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平成20年6月14日午前8時43分に岩手県内陸南部,深さ8キロメートルにおいてマグニチュード7.2(最大震度6強)の地震が発生し,多くの被害が生じましたが,地震発生から10年が経過し,平成30年度で民有林における災害復旧が完了しました。
県全体の主な被害状況は以下のとおりです。
震源に近い栗原市では,大規模な地すべりを始め林地崩壊等が多く発生し,農林水産業被害の約51パーセントが林業被害となりました。
【震度】6強:栗原市一迫
6弱:栗原市栗駒・築館・高清水・鶯沢・金成・志波姫・花山ほか
5強:栗原市若柳ほか
5弱:栗原市瀬峰ほか
【人的被害】383人(死者 14人,行方不明者 4人,負傷者 365人(重傷 54人,軽傷 311人))
【住居被害】1,902棟(全壊 28棟,半壊 141棟,一部損壊 1,733棟)
【被害額】1,095億2,467万6千円
うち農林水産業被害 596億1,664万4千円
うち林業被害 306億9,981万6千円(全体の28パーセント,農林水産業被害の51パーセント)
詳しい情報は宮城県復興・危機管理部復興支援・伝承課のホームページをご覧ください。
民有林全体で76箇所の林地崩壊が発生しましたが,そのほとんど(70箇所)が震源に近い栗原市の被害となりました。
特に,急峻な地形や脆弱な地質等により,この地震において発生した地すべり,山腹崩壊,渓流荒廃等の被害は,近年例を見ない大規模なものとなりました。
また,当時施工中であった旧花山村坂下地区では,作業員3名が山腹崩壊に巻き込まれ,犠牲となりました。あらためてご冥福をお祈りします。
坂下地区(旧花山村)の震災前後の状況
写真1 被災前(平成18年撮影)の坂下地区
写真2 地震直後の山腹崩壊状況
写真3 民有林直轄治山事業の対象となった耕英地域の荒廃状況
栗原市の10地区18箇所で被害が発生し,被害額は1億9,856万7千円となりました。
写真4 九度沢地区の谷止工被災状況(旧栗駒町)
栗原市を中心に3市で53路線180箇所で被害が発生し,被害金額4億8,117万6千円,復旧延長は約8.5キロメートルに及びました。
栗原市内でも,42路線において法面崩壊や路面亀裂が発生するなど大変な被害を受け,特に,旧花山村の金沢線では,数10mに及ぶ路面亀裂や法面崩壊による路体の喪失,橋脚のズレや擁壁の転倒が発生するなど甚大な被害を受けました。
写真5 法面及び路体が崩壊した林道金沢線(旧花山村)
特用林産施設被害が大きく,特に菌床しいたけやなめこ栽培施設の損壊や棚の倒壊,菌床等の落下といった被害のほか,炭窯の被害が発生しました。
写真6 菌床しいたけ生産施設における菌床落下の被害状況
被害状況及び写真については,「山地災害と復旧の記録~岩手・宮城内陸地震(平成22年3月宮城県林業協会)」より引用しました。
国有林においては,山腹崩壊箇所数2,322箇所,不安定土砂発生量約1億2,542万立米,荒廃面積は1,154ヘクタールと極めて大規模かつ広域的な被害となりました。
このうち,宮城県内の被害(全て栗原市)は,1,062箇所,不安定土砂発生量98,355立米,荒廃面積は733ヘクタールとなっています。
なお,国内における最大規模の地すべりとなった荒砥沢地すべり(幅約900メートル,斜面長約1,300メートル,最大落差約150メートル,面積約98ヘクタール)も国有林内で発生しています。
国有林内の被害状況等については東北森林管理局のホームページをご覧ください。
リンクはこちら。(岩手・宮城内陸地震に関する情報)(外部サイトへリンク)
写真7 荒砥沢地すべりの状況(旧栗駒町)(滑落崖最大落差約150メートル)
1 被害状況については,「山地災害の記録~平成20年岩手・宮城内輪地震(2009年3月林野庁東北森林管理局)」より抜粋しました。
2 写真については,「山地災害と復旧の記録~岩手・宮城内陸地震(平成22年3月宮城県林業協会)」より引用しました。
栗原市の民有林林地崩壊地等70箇所のうち,人家,農地,道路等のライフラインなどの保全対象からの距離等を考慮し,重要かつ緊急度の高い45箇所を治山事業対象地として,平成20年8月8日着手の鷹ノ巣地区(旧栗駒町)の応急工事をはじめとして復旧に取り組み,平成31年3月20日の西山沢地区(旧栗駒町)の完成をもって完了しました。
なお,復旧45箇所のうち,特に被害規模が大きく,高度な技術を要する4区域(耕英区域,日影森・洞万区域,温湯区域,浅布・本沢軽井沢区域)内の15箇所については,国から「迫川地区民有林直轄治山事業」として採択され,林野庁の直轄事業として復旧が行われきましたが,平成31年1月24日に完了記念式典が開催され,整備された治山施設が県に引き継がれました。
迫川地区民有林直轄治山事業完了記念式典の状況についてはこちら。
残り25箇所については,3箇所が県土木部所管事業により復旧されたほか,22箇所はその後の植生の回復により自然復旧が図られています。
今後は,整備された治山施設について定期的に点検等を行うとともに,必要に応じて新たな災害の未然防止のための施設整備を行っていきます。
県営事業による復旧状況写真
坂下地区 (旧花山村) |
写真8 山腹崩壊の状況 |
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写真9 復旧工事の施工状況(法枠工) |
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写真10 復旧工事完了後の状況 |
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九度沢地区 (旧栗駒町) |
写真11 山腹崩壊の状況 |
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写真12 復旧工事完了直後の状況(山腹基礎となる土留工が完成し,山腹は整形・緑化を実施) |
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笹ケ森地区 (旧栗駒町) |
写真13 山腹崩壊の状況 |
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写真14 復旧工事完了直後の状況(法枠工,右下には奈良時代の遺跡が確認され,保全されている) |
迫川地区民有林直轄治山事業による復旧状況写真
温湯区域 (旧花山村) |
写真15 山腹崩壊の状況 | |
写真16 落石被害の状況 | ||
写真17 復旧工事完了直後の状況(落石防止柵付き土留工) | ||
浅布・本沢軽井沢 区域(旧花山村) |
写真18 山腹崩壊の状況 | |
写真19 復旧工事完成直後の状況(法枠工など) |
治山施設災害の18箇所については,平成20年12月12日着手の軽井沢(旧花山村)及び細越本沢(旧栗駒町)をはじめとして復旧に取り組み,平成22年度には全ての箇所で復旧が完了しました。
温湯地区 (旧花山村) |
写真20 落石防止柵の被災状況 | |
写真21 施設復旧状況 | ||
九度沢地区 (旧栗駒町) |
写真22 谷止工の被災状況 | |
写真23 施設復旧状況(天端で3.6メートル増厚されている) |
林道施設の災害復旧は管理者である栗原市により実施され,31路線84箇所が,平成21年度までに完了しました。
天狗森線 (旧花山村) |
写真24 被災状況 | |
写真25 復旧完了状況(擁壁により路体を復旧し,上部法面は植生基材吹付により緑化) |
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金沢線 (旧花山村) |
写真26 被災状況(法面と路体が崩壊した) |
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写真27 復旧完了状況(線形を変更して復旧) |
各生産団体が復旧を進めた結果,主たる生産品目である「しいたけ」や「なめこ」の平成20年次生産量は,震災前(平成19年次)とほぼ同量となっています。
生しいたけ生産量(栗原市) 平成19年次 約443トン 平成20年次 約552トン(前年比約125パーセント)
なめこ生産量(栗原市) 平成19年次 約581トン 平成20年次 約479トン(前年比約82パーセント)
写真については,「山地災害と復旧の記録~岩手・宮城内陸地震(平成22年3月宮城県林業協会)」より引用しました。
宮城県の国有林野を管轄している東北森林管理局では,震災直後からヘリコプターによる被害状況調査の実施や学識経験者による「岩手・宮城内陸地震に係る山地災害対策検討会」の設置と復旧計画の検討を行い,緊急性の高い箇所は平成20年度中に対策工事に着手し,以降,順次着手・完成しています。
しかしながら,被害状況のとおり,極めて大規模かつ広範囲の被害であるため,今なお復旧対策が実施されています。
国有林の復旧状況については,東北森林管理局のホームページをご覧ください。
リンクはこちら。(岩手・宮城内陸地震に関する情報)(外部サイトへリンク)
復旧状況については,「山地災害の記録~平成20年岩手・宮城内陸地震(2009年3月林野庁東北森林管理局)」より引用しました。
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