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令和5年11月29日
第三百九十回宮城県議会知事説明要旨
本日ここに第三百九十回宮城県議会において、令和五年度一般会計補正予算案をはじめとする提出議案を御審議いただくに当たり、最近の県政の動きと議案の概要を御説明申し上げます。
先ほど御披露と伝達がありました中山耕一議員、本木忠一議員、中島源陽議員、熊谷義彦議員におかれましては、長年にわたり地方自治の発展に尽力された御功績により、全国都道府県議会議長会から表彰をお受けになりました。県民の皆様とともに心からお祝い申し上げ、多年の御功労に対しまして深く敬意を表するものであります。なお一層御自愛の上、県勢発展のため今後とも御活躍いただきますよう御期待申し上げます。
それでは御説明いたします。
初めに、最近の経済情勢と国の総合経済対策についてであります。日本銀行が先月発表した全国企業短期経済観測調査によると、大企業については、製造業、非製造業ともに業況判断指数は前回から改善しております。一方で、中小企業の製造業においては、原材料価格上昇分の価格転嫁が大企業と比べ進んでいないとの見方もあり、業況判断は横ばいに留まっております。また、県経済に目を向けますと、東北財務局の経済情勢報告によれば、生産活動は海外の設備投資の需要がやや弱まる一方、輸送機械は半導体部品などの供給制約が改善し持ち直すなど、一進一退の状況が続いております。今後の見通しについては、景気が持ち直していくことが期待されるものの、相次ぐ国際紛争をはじめとして、世界経済の減速や物価上昇、金融資本市場の変動等によっては、景気の下振れリスクも懸念され、その動向には十分注意していかなければならないと考えております。
こうした中、台湾にある世界有数の半導体受託製造企業が新たに国内法人を設立し、県内に半導体製造工場を建設することが発表され、この度、立地協定を締結いたしました。今回の決定は、国内半導体の安定供給のほか、自動車や高度電子機械をはじめとした製造業の生産性向上につながり、国内製造業の強靱化に大きく寄与するものと考えております。また、本県のみならず東北地方にとりましても、様々な経済波及効果が見込まれるなど、地域経済に大きな活力を与え、将来に明るい展望を開くものと期待しているところであります。県としましても、新しい組織を立ち上げて支援体制を強化するとともに、国や東北大学、関係自治体等と連携し、工場立地に係る環境整備や操業に向けた各種支援に全力を挙げて取り組んでまいります。
また、国では、先日、三十年来続いてきたコストカット型経済から成長型経済に変革を果たすまたとないチャンスとして、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を打ち出し、供給力の強化を図るとともに、足元の物価高を乗り越える構造的な賃上げと攻めの投資の拡大によって消費と投資の力強い循環につなげていくとしております。本県におきましても、国の経済対策に対応する予算措置として、今定例会に補正予算案を追加提案できるよう、詰めの調整を行っているところであり、物価高騰対策をはじめとする各種施策の早期実施に向けて、速やかな対応に努めてまいります。
働き方改革関連法が来年四月から適用されることに伴い、自動車運転業務における時間外労働の上限規制の影響で物流の停滞が懸念される「二〇二四年問題」について、国では、六月に「物流革新に向けた政策パッケージ」を策定し具体的な施策を取りまとめたところであり、その中で早期の実施が必要な対策が今回の総合経済対策に盛り込まれております。
私は、こうした輸送力不足への対応については、DXを推進して業務効率化を図るほか、貨物自動車以外の輸送手段への転換を進めていくことが極めて重要と考えております。我が県では、港湾や空港における貨物輸送の拡大を図るため、企業を対象としたセミナーを開催するとともに、仙台塩釜港では、モーダルシフトの進展など物流を取り巻く状況の変化を見据えたコンテナターミナル等の整備を推進しているほか、産地間連携により農産物の海上輸送を行う実証実験の実施など、新たな取組にも力を入れております。また、仙台空港では、運用時間の二十四時間化が可能となった強みを活かし、仙台国際空港株式会社をはじめとする関係機関と連携しながら国際貨物輸送の利用促進を図っているところであり、今後とも、東北地方の暮らしと経済を支える持続的な物流の確保が図られるよう、全力で取り組んでまいります。
東京電力福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の海洋放出開始から三か月が経過いたしました。その間、一部の国や地域において日本産水産物の輸入禁止措置が講じられ、我が県の事業者にも影響が生じております。このため、国では、「水産業を守る」政策パッケージによる全国の水産業への支援を展開しているほか、県においても「みやぎ水産応援パッケージ」を打ち出し、県内事業者を対象に、相談窓口を設置するとともに、損害賠償に関する説明会や個別相談会の開催、漁業者への経営支援や販売促進など、関連産業の経営安定と水産物の消費拡大に向けた支援を行っております。また、先月六日には、連携会議を開催し、国の支援の迅速かつ確実な実行や海洋放出以外の処分方法の継続検討、損害を被った事業者への適切かつ速やかな賠償の実施などを国や東京電力に申し入れたところであります。今後とも、水産業をはじめとする関係団体の皆様からの声をしっかり伝え、責任ある対応を強く求めてまいります。
私は、少子高齢化や人口減少が進む中、県民の皆様に適切な医療を持続的に提供していくためには、県全体の地域医療の現状及び将来を見据え、病院機能の集約・拠点化を図ることにより、政策医療の課題解決を目指していくことが必要と考え、仙台医療圏における病院再編の検討を進めているところであります。なお、県立精神医療センターに関しては、再編が実現するまでの期間があることを考慮し、今回の補正予算案に老朽化が著しい施設の緊急修繕に要する経費を盛り込むことといたしました。引き続き関係者の皆様の御意見を伺いながら、丁寧な協議を進め、年度内の基本合意を目指してまいります。
広域防災拠点、川内沢ダム及び(仮称)栗原インターチェンジについては、県土の強靱化と富県躍進を支える交流・産業基盤として極めて重要な公共インフラであることから、早期供用開始に向けて事業の推進を図っているところであります。これまで関係機関との綿密な調整や詳細な現地調査を行いながら事業を進めておりますが、その進捗に応じて必要となった工事や物価高騰などの影響で事業費が増加し、事業着手から相当な期間が経過していることから、改めて事業規模や効果を整理する必要があり、この度、事業継続の妥当性を判断するための公共事業再評価の手続きを開始いたしました。今後、評価の結果を踏まえ、より効率的かつ効果的な事業の執行に努めてまいりますので、議員各位の御理解を賜りますようお願い申し上げます。
慢性的な交通渋滞や観光客の安全確保が課題となっている日本三景松島に関しては、昨年度に引き続き二回目となる車両通行を規制する大規模な社会実験を実施いたしました。今年度は前回の課題を踏まえ、多くの関係機関の御協力の下、迂回路の渋滞緩和のための事前周知や広報の強化を図ったほか、道路空間を活用して地域と連携した様々なイベントによる賑わい創出に力を入れたところであります。その成果として、大きな渋滞は発生しなかったほか、多彩な催事による一定の集客効果がみられました。今後は、こうした成果や明らかになった課題をしっかり検証し、安心して観光地を周遊できる環境整備や道路空間を活用した賑わい創出、観光客の利便性向上などの施策につなげてまいります。
国との協議を進めておりました再生可能エネルギー地域共生促進税については、今月十七日に総務大臣から同意をいただくことができました。この全国初となる取組を実現させることができますのは、議員各位の御理解と御協力があったからこそであり、改めて心より感謝申し上げます。今後は、来年四月の施行に向けて、事業者への制度周知を徹底するとともに、市町村において関係手続きが円滑に進められるよう、しっかりと支援してまいります。
次に、今後の県政運営の基本的な考え方につきましては、来年度の予算編成に先立ち、先月下旬に「令和六年度政策財政運営の基本方針」として取りまとめました。我が県は、被災者の心のケアをはじめとするソフト対策のほか、人口減少や少子高齢化、大規模化・多様化する自然災害への備えなど、様々な課題への対応が求められております。このため、来年度は「新・宮城の将来ビジョン」に掲げる五つの政策推進の基本方向の下、復興完了に向けたきめ細かなサポートに力を入れるとともに、新ビジョンに掲げる将来像の実現に向けた取組を着実に推進してまいります。DXによる「変革みやぎ」の実現に向けては、あらゆる分野でICT等のデジタル技術をフル活用し、県民サービスの向上や県内産業の活性化、働き方改革の推進等を図ってまいります。中でも、県民向けのDX施策については、デジタル身分証アプリが利便性の高い県民アプリとして普及していくよう、市町村と一体となって幅広い分野での活用を図ってまいります。
また、人口減少への対応については、若者の県内定着や子ども・子育てを社会全体で支える環境整備、外国人材の受入促進など、総合的な対策を講じるとともに、頻発化・激甚化する自然災害から県民の命と暮らしを守るための災害に強い県土づくりに重点的に取り組んでまいります。
財政の見通しについては、八月に国が公表した来年度の「地方財政収支の仮試算」において、地方税や地方交付税が増加し、臨時財政対策債は大きく減少するとされておりますが、足元の物価高や世界経済の減速など、今後の推移によっては県内経済に大きな影響を与える要因も多く、先行きは依然として予断を許さない状況にあると認識しております。また、物価高騰対策やこども・子育て政策の強化に要する経費については、予算編成過程で検討を行うとされており、今後の動向をしっかりと注視していく必要があります。
こうした状況を踏まえ、来年度予算については、富県躍進や次の世代の育成・応援に向けた取組、DXの推進など、「新・宮城の将来ビジョン」に掲げる施策に重点的かつ適切に予算配分するとともに、「みやぎ財政運営戦略」に基づき、歳入歳出両面にわたる対策を実施し、持続可能な財政運営の実現に努めてまいります。
今回御審議をお願いいたします補正予算案の主な内容ですが、地方財政法に基づき令和四年度一般会計決算剰余金を財政調整基金に積み立てるとともに、先ほど御説明しました老朽化に伴う県立精神医療センターの緊急修繕に要する経費を計上しております。また、処理水の海洋放出の影響を受ける漁業者等への貸付条件を拡充する債務負担行為を設定するほか、河川管理や道路の除融雪など今年度末から来年度初めにかけて行う必要がある公共事業費や指定管理者制度による公共施設管理運営業務委託費についても債務負担行為を設定しております。
なお、一般職の職員の給与に関しては、人事委員会から月例給、ボーナスともに引き上げることなどを骨子とする勧告があり、その取扱いを慎重に検討した結果、勧告どおり実施するとともに、その内容とあわせて、知事等の特別職についても期末手当を引き上げる方向といたしました。これら給与の改定に係る条例改正案につきましては、後日提案させていただきたいと考えておりますが、これに伴う人件費の増額分は、今年度の異動等に伴う減額分と併せて既決予算の範囲内で対応できる見込みであり、次期定例会における計数整理の補正予算の中で対応してまいりたいと考えております。
以上、補正予算案の主な内容について御説明申し上げましたが、今回の補正規模は、一般会計、総会計ともに百三十六億一千余万円となります。財源としては、繰越金百三十三億九千七百余万円、県債二億一千三百万円を追加しております。
この結果、今年度の予算規模は、一般会計で一兆一千五十六億七百余万円、総計で一兆五千九百四十七億五千五百余万円となります。
次に、予算外議案については、条例議案八件、条例外議案二十四件を提案しておりますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。
まず、条例議案でありますが、議第百四十四号議案は、任期付職員の給与決定方法の見直しを行おうとするもの、議第百四十六号議案は、森林環境税の創設に伴う規定の整備など県税条例の一部を改正しようとするもの、議第百四十七号議案は、知事の権限に属する事務の一部を新たに市町村が処理できるようにするもの、議第百四十八号議案は、住民基本台帳の本人確認情報を提供する事務を追加するなど、所要の改正を行おうとするものであります。
次に、条例外議案でありますが、議第百五十二号議案は、令和六年度における自治宝くじの発売限度額について、議第百五十三号議案ないし議第百六十五号議案は、指定管理者の指定について、議第百六十六号議案ないし議第百七十二号議案は、工事請負契約の締結について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。
以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
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