有害物質分布等調査(平成16年度)
調査目的
処分場内に埋め立てられた廃棄物の有害性及び周辺への汚染の拡散状況を把握するもの。
調査の方法
平成16年11月中旬から平成17年2月末にかけて実施した。
(1)表層ガス調査
「埋立廃棄物量等調査」で行った表層ガス調査の精度を上げ,覆土層と廃棄物層との境界面の深さまで15mグリッド(142地点)で簡易ボーリングを行い,覆土層の厚さ,ガスの発生状況等を調査する。
(2)廃棄物性状等調査
表層ガス調査の結果から地温やガス濃度の高い分布域を絞り込み,ボーリング調査を行う。また,埋め立てられた廃棄物の性状を把握するため,これまでの調査で実施したボーリング地点も含めて,廃棄物や土壌の性状分析,地下水位の測定,地下水の性状分析を行う。
結果の概要
- (1)表層ガス調査の結果,覆土層と廃棄物層の境界面における硫化水素の濃度が100ppmを超えて検出されたのは13地点で,特に新工区で多くみられた。このうち,1,000ppmを超える高濃度のものは旧工区,新工区のそれぞれ1地点で検出された。このほか,90%以上の高濃度の可燃性ガス(メタン)も旧工区の1地点で検出されており,処分場廃棄物層内では現在もなお反応が続き,硫化水素や可燃性ガスが発生していることが確認された。
- (2)覆土と廃棄物層の境界面では,揮発性有機化合物であるベンゼンが第6工区(旧工区)の一部と第7工区から第10工区(新工区)にかけての広範囲で検出されたほか,シス-1,2-ジクロロエチレンが第10工区の1地点で検出された。
- (3)ボーリング調査の結果,埋め立てられた廃棄物はプラスチックやビニール類が主なものであるが,旧工区や許可区域外においては,安定型産業廃棄物に該当しない木くずや紙類等の易燃性可燃物の混入が確認された。
- (4)ボーリングコアから採取した試料について,廃棄物汚染分析(溶出量試験及び含有量試験)を行った結果,揮発性有機化合物としてはベンゼン以外のものは検出されず,検出されたベンゼン(2箇所)の濃度も法令で定められている判定基準値を下回るものであった。このほか,重金属類では総水銀(2地点),鉛(5地点),砒素(1地点)が検出され,また,ダイオキシン類も全試料(13地点)から検出されたが,いずれも判定基準値を下回り,「特別管理産業廃棄物」に相当する性状の有害物質は確認されなかった。
- (5)有害物質の溶出による地下水汚染のリスクに関しては,人の健康の保護及び生活環境の保全の上で維持されることが望ましい基準(目標値)として「土壌環境基準」が定められているが,これとの対比では,地点によって,鉛,総水銀,砒素,ベンゼン,ふっ素,ほう素が当該基準を超過する結果がみられた。
- (6)有害物質の直接摂取によるリスクに関しては,土壌汚染対策法により「土壌含有量基準」が定められているが,これとの対比では,一部地点で,鉛,カドミウムが当該基準を超過する結果がみられた。
- (7)廃棄物層内の保有水(以下「保有水」という。)と周辺地盤の地下水を分析した結果,保有水中には広範囲でベンゼンが検出されたものの,地下水等検査項目基準値を下回っており,一方,周辺地下水からの検出はなかった。また,シス-1,2-ジクロロエチレン,砒素及びBODが安定型最終処分場の浸透水基準(「地下水等検査項目基準」と同じ。)を超過した地点がみられたほか,ふっ素,ほう素,ダイオキシン類については,一般の地下水における目標値として定められている「地下水環境基準」を超過している地点がみられた。
- (8)ボーリング孔内の地下水位等の観測の結果,地下水の流動速度は30cm/年と推定された。また,旧工区やピートストックエリアの保有水の水質と,新工区の保有水の水質パターンが異なることから,保有水は非常にゆっくり移動していることと,現状では地下水汚染が処分場外周辺にまで及んでいないことが確認された。
- (9)ただし,当該処分場は「安定型処分場」として一般環境から遮断された構造にはなっていないことに加え,処分場周辺に設置されている側溝及び処分場外の荒川に通じる側溝は,処分場内の地下水位より低標高に位置することから,保有水が浸出水として処分場外へ流出する可能性も考えられ,処分場内の水位の管理には留意する必要があるものと認められた。
- (10)以上のような調査結果を踏まえ,恒久対策を検討するため,一般的に考えられる現場状況について次のとおり5項目を想定した。
- 廃棄物の有害性と支障の程度
- 発生ガスの有害性と支障の程度
- 保有水の有害性と支障の程度
- 周辺環境への汚染拡散状況
- 地下水の流動状況
そして,上記5項目の支障の度合いに応じ,「支障がない場合」,「支障があるか,又は支障のおそれがある場合」に区分し,さらに,後者の場合には「廃棄物を原位置に残置した対策で支障が除去できる場合」と「廃棄物を原位置に残置した対策では支障の除去が困難な場合」とに区分し,それぞれ対策工のケース分けを行った。
対策案のケースは,対策工として下記の対策を実施するか否かの組み合わせによって,現場状況と支障のおそれの度合いに応じ8ケースに分類した。
- 雨水浸透抑制
- 浸出水拡散防止
- 浸出水処理
- 発生ガス処理
- 周辺表流水・地下水迂回排水施設
- 廃棄物の撤去
- (11)支障除去対策は恒久対策が基本であるが,支障の状況や恒久対策を実施するための時間的な問題などから,暫定的な対策として緊急対策を実施する必要がある。