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令和元年6月17日
本日、ここに第三百六十八回宮城県議会が開会され、提出議案を御審議いただくに当たり、最近の県政の動きと議案の概要を御説明申し上げます。
説明に先立ちまして、四月末の天皇陛下の御退位に伴い、先月一日に皇太子殿下が皇位を継承され、元号が令和に改められました。御即位なされた天皇陛下並びに皇后陛下におかれましては、皇太子、皇太子妃として、本県にたびたび行啓になられ、東日本大震災の発生後は、県民に心温まる労りと励ましのお言葉を賜りました。県民一同心よりお慶び申し上げますとともに、令和の御代の平安と皇室の弥栄をお祈り申し上げます。また、上皇上皇后両陛下におかれましては、常に我が国の発展と国民の幸せを願われ、特に災害が発生した際は多くの被災された方々に寄り添いながらご公務に当たられたことに深く感謝いたしますとともに、末永くお健やかにあらせられることを衷心より願う次第であります。
それでは、御説明いたします。
初めに、およそ三十年続きました平成が幕を閉じ、令和という元号の下、新たな時代がスタートいたしました。平成を振り返りますと、世界的にも東西冷戦体制の終結や市場経済及び民主主義の世界化など、従来までの価値観や枠組みが劇的に変化した三十年でありました。我が国においては、戦後長らく続いた五十五年体制が崩壊し、政党間による本格的な政権交代が相次ぐとともに、旧態依然とした様々な制度に係る規制緩和や民営化の推進などの改革が進められた一方で、阪神・淡路大震災や東日本大震災をはじめとする大きな自然災害が発生いたしました。
また、平成の始めにバブル経済による空前の好景気に沸いた我が国経済は、その後、数度の金融危機による低成長時代を経験することとなり、景気は徐々に回復傾向を歩みながらもデフレマインドから完全に脱却できない現在の状況に大きな影響を及ぼしているところであります。平成において、世界ではICT分野におけるイノベーションが加速度的に進んだことなどにより、我が国は世界経済の中で相対的地位を下げることとなったとの指摘も見られます。しかしながら、高い教育水準を背景とした人的資本の豊かさや、その独創性及び勤勉さにより、我が国が世界第三位の経済大国として引き続き世界経済を牽引していることは明らかであります。新しい令和という時代におきましても、経済のみならず、少子高齢化、環境問題、国際協力等への対応において、我が国は間違いなく重要な役割を担っていくとともに、本県もそれを力強く後押しできる存在でありたいと考えております。
新たな時代において、そして、東日本大震災を経験した本県にとって最も必要とされることは、競争・対立・摩擦型の構造ではなく、手を携え永続的に持続可能な社会を指向する共存・協働・融和の考え方であり、「誰一人取り残さない」社会の実現を掲げるSDGsの方向性は新時代の羅針盤になるものと考えられます。本県では残り二年の計画期間となった「宮城の将来ビジョン」及び「宮城県震災復興計画」の後継計画として、新たな総合計画の策定を進めているところであり、庁内にSDGs推進本部を設置するとともに、新計画においてSDGsの考え方を反映させ、本県が抱える諸課題の解決や持続可能な地域社会の実現を目指してまいります。
今議会は、新元号下での記念すべき最初の議会となります。創造的な復興の総仕上げはもとより、新たな時代を担う子どもたちに素晴らしいみやぎを引き継いでいくためにも、未来に向け県民の皆様と心を寄せ合い全身全霊で各種施策に注力してまいりたいと考えておりますので、何とぞ議員各位の御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げます。
次に、震災復興計画の推進と宮城の将来ビジョンの実現に向けた取組状況についてであります。被災された方々の住まいの整備につきましては、昨年度中に全ての災害公営住宅が完成し、防災集団移転促進事業も全地区で住宅等が建築できる状況となったところであります。先月には、名取市閖上地区でまちびらきが行われ、新しい街並みの中に被災された方々の希望に満ちた晴れ晴れとした笑顔が多く見られたほか、山元町では震災で大きな被害を受けた役場庁舎の新築工事が完了し、防災体制の拠点となる新庁舎での業務が始まりました。また、四月には、地域の方々にとって半世紀に及ぶ悲願であった気仙沼大島大橋が開通し、大型連休期間をはじめ大勢の観光客が大島を訪れているとのことであり、このような被災地の明るい話題を耳にしますと、未曾有の大震災からの復旧・復興の着実な進捗を実感するところであります。
一方で、復興のステージが進展したことに伴い、被災地においてはより切実できめ細かに対応しなければならない課題が生じてきており、その状況も地域ごとに様々な差異が見受けられます。未だに仮設住宅での暮らしを余儀なくされている方々へのケアはもちろんのこと、震災に起因する様々な悩みを抱える方々や新たな地域コミュニティづくりに対する支援、産業・生業の再生に向け、売上げや生産が震災前の状況に戻っていない方々への支援などについて、迅速な対応が求められている状況であります。
これらの課題に適切に対応するため、「未来への架け橋予算」と名付けました今年度予算を速やかに執行するとともに、例年にも増して私自ら被災地を訪ね、多くの方々の声に耳を傾けながら、地域の実情や要望を一つ一つ丁寧に汲み上げてまいりたいと考えております。その上で、残り二年を切った震災復興計画の最終ステージである発展期の二年目を全力で走り切り、創造的な復興の総仕上げを確かなものにしてまいりたいと決意を新たにしているところであります。
復興事業に対する手厚い国の支援策につきましては、来年度まで継続される見通しでありますが、復興・創生期間後の支援の方向性も含めた復興の基本的な考え方について、去る三月に「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」の変更が閣議決定されております。その内容は、これまで本県が被災市町とともに強く要望してきた項目について概ね反映されており、また、政治の責任とリーダーシップの下、省庁横断的な機能を有し復興の完遂を目指す復興庁の後継組織の設置も示されているところであります。本県としましては、今回の閣議決定の内容を評価しておりますが、復興・創生期間の終了後においても、特に被災された方々一人ひとりに対する手厚いソフト事業などにしっかりと対応していくためには、継続した財政支援が欠かせないものであり、引き続き様々な機会を捉えて、国に対する働きかけを積極的に行ってまいります。
各地で痛ましい事件が相次いでいる児童虐待の防止につきましては、その強化を図るための児童福祉法等の改正法が国会の審議を経て来年度以降施行される予定となっており、改正の内容としては、親権者によるしつけ目的での体罰の禁止が明記されるとともに、児童相談所の体制強化などが盛り込まれております。本県では、昨年七月に仙台市及び警察本部との三者間で児童虐待の防止強化のための情報共有に関する協定を締結し、相談事案に対する迅速で効果的な対応を図るため、児童相談所に警察官の配置を行い、警察との連携強化を進めているところであります。改正法の内容に沿って必要な対応を進めるほか、引き続き、市町村等関係機関と連携しながら、児童虐待の防止に努めてまいります。
また、先月、滋賀県大津市において交通事故により多数の保育園児が死傷するいたたまれない事故が発生いたしました。現在、国において園児が散歩などで移動する経路の安全確保に向け、全国的な点検等に着手したところであり、本県でも国の動向を注視しながら各市町村教育委員会等と連携し対応してまいります。
間もなく民営化から三年が経過する仙台空港につきましては、昨年度の利用者数実績の速報値が、国内線・国際線の合計で三百六十一万人余りと二年連続で過去最高記録を更新いたしました。これは、フジドリームエアラインズの出雲線の開設や、タイガーエア台湾が台北線を増便したことなどによる効果が現れたものと考えております。四月からは、ピーチ・アビエーションが台北線を週七往復に増便しているほか、エバー航空も来月から同様に毎日運航を開始し、また、十月にはタイ国際航空がバンコク線を再開する予定であることからも、今後、仙台空港利用者の更なる増加が期待されます。引き続き、今年度予算に新たに計上した新規路線開設に対する助成制度等を活用しながら路線の誘致を進め、仙台空港の利便性を高めることにより、本県のみならず東北全体のインバウンド及びアウトバウンド拡大に努めてまいりたいと考えております。
観光振興につきましては、国の統計によれば、昨年における本県の延べ宿泊者数が過去最高となり、通年型観光キャンペーンをはじめとする各種施策の効果が現れているものと認識しております。先月には、国民的アニメである「サザエさん」を活用した今年度の観光キャンペーンがスタートし、特に親子三世代・ファミリー層に対して効果的なPRができるものと大いに期待しているところであります。また、再来年度におきましては、関係機関の協力の下、東北六県によるデスティネーションキャンペーンを半年にわたり実施することとしており、復興・創生期間の終了後において、六県の力を結集することにより東北全体の魅力を最大限発信し、国内外からの交流人口拡大を積極的に図ってまいりたいと考えております。
開催まで一年余りとなった東京二○二○オリンピック・パラリンピック競技大会につきましては、今月初めに聖火リレールートとランナー募集の概要が大会組織委員会から発表されたほか、観客の案内等を行う本県の都市ボランティアの募集には、千三百人の募集定員を大きく上回る応募があり、県内におけるオリンピック競技開催への機運の高まりを大いに実感しております。また、先日、「ひとめぼれスタジアム宮城」におきましてサッカー日本代表の国際親善試合が開催され、三万八千人もの方々がオリンピックさながらの熱戦を間近で体感したところであり、引き続き、大会に向けた準備を計画的に進めるほか、様々な機運醸成イベントを実施することにより、被災された方々をはじめ、より多くの県民が参加し復興の姿を広く発信できる「復興五輪」にふさわしい大会にしてまいりたいと考えております。
最近の景気動向につきましては、国が発表した四月の景気動向指数の基調判断が悪化に据え置かれ、二か月連続で景気が後退局面にある可能性が示されており、また、先月の月例経済報告によれば、景気は緩やかに回復しているものの、設備投資や生産について下方修正され、通商問題の動向や中国経済の先行きに留意する必要があるものとされております。本県におきましては、個人消費が緩やかに回復しているという見方がある一方で、県内企業の業況判断に慎重さが見受けられることから、今後の経済動向について細心の注意を払っていく必要があるものと考えております。
なお、今年度当初予算は、震災復興計画の推進と宮城の将来ビジョンの実現に向けた取組に最大限配慮し、通年予算として年間所要額を計上したところであります。当面は現計予算の計画的かつ効率的な執行と歳入の確保に努めることとし、追加需要に対応する補正予算につきましては、復旧・復興事業の進捗状況や県税、地方交付税などの財源確保の状況を勘案しながら措置してまいりたいと考えております。
今回御審議をお願いいたします提出議案は、条例議案十五件、条例外議案十六件でありますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。
まず、条例議案でありますが、議第百十号議案、議第百十一号議案、議第百十八号議案及び議第百二十号議案は、消費税率の引上げ等に伴い各種使用料及び手数料等を改定しようとするもの、議第百十二号議案は、地方税法の改正等による特別法人事業税の創設に伴う法人事業税の税率の見直しなど県税条例等の一部を改正しようとするものであります。また、議第百十三号議案ないし議第百十五号議案は、過疎地域、離島振興対策実施地域及び原子力発電施設等立地地域における県税の課税免除等の適用期間を延長しようとするもの、議第百二十一号議案、議第百二十二号議案及び議第百二十四号議案は、東日本大震災により被害を受けた者が職業能力開発校、農業大学校及び県立学校に入学する際の入学金等の免除の期間を延長しようとするものであります。
次に、条例外議案でありますが、議第百二十五号議案及び議第百二十六号議案は、訴えの提起について、議第百二十九号議案及び議第百三十号議案は、工事委託契約の締結について、議第百三十一号議案ないし議第百三十六号議案は、工事請負契約の締結について、議第百三十七号議案及び議第百三十八号議案は、工事請負変更契約の締結について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。また、議第百三十九号議案は、地方税法の改正に伴う県税条例等の一部改正について、議第百四十号議案は、平成三十年度宮城県一般会計予算の補正について、それぞれ専決処分を行いましたので、その承認をお願いしようとするものであります。
以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
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