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その土地にまつわる歴史に、「触れる」ことも旅の楽しみの1つです。そこで、今回は慶長遣欧使節を送り出すために伊達政宗が建造した木造洋式帆船「サン・ファン・バウティスタ号」の復元船を係留・展示している博物館に出かけてみました。
写真1 サン・ファン・バウティスタ全景
視覚障害がある人がサン・ファン・バウティスタを楽しむにあたって、おすすめなのが館内にある復元船の模型です。
今回訪れたサン・ファン・バウティスタのような「大きな展示品」(建物や自然景観なども含む)を視覚障害がある人、とりわけ全盲の人が楽しむ場合、その全体像をいかに掴むかが大きなカギとなります。館内スタッフから、「復元船の模型がありますよ」と言って案内してくれました。船全体の形、帆を張った3本のマスト、航海の無事を祈って船首に取り付けられた龍の飾りなどは触れるとよくわかります。
写真2 サン・ファン館内で復元船の模型を触り、船の形を頭に入れる
最近、各地の博物館・美術館ではスタッフやミュージアムボランティアなどによる来館者向け見学ツアーを実施しているところが少しずつ増えてきました。
サン・ファン館では視覚に障害がある来館者がどうしたら楽しめるか事前に相談してみるところから旅はスタートしました。
今回は、個別に慶長使節展示室および復元船を館内ガイドスタッフ(アテンダント)のご案内で、巡ることとなりました。
写真3 展示室をアテンダントの案内を受けている
写真4 復元船にてアテンダントと記念撮影
サン・ファン館がある石巻市渡波地区は、牡鹿半島の付け根の位置にあり、東日本大震災の津波で大きな被害を受けました。
サン・ファン館もドック棟が8メートルのところまで浸水。そのため、ドック棟に展示していた模型などの展示品は海に流出してしまいましたが、復元船そのものは流出を免れ、2013年秋に再開館することができたとのことです。この年は慶長遣欧使節が牡鹿半島の月浦を出帆した1613年10月からちょうど400年という節目の年でもありました。
津波の影響で破損してしまったフォアマストと見張り台の一部が、東日本大震災の被害を後世に伝える品としてドック棟に保存・展示されており、これらは手で観る旅を楽しむ上ではとても貴重な展示物となっていました。
写真5 復元船ドック棟に置かれているフォアマストと見張り台
復元船は全部で4層になっていました。それらを順に見て回れるよう、見学コースが設けられています。
3本のマスト、帆を調整するロープ、船の進路を調整する舵、航路を記録するための道具など、日本からはるばる太平洋を越えた当時の航海技術をうかがい知ることができる場所が随所にあるばかりでなく、長い航海の間、乗り組んだ人たちがどのように暮らし、食料を確保し、いざという時に備えたのかについて実によくわかる展示となっています。
写真6 メインマストの根元
写真7 舵取り人
復元船の見学順路では、支倉常長の部屋がありベッド(寝台)は船の大きな揺れにも耐えられるように全長130cmとたいへん狭いつくりになっていたことをスタッフが説明してくれました。しかし、残念ながらどれほど狭いベッドなのか、実際に触ってみることは復元船と言えども難しいとのことでしたが、デッキ棟の出口で「支倉常長のベッド」の原寸大模型を発見。
どれだけ狭いか実際に横たわってみて体験してみました。
こんな体験が旅の思い出をよりいっそう豊かなものにしてくれるんだな、と改めて実感しました。
写真8 ベッドの原寸大模型で横になってみた。「寝るのも、楽じゃない~」
サン・ファンショップで見つけた「ペーパークラフト(青空編・夕焼け編)」
旅の思い出を持ち帰るのにおすすめかも
写真9 ペーパークラフト(青空編・夕焼け編)
「視覚障害がある人が楽しめる展示はほとんどないんです」
「視覚障害がある人をどのように案内したら良いのか正直よくわからないんです」
「視覚障害がある人は階段や段差が多い館内を果たして安全に移動できるのか、とても心配なんです」
こんな声を博物館をはじめとする観光施設のスタッフから聞くことが多いのが現状です。
そしてそんな「認識のバリア(壁)」が、障害がある人に旅行を断念させている要因の1つになってしまっているのも現実です。
でも、伊達政宗の命を受けて約400年前にはるばるヨーロッパまでの長旅を成し遂げた支倉常長の偉業に思いを馳せた時、「それまで知らなかったことを知る楽しみ」「新たな挑戦をしていくことの大切さ」という言葉が頭に浮かびました。
宮城県の郷土の歴史を知ることができるスポットとして、世界とつながろうとした仙台藩について学ぶことができる体感型ミュージアムとして、視覚障害がある人にぜひ今後どんどん訪れてほしい場所の1つだと思います。
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