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視覚障害がある人にとって、案内板やサインから情報入手ができないため、慣れていない場所は1人で移動するのが難しく、旅行は勇気や事前の十分な準備が必要となります。
そのため、「旅行に行きたいけれど自分にはムリだな」と諦めてしまう場合もあります。あるいは「友人と一緒に観光に出かけたが、食べることしか楽しみがなくて、後はおもしろくなかった……」なんて感想を持ってしまう人もいらっしゃるかもしれません。
そこで,今回、視覚障害がある人が楽しめるポイントを探しに石巻へ小さな旅に出かけてみました。
JR仙台駅発→JR東北本線・石巻線(小牛田駅乗換え)約1時間30分→石巻駅着→マンガロードまで徒歩約15分→石ノ森萬画館(館内所要時間約2時間)
(※平成27年5月30日からは、JR仙石線が復旧し,JR仙台駅からJR石巻駅まで約1時間で移動できる様になっています。)
写真1 石巻駅の改札口をでるところ
写真2 石巻駅の正面入口
石巻駅から北上川の中州(石巻市中瀬)に向かうルートには、石ノ森マンガに登場する約20体のキャラクターのモニュメントが設置されており、「マンガロード」として観光客を楽しませてくれています。
「名前だけは聞いているけれど、どんな体型・どんな姿なのかな?」という疑問を解消してくれるので、視覚障害がある人は,気になるキャラクターに会いに、街歩きしてみるのがおすすめです。
どんなキャラクターなのか確かめたら、キャラクターのポーズをまねて記念撮影してみるのもおもしろいかも!!
写真3 マンガロードにてロボコンと一緒に記念撮影
写真4 石巻商工会議所前のゴレンジャー
写真5 石ノ森漫画館の建物写真
石ノ森ワールドを満喫すべく、常設展示室を巡ってみました。見学エリアの1つが「サイボーグ009の世界」です。ここでは、001から009までの9人のキャラクターが来館者を歓迎してくれています。各キャラクターの人物設定を確かめながら一人ひとりの特徴を探ってみると、思わぬ発見ができそうです。
写真6 サイボーグ009の世界
「仮面ライダーの世界」にある体験アトラクション「サイクロン号に乗る!」(有料)は、オートバイの形をしたサイクロン号にまたがりハンドルを握ることによって画面に映る走行コースをさっそうと走り抜ける体験ができます。こちらは弱視の方も楽しめそうです。
写真7 サイクロン号にまたがる
3階にあるライブラリー・マルチメディア工房は石ノ森章太郎作品以外にも約6000冊のマンガが所蔵されていて、無料で自由に読むことができるようになっています。また、映像作品を楽しむことができるブースも3つ設けられています。平日は、ライブラリーが所蔵している映像作品から好きなものを選んで視聴ができます。子供の頃夢中になったあのアニメマンガの懐かしい声・懐かしい効果音・懐かしいテーマソングを聞くと、思わず子供時代の記憶が次々とよみがえってくるかもしれません。スタッフの方もとても親切に視聴をサポートしてくれます。
写真8 視聴ブースでヘッドホンをつけて作品鑑賞
写真9 仮面ライダーが座るベンチで、仮面ライダーと腕組
展望喫茶カフェ「BLUE ZONE」では、キャラクターにちなんだ名前のメニューが並ぶ。
石ノ森先生の思い出の味チキラーセット(おかず・ミニライス・メロンソーダ付)650円
写真10 チキラーセット
ミュージアムショップは視覚障害がある人にとって隠れたお楽しみアクティビティです
1階の無料ゾーンにあるグッズショップ「墨汁一滴」では仮面ライダーやゴレンジャーなど“石ノ森ワールド”に登場するキャラクターのフィギュアをはじめ、触って楽しめる商品が多くあります。今回の訪問でお勧めだった商品はミネラルウォーターのペットボトル。このペットボトルはボトルの形が仮面ライダーの胴体をかたどっているため、手軽に触って楽しめます。
写真11 グッズショップ「墨汁一滴」にて仮面ライダーの胴体をかたどったペットボトル
マンガは、見えない人・見えにくい人にとってはともすると縁遠いものですが、宮城県出身のマンガ家石ノ森章太郎の作品に触れられるということで石巻に出かけてみました。
石ノ森萬画館のスタッフの対応がとてもていねいだったことが印象的でした。情報障害と言われる視覚障害がある人にとっては、このような来館者個々のニーズに応じた人的な対応(ソフト)が充実していくことは旅を楽しいものにしていくうえでとても意義があります。
また、障害がある人たちに対して合理的配慮を提供することがさまざまな場所・場面で今後ますます求められるようになります。
そんななか、「ミュージアムで提供できる/提供すべき合理的配慮は何か?」について考え、実践していくことがよりいっそう必要になってくるでしょう。
ミュージアムのいちばんのウリは何と言っても展示です。その展示に視覚障害がある人もよりいっそう触れることができ、学び・楽しむことができるよう、いろいろな工夫を試みていっていただくことを期待しています。
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