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平成11年11月
宮城県 総務部
Q5 財政調整基金等(4基金)とは何ですか。また、残高はどのくらいですか。
Q8 財政が悪化しているのに、どうして借金(県債発行)をするのですか。
Q12 宮城県は他県や仙台市に比べ、なぜ財政状況が悪いのですか。
Q18 現在の地方財政制度は見直しが必要なのではありませんか。
Q19 これまでにどのような取り組みがなされているのですか。
Q20 今後の収支見通しはどうなっているのですか。(どのくらいの財源不足ですか。)
Q21 財政収支の見通しは、どのような前提のもとに試算しているのですか。
Q23 他の都道府県ではどのような取り組みをしているのですか。
Q26 財政健全化のための具体的な計画はどうなっているのですか。
Q29 財源不足はこれまでどおり、基金の取崩しと県債の増発で対応できないのですか。
Q30 人事委員会勧告で出されたボーナスカットのみで対応できないのですか。
Q32 人件費は職員数が減っているのに、なぜ増えるのですか。
Q33 今後、児童生徒数の減少により教職員数が減少、また行政職員も削減され、給与の伸びも低率が予想されることから、人件費は減少するのではないですか。
Q35 単独建設事業のここ数年の状況はどのような傾向になっていますか。また、全国の状況と比較するとどうですか。
Q36 建設事業費を抑制するのではなく、新たに公共事業を起こし景気回復を図ることを優先すべきではないのですか。
Q37 建設事業費を半減すれば財源を確保できるのではないでしょうか。
Q38 景気低迷によって税収が減少したといわれていますが、県税収入は全体として伸びているのではないのですか。
Q40 経費削減や人件費抑制の措置だけではなく、税の滞納整理や県有財産の処分などにより、もっと歳入面で努力すべきではないですか。
A “210億円の財源不足”
平成11年度は、危機的な様相を呈する財政状況に対処するため、事務事業の見直しや経費節減、公共事業の抑制など、歳出全般にわたる施策の厳選を行い、財政再建団体(昭和31~37年度)に転落した直前の昭和30年度以来、44年ぶりの前年比マイナス予算の見込みです。(一般会計ベース)
また、引き続く景気の低迷により、法人関係税を中心に県税が前年度に比べ約216億円の減収((10)2,620⇒(11)2,404億円、約▲8%)と見込まれるなど、収支全体(一般会計)では210億円もの巨額な財源不足が見込まれるため、財政調整基金等の4基金を取崩すことにより、かろうじて収支の均衡を図っています。
<一般会計の年間収支見通し…一般財源ベース>
歳入 |
歳出 |
---|---|
県税 2,404億円 |
義務的経費 3,224億円 |
地方交付税 2,186億円 |
人件費 2,193億円 |
地方消費税清算金 430億円 |
公債費 911億円 |
その他収入 297億円 |
投資的経費 533億円 |
計 5,317億円 |
県税交付金等 749億円 |
財源不足⇒基金(貯金)取崩 210億円 |
その他経費 1,021億円 |
再計 5,527億円 |
計 5,527億円 |
A “平成12年度にも赤字が発生し、平成13年度には「準用財政再建団体」に転落”
バブル崩壊後、県税の減収や経済対策の実施に伴う公債費の増大等により大幅な財源不足が続く一方、県の貯金である財政調整基金等の残高は、平成11年度末で124億円程度まで減少すると見込まれます。このため、歳入に限りがある以上、聖域なき歳出削減(=財政健全化)を行わなければ、平成12年度に財政調整基金等は枯渇し赤字の発生が余儀なくされ、さらに平成13年度には「準用財政再建団体」に転落する可能性が極めて高くなっています。
A “財政健全化が不可避。最悪の場合、準用財政再建団体として国の管理下へ”
実質収支 (注1)の赤字額が一定規模(標準財政規模(注2)の5%=財政再建ライン、平成11年度ベースで約222億円)を超えると、建設地方債の発行を制限され、道路整備や治水対策、学校建設、福祉施設整備などの社会資本の整備に必要な事業が事実上できなくなります。このため、国の管理下で「準用財政再建団体」として財政再建を行っていくことになります。
「準用財政再建団体」は、企業で言えば、会社更生法の適用を受けることに相当し、過去に生じた赤字を一定の期間に解消するため再建計画を立て、人件費 (給与)の削減はもとより、国の基準を超える事業や県が独自に実施している事業などについて、縮小または廃止するなどきわめて厳しい措置を講じなければならなくなり、県民生活にも深刻な影響が懸念されます。
…準用財政再建団体についてもっと詳しく知りたいのですが…
赤字額が上記財政再建ラインに達した地方自治体に対し、国は一定の要件を満たす場合に「地方財政再建促進特別措置法」(以下「再建法」という。)に基づき協力援助します。
再建法による財政再建(本再建)は昭和29年度の赤字団体のみに対する制度ですが、昭和30年度以降の赤字団体に対しても、本再建の規定の一部を準用して財政再建を行う制度として、準用再建が定められています。
準用再建では、地方債の制限が解除されますが、そのためには財政再建計画を策定し、国の承認を受けなければなりません。財政再建計画には、再建の具体的措置として、人件費(給与)・事務経費の削減や投資的経費の抑制などの歳出削減策と、使用料等(公共料金)の増収による歳入対策により、一定期間内に健全化するための方策を定めなければなりません。
再建には、このような再建法に基づく再建(準用再建)と再建法によらない再建(自主再建)があり、どちらを選択するかは各自治体が判断することになりますが、自主再建の場合は地方債の制限が解除されないなど国の支援がないため、赤字額が大きい場合は準用再建によって財政の再建を図ることになります。
全国の準用再建団体の状況(平成11年度当初時点)
都道府県:なし、市町村:1団体
A “自力再建が原則”
地方財政の円滑な運営を図るため、地方財源の総額確保のための措置として、地方財政対策が講じられ、地方財政計画が策定されます(交付税法第7条)。
これは、地方自治体の実際の収支見込額を推計するものではなく、客観的に推測される通常の水準における収入・支出の総額を計上したもので、そこで見込まれた財源不足については、地方交付税の加算措置や県債(財源対策債)の発行などにより補てんされる仕組みになっています。
しかし、国の水準を超える経費や個々の自治体の事情に基づく財源不足については、この中に含まれず、当該団体の自助努力で解決しなければなりません。
Q5 財政調整基金等(4基金)とは何ですか。また、残高はどのくらいですか。
A “県の基金(貯金)は激減しています”
財政調整基金、県債管理基金、地域整備推進基金、国際化基盤整備推進基金をいい、いずれも年度間の財源調整を目的とした積立金 (貯金)です。
景気低迷などによる大幅な税収減や災害など予期しない支出に対応するための積立金。
県債の償還やその信用維持のための積立金。償還金は義務的な経費であり、収入の変動に影響されずに、償還を円滑に行うためのもの。
地域の基盤となる公共施設整備のための積立金。
国際交流拠点としての産業基盤施設整備のための積立金。
<各年度末の基金残高の推移> (単位:億円)
区分 |
(3) |
(4) |
(5) |
(6) |
(7) |
(8) |
(9) |
(10) |
(11)(見込) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
財政調整 |
163 |
123 |
115 |
110 |
100 |
93 |
86 |
38 |
17 |
県債管理 |
192 |
138 |
222 |
228 |
227 |
227 |
229 |
156 |
86 |
地域整備 |
221 |
187 |
173 |
172 |
163 |
163 |
90 |
85 |
5 |
国際化 |
58 |
55 |
46 |
45 |
36 |
34 |
29 |
25 |
16 |
計 |
124 |
A “県債はローンと同じ”
県債は地方自治体が財源の調達手段として、第三者から資金の借入を行うことによって負担する長期債務で、証券発行や証書借入の形式をとっています。
地方自治体の歳出は、県債以外の歳入でまかなうことが原則(地方財政法)とされていますが、効用が将来に及ぶ経費や水道などの公営企業に要する経費の負担について、世代間の負担の平準化や利用時支払いの原則から、将来の住民にも経費を分担させることが公平である場合に、県債を経費の財源とすることができるとされています。
県債を財源とする事業は、公共施設、災害、公営企業等の建設事業等に限定されます。
県債の発行(起債)には、起債の目的、限度額、起債の方法、利率及び償還方法について、議会の議決を得るとともに、自治大臣の許可が必要となります(地方自治法)。
また、その借入先には、政府、公営企業金融公庫、銀行等があります。
A “財政健全化措置を担保とする特例的な借金”
財政構造が悪化している地方自治体が、自主的に財政の健全化に取り組む場合、これらの取組の効果が認められ、将来の財政負担の軽減が見込まれる範囲内で、資金手当のための県債発行が認められるもので、平成10年度から措置されています。
対象となる財政健全化措置は、歳入面では、使用料や手数料の見直しなど、経常的な収入の確保。歳出面では、人件費の削減、内部管理経費の節減、補助金の見直し、その他事務事業の整理合理化など財政健全化の効果が算定できるものとなっています。
Q8 財政が悪化しているのに、どうして借金(県債発行)をするのですか。
A “生活基盤整備や景気回復のための県債増発”
県債の発行は、後年度の財政運営の圧迫要因となるため、できるだけ抑制する必要があります。
しかし、一方では県民の生活基盤の計画的整備や目下の緊急課題である地域経済の立てなおしも急務であるため、当面、県債の増発を財源として、道路、下水道、治水対策などの公共投資を行っています。
この場合でも、国による地方財政対策や経済対策に基づいて、後年度の元利償還金に地方交付税などにより財源措置のある県債をできるだけ活用しています。
今後の財政健全化に当たっても、財源措置の有利な県債を活用する一方で、県費負担の大きい県単独建設事業については、できるだけ抑制する必要があります。
A “経常収支比率が年々悪化”
指標には様々なものがありますが、主に次の三つの指標があります。
発行される県債の多くは,民間からの借入によるもので、生保などの機関投資家に流通することを前提として証券方式で発行されており、県債の流通性の確保と信用性の維持の観点から、債権者(投資家)の意思を無視して繰上償還することは困難です。
なお、政府資金については、平成11年度の臨時措置として繰上償還が認められることになりましたが、起債制限比率などにより対象団体が限定され本県は対象外です。
A “自治体が自由に使える財源が一般財源”
財源の使途が特定されず、自由に使用することができるものを一般財源といいます。代表的なものとしては、県税、地方交付税及び地方譲与税などがあります。
これに対して、財源の使途が特定されるものを特定財源といいます。特定の事業目的のために得られる財源で、国庫支出金、県債などがあります。
(歳入に占める一般財源の比率(決算統計05表)…(3)61.2%⇒(10)50.4%)
A “歳出に占める義務的経費の割合が高い”
歳出面では,人件費、公債費などの義務的経費の構成比が高く、公共事業等の投資的経費の構成比が低いのが特徴で、仙台市などの大都市を抱える都道府県に共通して見られる傾向です。これは、(1)政令市である仙台市内の県道の整備が仙台市に移譲されている分、公共投資が軽減されている反面、(2)仙台市内の小中学校の教職員や警察官の人件費も県が負担していること、などによるものです。
<参考>義務的経費の比率(平成9年度決算 歳出に占める義務的経費の比率)
宮城県 千葉県 神奈川県 愛知県 広島県 福岡県
43.1% 46.2% 58.7% 46.9% 46.5% 51.2%
仙台市 千葉市 横浜市 名古屋市 広島市 福岡市
38.0% 42.4% 37.0% 38.5% 39.4% 33.1%
Q12 宮城県は他県や仙台市に比べ、なぜ財政状況が悪いのですか。
A “大都市部を抱える都道府県ほど財政悪化が顕著”
政令市などを抱える大都市部の都道府県では、歳入面では景気変動の影響を受けやすい法人二税(法人住民税と法人事業税)への依存度が高い一方、仙台市などは景気変動の影響の少ない固定資産税への依存度が高くなっています。また、歳出面では人件費等の義務的経費の比率が高くならざるを得ない財政構造(Q11参照)となっているため、景気低迷の影響を大きく受け、極度に財政状況が悪化しつつあります。
<平成10年度決算> 宮城県 仙台市
歳入に占める地方税の割合 27.9% 地方税の割合 45.7%
地方税のうち法人二税の割合 30.0% 固定資産税の割合41.9%
A “景気低迷による税収不振”
歳入面では、景気の低迷による税収の落ち込みが最大の原因です。県税収入は、バブル経済崩壊後伸び悩み、平成9年度以降は経済成長が二年連続でマイナスとなるなど、法人二税の減収に加え、景気回復のための特別減税や恒久的減税が実施されたことなどにより、大幅な減収となっています。
歳出面では、人件費や扶助費(社会保障費)が着実に増加してきたことに加え、税収の落ち込みの補てんや経済対策のために県債を増発したことによる県債残高の累増により、その元利償還金の支払い(公債費)が増加し、歳出全体に占める義務的経費の割合が高まっています。このため、財政の弾力性を確保し、経済変動や地域社会の状況の変化に対応することが困難な状況になりつつあります。
…バブル経済絶頂期の平成3年度と平成10年度を比べてみると…(普通会計)
区分 平成3年度 平成10年度 増減
県税等収入 2,391億円 ⇒ 2,288億円 ▲103億円(▲4.3%)
人件費 2,437億円 ⇒ 2,824億円 +387億円(+15.9%)
公債費 680億円 ⇒ 895億円 +215億円(+31.6%)
A “交付税は不足を全て補うものではない”
地方交付税には、普通交付税と特別交付税がありますが、その大半は普通交付税で、基準財政需要額と基準財政収入額の差額という形で国から交付されるものです。
(11) 需用3,989億円-収入1,855億円=2,134億円⇒ 普通交付税額 2,132億円
基準財政需要額は、各地方自治体において現実に必要とする経費の額を算定するものではなく、各地方自治体に共通する標準的な事務に要する経費を算定の対象とし、地域的特殊性の強い経費や、独自性の強い経費は算入されません。基準財政収入額も収入実績に基づくものではなく、各地方自治体の財政力を合理的に測定するために、標準的な状態において徴収が見込まれる税収入を一定の方法で算出した額(基準税率の80%)が用いられます。
したがって、地方交付税は必ずしも各地方自治体が必要とする財源を保障するものではありません。
A “県債の増発と基金の取崩しでやりくり”
バブル経済崩壊後の県財政は県税収入が伸び悩む一方、義務的経費は年々増嵩し、大幅な財源不足の状態が続いています。この財源不足を、県債の増発と基金(貯金)の取崩しで穴埋めしてきました。
平成11年度は、危機的な財政状況に対処するため、事務事業の見直しや経費節減、公共事業の抑制など、歳出全般にわたる施策の厳選を行い、44年ぶりの前年比マイナス予算となる歳出抑制を図ったものの、引き続く景気低迷により、法人関係税を中心に県税等が前年度に比べ216億円の減収(▲8%)となる反面、人件費や公債費などの義務的経費の大幅な増加により、210億円もの財源不足が見込まれるため、財政調整基金等を取崩すことにより、かろうじて収支の均衡をはかっています。(Q1参照)
この結果、県債残高は平成4年度以降の国の経済対策に呼応し多額の発行を続けてきたため、毎年度1,000億円程度増加し続け、平成10年度末では1兆1,817億円に達する(Q6参照)一方で、基金は平成11年度末には124億円にまで減少する見込み(Q5参照)です。…一般会計ベース
A “県債増発は後年度に重い負担となって返ってくる”
県債の過度の発行は、後年度の住民に過重な負担を強いることにもなり、また金融財政面にも少なからず影響を及ぼすことにもなるので、県債の発行については、現行法上、いろいろな制限が設けられています。
地方財政法では、県債を財源とすることができる事業が限定されており、また、都道府県が発行する場合は自治大臣の許可が必要とされています。
したがって、財源が不足するからといって、地方自治体が勝手に借金をすることはできない仕組みになっています。(Q6参照)
また、特例的に財政健全化債の発行が認められる場合(Q7参照)も、後年度に県税収入をはじめとする一般財源で、その元利償還金を支払っていかなければなりません。このため、財政健全化債については、各地方自治体の財政健全化による将来の財政負担の軽減効果を担保に発行が許可されることになっています。
A “大幅な税収上は期待できません”
平成11年度の政府経済見通しは、プラス成長への期待を込めて国内総生産の実質成長率を0.5%程度と見込んでいます。しかし、今後、バブル期のような右肩上がりの経済成長を期待することは困難であり、経済の低成長が続く中にあっては、県税収入に大きな伸びは期待できません。
一方、平成12年度からの介護保険制度導入をはじめ、高齢化の進展などに伴う社会保障費の増加や、これまでの景気対策の財源に充てるため大量の県債を発行してきたことによる公債費の増加などにより、義務的経費はますます増加していくことが見込まれます。
したがって、景気が回復しても直ちに財政状況が好転することは期待できず、中長期の視点からも財政構造改革は避けて通れない課題となっています。
Q18 現在の地方財政制度は見直しが必要なのではありませんか。
A “地方税財源の充実確保を国に対し強く要望”
地方分権の推進に当たって、地方自治体は地域における行政を総合的に広く担うこととされており、地域福祉の推進等の重要政策課題の進展に伴って財政需要がますます増大するものと見込まれます。
この住民ニーズに応じて、地方分権を実効あるものとする自主的・自立的な行政運営を図るためには、地方一般財源の確保が不可欠であり、特に次の事項について、国に対し強く働きかけていくこととしています。
Q19 これまでにどのような取り組みがなされているのですか。
A “約88億円の効果”
バブル経済崩壊後、急速に悪化した県財政の健全化を図るために中長期的な指針として、平成11年2月に「財政健全化推進計画」を策定しましたが、これまでにも、次のような取り組みを行ってきました。
行政改革大綱等に基づく事務事業の見直し H7~11 68億円(Q27参照)
使用料・手数料の見直し H7~11 12億円
特別職給料・報酬、管理職手当の5%カット等 H11 8億円
計 88億円
これに加え、平成10年度からは県が行っているすべての仕事について現状分析と評価行い、事業の廃止・縮小や効率化など、今後の方向性や改善方策について検討し、見直しに反映させるため「事務事業総点検」を実施しているほか、平成11年度当初予算編成では初めて公共事業にキャップ制(要求上限額)を導入するなど、厳しいシーリングを設け、事業全般の見直しに努めています。
このほかにも、
(2)「県税徴収確保対策5か年計画」に基づく、県税収入率の向上と滞納額の縮減
…平成9年度~13年度
などに取り組んでいます。
Q20 今後の収支見通しはどうなっているのですか。(どのくらいの財源不足ですか。)
A “巨額の財源不足が発生”
今後も義務的経費などの増嵩により、平成12年度141億円、13年度287億円、14年度320億円、15年度427億円もの大幅な財源不足が続くことが予想されます。
Q21 財政の収支見通しは、どのような前提のもとに試算しているのですか。
A “名目成長率0%で試算”
本県の中期見通しは、名目経済成長率を0%とし試算しています。国の「中期財政試算」(大蔵省H11.1)では1.75%と3.5%のケースを想定していますが、過去2ヵ年のマイナス成長の状況(実質国内総生産:(9)▲0.4%、(10)▲1.9%、なお(11)4~6月期に基づく年率換算では0.9%のプラスとなりマイナスは回避されるとの見通しあり)や国内各シンクタンクの予想でも若干のプラス(一定規模の補正予算を折込済)がせいぜいと見込まれ、厳しい雇用情勢も考慮し、0%という厳しい状況を前提としています。
<具体的試算方法>
歳入~県税や地方交付税等、歳出の人件費、その他経費については伸率0%を基本。また、公債費や退職手当は積上げ、公共事業は平成12年度▲10%、以降同額と試算。
A “健全化は平成11年度から15年度までの5年間を目標”
収支見通しは、経済動向や国の制度改正などに大きく左右される面があり、推計の期間が長期にわたるほど、これらの不確定要因により、精度に問題を生じることになります。したがって、今年度を含め5年間の収支見通しを立て、この期間に集中的に財政健全化措置を講じていきたいと考えています。
Q23 他の都道府県ではどのような取り組みをしているのですか。
A “他都道府県でも厳しい健全化措置”
東京都、大阪府、神奈川県、愛知県、福岡県など大都市を抱える他の都府県は相次いで「財政危機宣言」を行い、財政健全化に向けた取り組みに着手しており、その主な内容は次のとおりです。
<歳入確保>
徴税の推進、保有財産の売却、使用料や手数料の見直し(引き上げ)
<歳出見直し>
A “財政健全化ための4つの視点”
次の4つの視点から財政健全化を進める必要があります。
優先度による事業選択と徹底した内部経費の縮減
歳出構成比(一般財源ベース)で4割を占める人件費についても、総額を削減
県債割合が4割以上を占める建設事業を高水準で実施し続ければ、公債費の増加につながるため、事業の厳選により総額を抑制
県税収入の徴収努力や不用県有財産の処分などにより、歳入を確保
A “財政健全化に聖域なし”
地方自治体の歳入に限りがある以上、財政健全化には歳出全般にわたる、思いきった削減が避けられません。
その意味からも、歳出面では「すべての事業を対象とした歳出削減」、「人件費総額の削減」、「投資的経費の規模抑制」の3つの視点を揚げ、これに歳入面からの視点として「歳入の確保」を加え、4つの視点から財政健全化に向けた取り組みを行っていくこととしています。
Q26 財政健全化ための具体的な計画はどうなっているのですか。
A “2月に策定した財政健全化推進計画に基づき、来年度に向けさらに強化”
平成11年2月に策定した「財政健全化推進計画」では以下の方策を掲げています。
<歳出>
人件費~定員の適正化、職員給与等の適正化
投資的経費~(11)対前年80%以内、(12)90%以内、以降同額限度。県執行建物は新規凍結。
一般行政経費~税交付金を除き(11)対前年90%以内、(12)90%以内、以降同額限度。
<歳入>
県税~収入率の向上と収入未済額の縮減
使用料・手数料~受益と負担の適正化
遊休資産の活用~売却や貸付けの推進
今回の「財政危機宣言」を機に、今後とも上記計画に基づく取り組みをさらに強化します。
A “5年間で68億円の見直し”
本県では、昭和50年以来独自の行財政改革に取り組んでおり、昭和55年には民間有識者からなる「行財政問題懇談会」を設置し、その提言を基に昭和56年度以降、組織機構や事務事業等について、毎年度見直しを行ってきました。
さらに、平成7年には平成9年度までの3ヵ年を計画期間とする「行政改革大綱」を策定・実施し、平成10年度以降も予算編成を通じて見直しを行ってきました。
<見直し実績> (単位:百万円)
区分 (7) (8) (9) (10) (11) 計
廃止 280( 78) 2,153(54) 848( 99) 1,034(153) 370(127) 4,685(511)
縮小 190( 49) 99(18) 527( 48) 786(109) 360(119) 1,962(343)
統合 62( 38) 5(15) 34( 17) 5( 6) 5( 9) 111( 85)
計 525(165) 2,257(87) 1,409(149) 1,825(268) 735(255) 6,751(924)
<注1>( )は件数。なお、統合は統合前の件数。
<注2>単年度事業などの当然減を除外。
今後も見直しに当たっては、単に画一的、一律的な歳出削減ではなく、事業の厳選や再構築を行い、施策の重点化を図ることとしています。このため、県と国・市町村・民間との役割分担、行政サービスの水準のあり方も含め、その必要度、妥当性、緊急性、費用対効果について検証し、徹底した洗い直しを行っていきます。
また、納税者である県民の視点に立って、施策や事業の効果・効率性を重視しながら、定期的に現状分析と評価を行い、今後の方向性や改善方策について検討し見直すための手立てとして、昨年度から「事務事業総点検」を実施し、事業見直しに努めており、平成12年度の予算編成においても点検結果を反映することとしています。
A “歳出全般にわたる削減の一環”
バブル経済崩壊後の厳しい財政状況に対応するため、事務事業の徹底した見直しを実施してきましたが、平成9年度以降2年連続で経済成長率がマイナス(実質国内総生産 (9)▲0.4%、(10)▲1.9%)となるなど、景気の低迷による税収等の不振等から財源不足状態は解消の兆しが見えず、県の貯金である財政調整基金等4基金の残高の減少傾向には歯止めがかかっていません。(Q5参照)
今後の財政収支を展望しても、恒久的減税の実施や義務的経費の増大により、引き続き大幅な財源不足の状態が継続することは必至であり、4基金の残高を考えた場合、今後の財政運営はかつてない厳しいものになることが予想されます。
このため、これまでの取り組みからさらに踏み込んで、本県の財政構造の抜本的な体質改善を図ることが現下の緊急課題となっています。
したがって、歳出全般にわたり徹底した見直しを行うこととし、一般財源ベースの歳出構成比で4割を占める人件費(歳出全体5,527億円、人件費2,193億円)についても、その総額を削減せざるを得ない状況に至ったものです。
Q29 財源不足はこれまでどおり、基金の取崩しと県債の増発で対応できないのですか。
A “基金の取崩しと県債の増発での対応は困難”
平成3年度末には約634億円の残高があった財政調整基金等4基金は、平成11年度末には、5分の1の約124億円にまで激減する見込み(Q5参照)です。この残高も、平成12年度には底をつくと見込まれ、非常に厳しい状況にあります。
また、県債は基本的には投資的経費(適債事業)に係る県負担額の一定割合までしか発行することはできません。財政健全化措置による歳出削減とこれによる将来の財政負担の軽減を担保に発行が認められる財政健全化債(Q7参照)にしても同様です。
したがって、国のように財源不足が生じるからといって、その分県債を増発すること(いわば赤字県債の発行)はできません。
Q30 人事委員会勧告で出されたボーナスカットのみで対応できないのですか。
A “ボーナスカットだけでは不足”
ボーナスの支給月数は、人事委員会が民間の支給実績を考慮した勧告を行い、これに基づいて措置されていますが、昨年の民間における支給実績が景気の低迷によりかなり厳しい状況にあることから、今回、ボーナスの支給月数の0.3月削減が勧告されています。
この対応については、今後検討することとなりますが、仮に勧告どおりの実施を行った場合、一定の人件費の抑制効果がありますが、昇給(定期・特別)による2%程度の増加などにより、相殺されると考えています。このため、大幅な財源不足が見込まれる現状では、人件費以外の財政健全化措置を講じても、相当規模の不足が生じることから、勧告のボーナスカットによる抑制のみでは、賄うことができない状況にあります。
A “今後の歳出削減、歳入増に期待”
今後の事業費の削減などによる再建努力に加え、景気回復による税収増などの歳入の確保を期待し、平成12年度、13年度の2ヵ年を対象期間としています。
Q32 人件費は職員数が減っているのに、なぜ増えるのですか。
A “昇給や退職手当による変動も大きい”
人件費の変動要因としては、給与改定、昇給、職員数、退職者の数など様々な要因があります。
下表のように、平成10年度と平成7年度を比べると、職員が100人以上減っているにもかかわらず、人件費は173億円の増となっています。
これは給与改定(ベースアップ)がない場合でも、昇給(定期・特別)により2%程度増加し続けることや、退職者の増減により退職手当(退職金)が変動することなどによるものです。
Q33 今後、児童生徒数の減少により教職員数が減少、また行政職員も削減され、給与の伸びも低率が予想されることから、人件費は減少するのではないですか。
A “人件費の伸びは今後鈍化”
Q32のとおり、人件費の増減は給与改定率の状況、昇給、退職者数及び給与制度の改正状況などを考慮する必要があります。
今後、児童生徒数の減少に伴い教職員数が減少すると、その分人件費の負担は軽減されますが、給与改定率が民間の動向を反映し低位で推移したとしたとしても、昇給(定期・特別)を勘案すると、人件費の伸びは鈍化するものの、その総額が大幅に減少することはないものと見込まれます。
A “建設事業の財源の大半は県債(借金)”
主なものは、道路、高校、交通安全施設などの新増設や改良・改築です。
平成11年度予算(9月現計:普通会計)の本県の県単独建設事業は、大規模な箱モノ建設が終了(東北歴史博物館▲82億円、産業技術総合センター▲76億円、古川農業試験場▲60億円)したことや、県単独で行う公共事業を縮減(▲162億円)したことなどにより、928億円と前年度現計予算に比べマイナス413億円、約3割減となっています。
事業費の中では道路・街路が最も多く226億円、次に総合運動公園120億円となっています。また、県単独建設事業費928億円のうち、459億円(約50%)が県債(借金)により賄われています。
Q35 単独建設事業のここ数年の状況はどのような傾向になっていますか。また、全国の状況と比較するとどうですか。
A “県単独建設事業費の水準は低下傾向”
県単独建設事業費は、平成元年度には696億円でしたが、その後毎年増加し、平成4年度には1,067億円に達しました。さらに、平成5年度以降は景気回復を図るための公共事業等が毎年実施され、平成10年度まで1,200億円から1,300億円台の高い水準で推移してきましたが、平成11年度予算では、一転して減少し、平成4年度を下回る928億円まで減少しています。
(全国比較するため普通会計ベースで記載。H10までは決算、H11は現計予算)
また、全国の状況は、平成元年度以降、本県と同様に上昇傾向にありましたが、ここ数年(平成9年度以降)は低下傾向を示しています。
<対前年度伸率の推移> (単位:%)
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
宮城県 3.1 0.2 26.4 21.1 16.5 ▲1.9 0.2 13.0 ▲8.7 6.3
全国平均 11.5 17.9 10.1 22.0 8.7 ▲2.7 5.2 ▲1.1 ▲8.0 ▲4.2
Q36 建設事業費を抑制するのではなく、新たに公共事業を起こし景気回復を図ることを優先すべきではないのですか。
A “財源措置の少ない建設事業費は抑制”
現在の財政状況を踏まえると、できるだけ県債の発行を抑制し、後年度の財政負担の軽減を図っていく必要があります。このため、投資的経費については、施策の優先度を見極め年度間の事業量の変動を平準化するなど、景気回復を損なわないよう国による財源対策が講じられるもの(経済対策のための補正予算など)に配慮しながら、総額を抑制することとしています。
Q37 建設事業費を半減すれば財源を確保できるのではないでしょうか。
A “建設事業費の縮減にも限界があります”
…普通建設事業費は平成11年度予算(9月現計、普通会計)で2,381億円と前年度現計予算に比べマイナス841億円、約26%減。このうち国庫補助金や県債を除く一般財源は549億円(構成比23%)…
投資的経費の規模抑制は財政健全化の4つの視点(Q25参照)の1つとなっており、重点化、コスト縮減努力などにより、抑制策を講じる必要があります。
しかしながら、一方で継続中の事業や地域ニーズに応じた事業など事業規模の圧縮が難しい面もあり、全体を半減することは現実には困難です。県民生活の質の向上と地域経済の長期的な発展の基礎固めを行っていくためには、道路、下水道、治水対策などの産業・生活基盤の整備を計画的に進めていく必要があります。
このため、今年度で3割近くの削減を実施し、平成12年度にさらに1割程度の削減を行うこととしていますが、極端に減らすといった片寄ったものではなく、財政状況を踏まえた上で、他の経費とバランスのとれた財政運営を行っていく方針です。
Q38 景気低迷によって税収が減少したといわれていますが、県税収入は全体として伸びているのではないのですか。
A “地方消費税が創設されても税収全体では落ち込み”
県税収入は、今年度落ち込むまで、ここ数年伸びているように見えますが、税収のうち一定額は市町村に交付しなければなりません。この県税交付金等を除いた後の、実質的な県の手取りで比較すると、平成9年度以降は景気の低迷と減税により、3年連続して前年度を下回る見通しとなっています。
<県税収入の推移> (単位:億円)
年度 |
(3) |
(4) |
(5) |
(6) |
(7) |
(8) |
(9) |
(10) |
(11) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
県税収入 |
2,644 |
2,532 |
2,522 |
2,496 |
2,615 |
2,767 |
2,716 |
2,742 |
2,530 |
交付金等 |
253 |
230 |
245 |
266 |
274 |
240 |
297 |
454 |
424 |
実質収入 |
2,391 |
2,302 |
2,277 |
2,230 |
2,341 |
2,527 |
2,419 |
2,288 |
2,106 |
注1)平成10年度までは決算ベース、平成11年度は年間見込ベース
注2)地方消費税は都道府県間の清算相殺後
注3)消費税制度が平成9年度から変更(譲与税→県税化)されたため、県税収入には消費譲与税や都道府県間の清算相殺後の地方消費税を含む。
A “法人二税の急激な増収は期待できない”
法人二税とは、法人住民税(均等割・法人税割)と法人事業税を指します。
本県における法人二税は、平成3年度の1,125億円をピークに、その後バブル経済の崩壊や減税の実施により急激に減少し、平成11年度年間見込では693億円(平成3年度に比べ4割減)まで落ち込んでいます。
法人二税の今後の動向は、景気の動向に大きく影響されますが、恒久的減税が実施されたことなどもあって、急激な増収は期待できない状況にあります。
Q40 経費削減や人件費抑制の措置だけではなく、税の滞納整理や県有財産の処分などにより、もっと歳入面で努力すべきではないですか。
A “税収確保、県有財産の売却・利活用を推進”
歳出抑制だけではなく、財政改革の4本柱の一つである「収入の確保」に向けた努力も不可欠です。このため、県税担当部門や県有財産管理部門それぞれに対策を講じ、収入確保に全力をあげています。
県税については、平成5年度から「県税滞納額縮減対策本部」を設置し、県税徴収確保対策5ヵ年計画(平成9~13年度)を策定し、滞納額の縮減を目指していますが、景気後退を受け、徴収率・滞納額ともに年々悪化しています。
<徴収率・滞納額の推移>
(3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
徴収率( % ) 97.9 97.3 97.2 97.2 97.2 97.2 97.1 97.1
滞納額 (億円) 49 59 62 61 65 70 72 74
また、県有財産の処分については、未利用財産の積極的な情報公開と公募入札制度の導入などを実施し売却や貸付けなどを行い、増収に努力することとしています。
(終わり)
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