ、我が県におきましては、ベトナムやインドネシアと覚書を締結し緊密な協力関係の下で人材確保の取組を進めており、今年度は海外でのサポートセンターの設置を推進しているほか、九月にはインドネシアで県内企業とともに大規模な「みやぎジョブフェア」を開催することとしております。引き続き、人口減少下においても地域経済が持続的に発展できるよう、全身全霊を傾けて取り組んでまいります。
また、こうした危機を乗り越えるためには、あらゆる分野でデジタル化による業務効率や生産性の向上を図っていくことが不可欠であります。今年度におきましては、各分野におけるDXの推進やデジタル人材の育成・確保のほか、県民向けのDX施策として、デジタル身分証アプリの普及拡大に加え、県窓口におけるキャッシュレス決済の導入や運転免許の申請手続き等のデジタル化に力を入れております。中でもキャッシュレス決済の推進については、多くの県民の皆様に利便性を享受いただけるよう、官民の連携がより一層重要であることから、四月に国、地方公共団体、金融機関、民間団体が共同で「みやぎキャッシュレス納付推進宣言」を行ったところであります。今後とも、デジタル化の推進を通じて県民サービスの向上や地域課題の解決に向けた取組を進め、持続可能な地域社会の実現を目指してまいります。
次に、半導体産業の振興についてであります。
私は先月、台湾で建設された半導体製造工場の開所式に出席してまいりました。この工場は大衡村に建設が予定されている工場のモデルとなるもので、その圧倒的なスケールや技術の粋を集めた製造プロセスなどを体感してまいりました。また、周辺地域の視察や現地関係者との意見交換を通じて、道路等のインフラ整備や技術人材の育成・確保など今後必要となる取組を確認することができました。さらに、昨年開設された「福岡半導体リスキリングセンター」を視察し、目的、習熟度に応じた受講体系や県内外から多くの受講者を受け入れている状況などの説明を受け、自治体間の連携協力の必要性を強く認識したところであります。四月には、東北地方の半導体生産基盤の強化と高度人材の確保などを目的に、民間主導による支援組織「東北半導体・エレクトロニクスデザインコンソーシアム」が設立され、関連産業への進出を目指す企業の大きな力になるものと期待しております。我が県としましても、産学官が緊密に連携し、関連産業の集積はもとより、県内企業の取引拡大や人材育成・確保などの施策を戦略的に推進していけるよう、その取組指針となる「(仮称)みやぎ半導体産業振興ビジョン」の年度内策定に向けて関係者と調整を進めてまいります。
次に、交流人口の拡大と地域経済の活性化についてであります。
人口減少の下で、我が県経済の持続的な成長と魅力ある地域づくりを実現するためには、交流人口とインバウンドの拡大を図ることが極めて重要であります。昨年度の仙台空港の利用状況は、国内線の需要回復や国際線の定期便再開などが進み、利用客数はコロナ禍前の水準まで回復しつつあります。特に訪日外国人旅行者数については、円安も追い風となり全国的には増加傾向にありますが、三大都市圏以外の地方への誘客が課題となっており、戦略性を持って観光プロモーションを推進していく必要があると考えております。
こうした観光を取り巻く状況を踏まえ、我が県が戦略的に観光振興策を展開していくためには、多様化する観光ニーズへの対応や受入環境の整備などを地域と一体となって継続的に推進していくことが重要であり、安定的な財源の確保が必要と考えております。このため、市町村や観光関連事業者等の皆様から今後の観光施策に関する御意見を伺いながら、仙台市とも足並みを揃えて新税導入に向けた準備を進めているところであります。早期に条例案を提案できるよう、引き続き関係者と調整を進めてまいりますので、議員各位におかれましては、御理解・御協力を賜りますようお願い申し上げます。
また、交流人口の拡大に関連した取組として、四月に、我が県の県議会議長、教育長をはじめとした関係者が台湾の高級中等以下学校国際教育交流連盟と台北市を訪問し、両者と教育旅行促進に向けた覚書の締結等を行いました。これを契機に台湾との教育交流を促進し、児童生徒の国際社会に対する理解を深め、グローバル社会で活躍する人材育成につなげてまいりたいと考えております。さらに、交流や観光を通じて地域の魅力を体験することで、観光リピーターや移住者の獲得にも寄与するものと期待しているところであります。
台湾東部で発生した地震への対応では、震源に近い沿岸地方を中心に甚大な被害が生じていることを受け、いち早く見舞金をお届けするとともに、関係機関等に見舞状をお送りいたしました。台湾の皆様には、東日本大震災に際し多大な御支援をいただいており、これからもその御恩を忘れずに心を寄せて交流を深めてまいりたいと考えております。
次に、持続可能な医療提供体制の構築についてであります。
人口減少と少子高齢化の影響は地域医療の提供体制にも及んでおり、医療・介護需要の増加とともに、生産年齢人口の減少により医療の担い手不足が見込まれております。限りある医療資源で、適切な医療・介護を将来にわたって持続的かつ安定的に提供していくためには、病院再編を含め、将来を見据えた地域医療提供体制の整備が不可欠であります。特に仙台医療圏では、高度医療を担い地域連携の核となる地域医療支援病院が仙台市内に集中していることや、病院間の競合による病床稼働率の低迷や施設老朽化など経営上の課題を抱える病院があることを踏まえつつ、立地場所や病院規模・機能を見定めていく必要があります。こうした観点から、地域バランスも勘案した拠点病院の移転整備に加え、診療内容の充実や医療従事者の適正配置を図ることで、質の高い医療を安定的に供給する持続可能な医療提供体制を目指し、仙台医療圏の病院再編を進めております。
地域への説明会については、これまで仙台市で四回、名取市及び富谷市でそれぞれ一回実施し、本県が抱える医療の課題や現状、病院再編の方向性等について共有を図るとともに、地域住民や医療関係者の皆様から様々な御意見を伺いました。また、仙台市とは、救急医療と精神医療のほか、周産期医療、災害医療及び地域への影響等について現状認識の共有と今後の対応に関する協議を行っているところであります。引き続き、関係各位の理解醸成につながる情報提供に努めるとともに、仙台赤十字病院と県立がんセンターの統合について、東北大学にも協力をいただきながら関係機関と具体的な診療科や人員体制等の協議を進めてまいります。また、昨年度内の合意に至らなかった東北労災病院と県立精神医療センターの移転・合築につきましても、黒川地域の政策医療の課題解決に向けて可能な限り早期に基本合意ができるよう関係者と調整を図ってまいります。
令和六年能登半島地震への対応については、地震発生から五か月が経過し、被災地では、上下水道、道路などのインフラの復旧や応急仮設住宅の建設が進んでおります。一方で、被害が甚大な地域においては、がれきの撤去や被災した建物の解体など依然として多くの課題を抱えており、引き続き被災地のニーズに応じた支援が必要となっております。本県では、発災直後から対口支援などで応援職員を派遣してまいりましたが、四月以降は石川県及び富山県からの要請を受け、順次職員を中長期的に派遣し、災害復旧に係る設計・工事監理や復興プランの作成などの業務支援を行っているところであります。今後とも、東日本大震災の経験を十分に活かし、被災地の一日も早い復旧・復興に向けて支援を継続してまいります。
令和七年秋に開催する「第四十八回全国育樹祭」に関しては、理念や各行事の内容、開催規模、運営体制等の基本的事項を盛り込んだ基本計画を策定いたしました。本大会は、健全で活力ある森林を次世代へ引き継ぐことの大切さとともに、宮城伝統こけしなど地域に根差した木の文化、CLTや広葉樹を活用した新しい木材利用の取組、東日本大震災から復旧した海岸防災林を通じた震災の教訓を全国へ発信するまたとない機会と考えております。今年度は、式典の具体的な演出や詳細な運営方法等を定めた実施計画を策定するほか、プレイベントや記念行事の開催を予定しており、大会の成功に向け、引き続き関係機関と連携を図りながら準備を進めてまいります。
なお、今年度当初予算は、新・宮城の将来ビジョンの実現に向けた取組に最大限配慮し、通年予算として年間所要額を計上したところであります。当面は現計予算の計画的かつ効率的な執行と歳入の確保に努めることとし、物価高騰対策など追加需要に対応する補正予算につきましては、今月から始まる定額減税の効果を見定めるとともに、県税や地方交付税等の財源確保の見通しを踏まえながら、経済情勢の変化などを総合的に勘案し措置してまいりたいと考えております。
今回御審議をお願いいたします提出議案は、条例議案十五件、条例外議案八件でありますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。
まず、条例議案でありますが、議第九十二号議案は、職員の特殊勤務手当について支給対象業務や支給額の加算措置を追加しようとするもの、議第九十六号議案は、地方税法等の改正に伴い外形標準課税の適用対象法人の見直しなど、県税条例等の一部を改正しようとするもの、議第九十七号議案ないし議第九十九号議案は、過疎地域、特定復興産業集積区域及び地方活力向上地域における法人事業税等の課税免除等の適用期間を延長しようとするもの、議第百号議案は、被災関連市町村から特定の交換により土地を取得した場合における不動産取得税の課税免除の適用期間を延長しようとするもの、議第百二号議案は、認定こども園の職員配置基準を改正しようとするものであります。
次に、条例外議案でありますが、議第百七号議案は、県道の路線変更について、議第百八号議案は、訴えの提起について、議第百九号議案及び議第百十号議案は、財産の取得について、議第百十一号議案及び議第百十二号議案は、工事委託及び工事請負変更契約の締結について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。また、議第百十三号議案は、地方税法等の改正に伴う県税条例の一部改正について、議第百十四号議案は、令和五年度宮城県一般会計予算の補正について、それぞれ専決処分を行いましたので、その承認をお願いしようとするものであります。
以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
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