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蝟の文字は「ハリネズミ」の意味で、ハリネズミの毛の様に無数のものが1カ所に集まっていることを蝟集と言い、多くの魚が魚礁に集まる様子を表している。
新しい塩分の定義(実用塩分1978)では、塩分は電導度の比率のみによって無次元量として表される。従来の定義(「海水1kg中に含まれる固形物質の全量をg数で表したもの」)による塩分(%)は絶対塩分と呼ばれる。
新しい定義による塩分(実用塩分)は、32.4356%のKCl溶液を基準に用い、15℃1気圧下で、この溶液と試水との電導度の比で示される。このKCl溶液は、旧塩分定義の35.000%の標準海水と15℃、1気圧において電導度が等しくなるよう定められている。
この新しい定義は1982年1月1日以後発表されるデ-タについて運用するようユネスコから勧告された。
貝類のもつ毒の総称である。貝類は餌料であるプランクトンを摂餌するとき,各種プランクトンを選択して摂餌することができないため,一般的な無毒の餌料である珪藻類とともに有毒な渦鞭毛藻類をも取り込む。このときに貝類がもつ特殊な器官である中腸腺などに毒が蓄積されることで貝類毒化が起きる。また,毒を蓄積して毒化した貝類は,外観上は毒化していない貝と全く区別ができないため,人間が不用意にその貝を食べると中毒になり,その毒の種類に応じて様々な症状があらわれる。
貝毒の種類としては,下痢性貝毒,麻痺性貝毒が日本では一般的であるが,このほかに神経性貝毒,記憶喪失性貝毒が主に欧米で認められている。
〔宮城県での動き〕・下痢性では1976年に本県でムラサキイガイから食中毒が発生して以来,また,麻痺性では平成5年にマガキやアサリ等で発生して以来,毎年のように両貝毒とも発生している。
海域や湖沼の汚染の度合いを示す指標で、水中の有機物などの汚染源となる物質を過マンガン酸カリウム等の酸化剤で酸化するときに消費される酸素量(mg/l)を表したもの。
測定方法には、酸性法およびアルカリ法の2方式があり、この2方式にもJIS法をはじめ各種の方法がある。水産分野では、塩素を主体とするハロゲン物質の存在から、海水に対して従来からアルカリ法による測定が実施されている。
数値が大きいほど汚染が進んでいることを示し、水産用水基準では、「(1)一般の海域では、COD(アルカリ性法)は1mg/l以下であること。(2)ノリ養殖場や閉鎖性内湾の沿岸域では、COD(同)は2mg/l以下であること。」となっている。
人間が毒化した二枚貝類を食したとき,主に下痢や嘔吐等の症状が現れるため,この症状から命名された貝毒の一種である。我が国では1976年に宮城県産のムラサキイガイによる食中毒が発生した後,初めて確認された。毒の産生は渦鞭毛藻類のディノフィシス属によるが,その主な原因種はディノフィシスフォルティーとされている。なお,下痢は水様便で,ほぼ3日で全快し,死亡例はない。また,毒の種類はディノフィシストキシンやオカダ酸等であるが,この毒は脂溶性であり水に溶けず,かつ,加熱しても減毒しない。
〔宮城県での動き〕・これまで下痢性貝毒で毒化した二枚貝の種類は,ホタテガイ,ムラサキイガイ,アズマニシキ(通称:アカザラガイ),アサリ,ウバガイ(通称:ホッキガイ),マガキの6種類である。
水域の清濁の程度を示す指標としては、透明度、濁度および懸濁物質量があるが、現在では主に懸濁(浮遊)物質量としてSS(mg/l)で表示される。
水産用水基準では、海域について「(1)人為的に加えられた懸濁物質は2mg/l以下であること。(2)海藻類の繁殖適水位において、必要な光度が保持され、その繁殖、生長に影響を及ぼさないこと。」となっている。
懸濁物質(泥等)は、魚類(特に浮魚)の行動、介類の殻開閉運動、濾水量、海藻類の光合成、遊走子の遊泳、着定密度、基盤着生後の生残等に影響を及ぼす。
溶液中での水素イオンの濃度の指数をいい、濃度の対数の逆数から求める(pH=-log[H+])。pH=7で中性、pH<7で酸性、pH>7でアルカリ性である。ペ-ハ-、ピ-エイチと略称する。
水産用水基準では、「(1)河川および湖沼では6.7~7.5であること。(2)海域では7.8~8.4であること。」となっている。
植物の同化作用が盛んに行われている時、相当アルカリ側を示すことが内湾などで観測されている。
有機性浮遊物等が底泥上に沈降し、その分解によって酸素が消費されて還元状態になると、硫酸塩還元細菌の増殖によって硫化水素(H2S)が発生し、これが底質中の金属等と硫化物を生成する。このため底質が悪変し、底生生物の生息に対して影響をあたえる。さらに状態が悪くなると、底質から上層の水に対して二次的な汚染がおこる場合もある。遊離硫化物と結合硫化物との和を全硫化物としている。
水産用水基準では、「海域では、乾泥として硫化物0.2mg/g以下であること。」となっている。また北方海域の正常泥の基準については、水温が低く酸素消費速度が遅いため、東京湾以西より高めの値(TS 0.5mg/g乾泥程度)を設定しても良いとの考えもある。
水産では貝毒量を現す単位で用いており,1MUとは,体重20gのマウスを一定時間で死に至らしめる毒量をいい,その時間は下痢性の場合が24時間,麻痺性の場合が15分間である。
例えば,麻痺性貝毒の規制値である4.0MU/gは,1g中に体重20gのマウス4匹を死亡させる毒量。
なお,MU/gは,マウスユニットパーグラムと呼ぶ。
アレキサンドリウム属やギムノディニウム属の渦鞭毛藻類の生産する毒を補食した二枚貝に移行し,蓄積されるために起こる神経性の食中毒。北米等では古くから知られていたが,日本でも近年では,全国各地で発生がみられている。毒の種類はサキシトキシン,ゴニオトキシンやその誘導体であるが,この毒は水溶性であり水で調理する場合注意しないと,毒化しない部位や貝にも毒が拡散する恐れがある。また,この毒は強い生理作用があり,フグ毒と似た症状を示し,運動神経麻痺から呼吸困難になり最悪の場合には死に至ることもある。
〔宮城県での動き〕・平成5年にマガキやアサリ等で発生して以来,毎年のように発生がみられる。これまで麻痺性貝毒で毒化した二枚貝の種類は,マガキ,アサリ,ムラサキイガイ,コタマガイ,アカガイの5種類である。
食中毒の原因となる貝毒問題に対処するため,食品としての安全性を確保するとともに適正な貝類養殖業の推進を図りながら,食品衛生法及び各種通達に基づき貝類の採取,出荷並びに加工処理に関する事項を定め,生産業者自ら出荷等を管理する措置。
略して管理型漁業ともいう。従来の漁獲だけを考えた漁業が資源に悪影響を与えた多くの事例を教訓とし,海域の自然条件と対象生物の生態を把握し,地域資源の合理的利用を漁業管理,漁場管理を通じて行い,収益を最大かつ安定・永続的に得ようとする形態をいう。
仙台湾ではアオメガレイといわれる。カレイ科ツノガレイ属に分類され、宮城県で漁獲されるカレイで最も量,金額が多い重要魚種であるが主要魚市場の暦年の水揚統計の整った平成7年~10年の漁獲量は330~360tで横這い傾向である。水深20~50mの底質が砂泥の海域で分布が多い。雌は最大で全長55cmに達する。産卵期は本県海域によっても異なっており,牡鹿半島南部は12月下旬~1月上旬に集中している。牡鹿半島以北は1月中旬~3月上旬にかけて産卵個体がみられる。複合的資源管理型漁業促進対策事業で資源管理対象魚種として調査事業を実施している。
仙台湾ではアカジガレイといわれる。マコガレイと同様,カレイ科ツノガレイ属に分類され、マコガレイに似るが,背鰭、尻鰭の縁辺部が黄色になっていることから容易に区別できる。本県主要魚市場の暦年の水揚統計の整った平成7年以来水揚量は増加しており,平成10年は150トンに達している。水深40~100mの底質が粗い砂の海域で漁獲が多い。
マコガレイほど大きくならず、雌の最大全長は40cm程度である。産卵期は3月~6月にわたっている。複合的資源管理型漁業促進対策事業で資源管理対象魚種として調査事業を実施している。
カレイ科イシガレイ属に分類され、平成7年~10年の漁獲量は、100t前後とマコガレイ同様、横這い傾向である。水深10~80mの底質が粗い砂の海域で漁獲が多い。成長は良く、雌の最大全長は70cmに達する。産卵期はマコガレイ同様12月下旬から1月上旬である。複合的資源管理型漁業促進対策事業で資源管理対象魚種として調査事業を実施している。
カレイ科マツカワ属に分類される。水揚量は極めて少なく本県主要魚市場の平成7年~平成10年の水揚量は3~4トンとなっている。本県で水揚げされるカレイ類中,最も単価が高く,平成10年の平均単価は5,300円/kgとなっている。このため,ヒラメに続く栽培漁業対象種として注目されており,本県では平成7年から放流技術対策事業で種苗生産技術開発に取り組んでいる。平成11年にはサイズ73~104mmで4万尾を放流することに成功している。成長は早く,雌雄とも1年半で30cmに達し、雌は最大で全長は70cmになる。産卵期は12月下旬から1月中旬である。
本県での水揚量は300~500トンで年によって変動がある。牡鹿半島以南での漁獲が90%を占め、その内、表浜漁業協同組合でのアナゴ筒(本県ではハモ胴といわれる)によって水揚げされる割合が多く,60%を占める。成熟個体はこれまで発見されておらず,産卵場は不明である。本県沿岸には透明で葉のような形をしたレフ゜トセファルス(葉形仔魚)で3月下旬~6月下旬にかけて来遊する。このため,資源量は来遊量の影響を受けると考えられている。
7月以降に普段目にするアナゴの形に変態する。複合的資源管理型漁業促進対策事業で資源管理対象魚種として調査事業を実施している。
水産資源を管理し,安定した漁獲を永続的に得るためには,対象生物の再生産関係,成長,成熟等の特性を明らかにすることが重要である。また,現在の漁業の状態を把握し,適切な漁業規制を実施し,その効果を評価することが必要である。このような目的のために各種漁獲データ,調査データの解析を行うことを総称して資源解析という。
資源解析を行う場合に用いる対象生物各種の資源パラメータの値で,成熟年齢,成長曲線,漁獲加入年齢(漁獲され始める年齢),最高年齢(寿命),自然死亡係数,漁獲死亡係数,再生産曲線(親子関係)がその例である。
特定の水産資源につき、資源動向や社会経済的要因を勘案して、漁獲が許される上限量をいう。基本的には、生物の再生産量の範囲内で計算される。また、国連海洋法条約においては、EEZを設定した場合にTACを定めることとされている。
海洋法に関する国際連合条約(国連海洋条約)は、国連の海底平和利用委員会及び第3次国連海洋法会議における交渉の結果、昭和57年12月に採択され、平成6年11月16日に発効した条約であり、領海・排他的経済水域・大陸棚・深海底の鉱物資源・海洋環境の保護等、海洋に関する諸問題を網羅して規律していることから、海洋に関する最も基本的な条約となっている。
このなかで、水産業にとって非常に重要なのが、(1)排他的経済水域(EEZ)の設定と、(2)漁獲可能量(TAC)の設定であり、両者は条約によって生じる裏表一体の権利と義務になる。
我が国漁業で利用している魚種は600~700種にも及ぶと言われており、国がこれらすべての魚種について漁獲可能量を決定し、管理を行うことは不可能である。また、特定海域にのみ存在しており、知事管理漁業によって概ね利用され、これら漁業を管理することによって適切な管理が可能な多くの海洋生物資源が存在している。このため、特定海洋生物資源以外の海洋生物資源についても、当該資源の保存及び管理を図るため、都道府県知事が自主的な判断で年間の漁獲限度量を定めることができるよう規定されており、これが「指定海洋生物資源」の制度である。
なお、都道府県知事が指定海洋生物資源を定めようとする場合には、指定海洋生物資源及び適要される海域を都道府県の規定で定めることとなっている。
漁獲可能量(TAC)を定めるための科学的根拠として、対象魚種の資源評価に基づいて生物学的に許容される漁獲量を国の研究機関が中心となって提案する。各県の試験研究機関は、委託調査により資源評価に必要な資料を収集して関係機関に報告するよう義務づけられている。ABCは国と各県試験研究機関から成る魚種別・地域別のブロック資源評価会議で協議され、国の研究機関で構成される全国資源評価会議で決定される。ABCα(資源の理想的水準を維持する漁獲量)、ABCβ(現状の資源水準を維持する漁獲量)、ABCγ資源を崩壊させない最低の資源水準を残す漁獲量)の3種があり、ABCはα~βの間で決定され、行政側に提案される。
排他的経済水域等のおいて、漁獲可能量を決定することなどにより、保存及び管理を行うことが適当である海洋生物資源であっても政令でさだめるものをいい、特定海洋生物資源として指定した魚種については、漁獲可能量(TAC)を決定し、漁獲可能量に基づく管理を行うこととなる。
採捕量・消費量が多いことから、適切な資源管理措置を講じないと国民生活上又は、漁業上重大な影響を生じる恐れのある魚種
具体的には、現在、サンマ・スケトウダラ・マアジ・マイワシ・サバ(マサバ及びゴマサバ)・ズワイガニ・及びスルメイカの7魚種が特定海洋生物資源として指定され、漁獲可能量(T-AC)が定められている。
主要魚種の資源評価を迅速にかつ適性に行う為の中核となるデータベース及びデータ解析システムで、平成7年度に国が構築した。国・県の水産試験研究機関および漁業情報サービスセンターが参加して全国ネットワークシステムを構成し、国からの委託により、各県が「我が国漁業資源調査」(H12より「資源評価調査」に事業名が変更)で得られたデータを入力・転送し、漁業情報サービスセンターが運用管理している。当初はfresco1としてとして、体長測定データや漁場分布調査結果など生物情報が主体であったが、平成11年度から海洋観測資料を流通させる目的でfresco2が同一システムを用いて運用開始された。
fresco2は、プログラム上の問題から未だ十分機能しておらず、改良が待たれている。端末は、平成12年度に更新される予定である。
遊泳能力が高く、太平洋や大西洋などの大洋全域を回遊範囲とする魚種をいう。海洋法条約では、これらの生物の保存は一国だけの対応では不可能であり、200海里水域の管轄対象から除外して国際機関による管理にすべきであるとし、またその魚種としては、マグロ類全般、サンマ類、シイラ、外洋性サメ類、鯨類であるとしている。
魚類の内耳にある石灰質の結晶の総称で単に耳石という場合は最大の扁平石を指す。主成分は炭酸カルシウム(円口類ではリン酸カルシウム)の結晶で、これに若干の有機物が含まれる。形状は種によってもまちまちで、概して底魚類で大きい傾向がある。感覚器官の一要素であるが、有機・無機成分比の差に起因する透明帯と不透明帯の発現に周期性があり、年齢や日齢などの齢査定の形質としても使用される。
200海里体制への移行に伴う遠洋・沖合漁業の漁場の喪失、漁場経営危機の克服のための資源の効率的利用、漁獲努力量の縮減の必要性などのため、各種漁業の漁船隻数の大幅な削減により再編成をはかったことを減船と称している。極く最近の例では、平成10年10月にFAO(国連食量農業機関)における政府間会合で、遠洋マグロはえ縄漁船の過剰漁獲能力削減の行動計画が採択されたことを受け、全国の約2割に相当する減船が実施された。
加入量が極端に多い年級群のことで、この年級群は漁獲物の年齢組成において極端に高い頻度を示すことで知られる。
漁業の対象となる魚種に混じって他の魚などが一緒に漁獲されることをいう。一般には特に問題とはならないが、資源管理のために漁獲量を制限している魚種を混獲する場合に問題となる。
また同一種でも体長制限などがある場合やはり混獲が問題となる。さらに日米間では北米系サケ類のほか、イルカ、オットセイ、サメ、海鳥など魚類以外の混獲問題が多発している。
海洋観測で用いられる代表的なもので,電気伝導度・水温・圧力の3つ,あるいは酸素を加えた4つのセンサーにより,これらの値を鉛直方向に連続的に測定する測器。ADCP(Acoustic Doppler Current profiler;超音波式ドップラー流向流速計)。
船底部に取付けた送受波器から一定時間幅で発射された超音波が,海中のプランクトン・非生物粒子等の自己遊泳能力がなく流れに流される浮遊物により反射されて船底部の送受波器に戻ってくる。この時,海中での音速がわかっているので,戻ってくるまでの時間から水深,また戻ってきた超音波の周波数からその水深での流向流速がわかる。
大洋の海水は鉛直的には水温躍層によって暖水圏と冷水圏に分けられ,各々の水温は比較的一様である。また,水平的に見ても広い範囲にわたり水温・塩分等の特性があまり変わらない海域がある。このように比較的均質な海水の広がりを水塊という。1つの水塊から他の水塊への移り変わりは比較的急激で,強い海流や複雑な渦流が見られることがある。
局所的な表面の流れの収束線を潮目という。泡沫,流れ藻,木片などが集積していたり,鏡のような海面に細波が立っていたりするので,肉眼でも識別できる。ほんのわずかの距離で水温が数℃も変化することがある。潮目は異なった水塊の境界に形成されることが多く,好漁場が形成されることが多い。
夏季のように表面水温が上昇したり降雨により表面塩分が低下すると,表層の密度が下層に比べて著しく小さくなり,上下の水の混合が妨げられる。このような躍層は,主に3~8月の太陽熱の吸収により発達する。9月以降は海面が冷却され,対流による上下混合や風の効果のため等温化が下層に及び,水温躍層は消失する。
何らかの要因で,下層(深層)の水が上層へ引上げられる現象をいう。湧昇によって,栄養塩に富んだ下層水が上昇してくるので,湧昇域では生物の生産性が高く,好漁場となることが多い。
河口沖合や陸水流入の多い湾の入り口付近,海峡等に発生しやすい。上層水と下層水との間に密度躍層が発達し,しかも上下層水がそれぞれ異なった流れ方をしている状態をいう。異なった海流(親潮と黒潮等)の接触域にも発達することがある。二重潮が起こると,巻網,曳網等の漁業の操業が阻害されたり,網が破損したりする。
塩素量が分かっていて,塩分測定の標準として用いられる海水をいう。標準海水は北大西洋中央部で海水を採取し,濾過,有機物分解濃度調整等の処理を行なった後,直径45mm,内容積230mlのガラスアンプルに封入して厳密に検定され,塩素量が記されている。
塩分の単位。
海水1kgに含まれる固形物の全量を「g」であらわしたものを塩分という(ただし,すべての炭酸塩は酸化物に変え,臭素,ヨウ素は塩素で置換し,有機物は完全に酸化する)。千分率「‰(パーミル)」で通常示される。
しかし,近年になって電気伝導度を測定して塩分を求める方法が一般化し,これにより求めた値には「PSU」の単位が用いられる。従来の方法により求めた値と,伝導度により求めた値は,実用上はほとんど等しい。
日本近海を流れる代表的な寒流。栄養塩に富み,魚類をはじめとした生物資源を育てるという意味からつけられたといわれる。塩分は黒潮に比べて低い。親潮は,三陸を南下する位置によって,142~143°E付近を南下するものを親潮第1分枝,その沖合146~147°E付近を南下するものを親潮第2分枝と呼んでいる。
日本近海を流れる代表的な暖流。黒潮の流速は,主流部で3~5ノット(5.5~9.3km/h)程。数百mの深さでも1~2ノット(1.9~3.7km/h)程度の流速があり,1秒間に数千万tもの流量の水を運んでいると推定される。
測深,採泥,水温・塩分測定,測流をはじめ,透明度,水色,波浪,プランクトンネットによる採集,クロロフィル測定,栄養塩測定など多岐に及ぶ。海洋観測の種類には,1地点で長時間にわたり観測する定地観測,所定の観測線に沿って行なう定線観測等に分けられる。
現在,海洋研究調査に従事している日本国内の機関には,水産庁の海区水産研究所,都道府県水産試験場,海洋保安庁水路部および9管区保安本部水路部他の官庁,大学の水産関係学部,海洋学部,水産高校などがある。
生物が正常な生活を営むのに必要な塩類の総称。海水中においては、微量成分のうちの珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、アンモニウム塩などが植物プランクトンや大型藻類の生育に必須である。一般に微量しか存在しないが、海洋における一次生産力を支配する因子として重要な位置を占める。
ノリ養殖業においては、燐酸態燐、三態窒素(アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素)が製品の品質に深く関係しており、これらの海水中における濃度が減少するとノリ葉体の色調が薄くなって価格に影響する。また、これらの濃度は気象海況によって大きく変動し、主に降雨による陸水の流入、親潮系水の接岸、時化による海底の撹拌等によって供給される。また,親潮には栄養塩に富むことが知られている。
任意の時間当たりの生物生産の量のこと。生産力ということもある。植物プランクトン等による一次生産に関しては,光合成速度を総生産速度,総生産速度から呼吸速度を差引いたものを純生産速度という。
光合成生物の葉緑体に存在する色素で葉緑素ともいう。クロロフィルa,b,c,d等の種類がある。海中に生息する植物プランクトンにはクロロフィルaが最も多く含まれており,植物プランクトン量を色素量で示す場合によく用いられる。
褐色植物の一鋼で,細胞壁が高度に珪酸化された特殊な形態の藻類。淡水にも海水にも見られる代表的な植物プランクトンで,細胞が左右相称の羽状類,放射相称の中心類に分けられる。
細胞の凍結保存をおこなう際、培養液中に添加することで細胞の凍結傷害を軽減する働きのある物質をいう。細胞の種類により効果的な凍害防御剤は異なるが、グリセリン、ジメチルスルホキシド(DMSO)や糖類を用いる。
主に動物において蓄積されるホモ多糖類。グリコーゲンは体内のエネルギー保存および活動エネルギー供給の役割を果たす。卵や精子の原料としても役立つ。マガキをはじめとする貝類は多量のグリコーゲンを蓄積し、食したときの甘味を呈する源である。
水圏の基礎生産を担う生物集団。わが国各地の海産魚介類種苗生産機関では珪藻類、ハプト藻類、真正眼点藻類、プラシノ藻類および緑藻類に属する約12種の浮遊性微細藻類が培養され、各種種苗の初期餌料として利用されている。
マガキは夏季にかけて性成熟し、一気に大量の生殖細胞が放卵・放精として体外へ放出される。このあと生殖巣内に残存する生殖細胞は体内の生理機能により分解される。このような放卵・放精後の状態を肉眼的に見たとき、軟体部全体が透明に見え、水ガキと呼ぶ。冬季にかけて生殖活動が休止し、再びグリコーゲンや脂質を貯蔵し始めると軟体部は不透明となり、肥満状態を示す。
夏季の産卵期に放卵・放精が正常に進まず、冬季のむき身出荷開始時期まで生殖巣が発達した状態が継続しているマガキをいう。これはむき身出荷時の品質低下の原因の一つとなる。
在来の集団の中に含まれている特定の特性を選び出して新品種あるいは系統を作り出すことをいう。選択の方法には、個体選択、集団選択、家系選択がある。
n個の交配親について総当たり的に正逆交配をおこない、F1の能力を調べ、各交配親における遺伝子の分布状況および組合せによって生じる能力などを推定するための交配方法。
個体の形質は、個体間の差異が不連続でクラス分けの形で区別できる場合と、連続的な変異として把握される場合があり、前者を質的形質、後者を量的形質という。質的形質には奇形、血液型、酵素の変異(アイソザイム)があり、量的形質には体長、体重、生産量などがある。
同じ基質特異性(ある物質のみを分解、合成する能力)をもち、異なった分子構造(アミノ酸配列)をもつ酵素、蛋白質のことをいう。
体細胞の染色体は、数や形が種によって一定で、配偶子の染色体数(n)の2倍の染色体数(2n)を有し、それぞれの生物の生活機能を保つ上で欠かせない染色体の1セットをゲノムという。この1組の染色体数を基本数として、1倍性(半数性)、2倍性、3倍性、4倍性と分類される。
細胞分裂に先立ち、染色体(DNA)の複製が起こるが、細胞分裂を人為的に阻止することで細胞内の染色体数(DNA量)を倍加することができる。倍数化は魚類では第2成熟分裂、貝類・甲殻類では第1または第2成熟分裂時に極体の放出阻止によってされることが多い。倍加処理としては化学的手法(サイトカラシンB溶液への浸漬など)、物理的手法(加温、加圧など)等がある。
測定できる表面にあらわれた形質を表現型といい、求められた分散を表現型分散と呼ぶ。表現型分散は遺伝分散と環境分散に分けられる。表現型分散に対する遺伝分散の比は、集団中の変異のどれだけが遺伝的要因によるかを示す値で、遺伝率と呼ばれる。遺伝率の高い形質は人為選択効果が早くあらわれ、選択の方法としては個体選択にむき、低い形質は家系選択による方法がよいとされる。
食品の機能には、身体の構成、エネルギー源としての栄養機能(1次機能)、味覚、嗅覚などに関わる感覚機能(2次機能)の他に、生理活性物質などがもつ生体調節機能(3次機能)がある。生体調節機能をもつものを機能性食品という。
天然礁とは海底から突き出た岩山等のことを言い、海の中では陸上でいう森や林の役割を果たしている。海水の流れを変えたり、餌を供給したり、隠れ場所を提供するなど、魚介類が生きていくために必要な環境を整えている。
天然礁と同じ機能を発揮する様にコンクリートブロックや鋼製の人工構造物を海底に設置したもの。その形や大きさは様々なものがあり、最大では高さが35mの鋼製魚礁もある。その規模や目的により複数を組み合わせて一つの人工魚礁とする。
水中ビデオカメラに上下左右に動くためのスクリュ-がついており、自力で水中を航行しながら撮影ができる装置。ケーブルで船上の電源やコントロ-ラ-、ビデオやモニタ-とつながれている。ダイバ-に比べ深いところや長時間の調査が可能なので、人工魚礁の調査によく使われる。現在は500m以深まで潜行可能なものも市販されている。水産研究開発センターには最大潜航水深100mのものと300mのものとがある。
カーナビゲーション等に用いられている従来のGPSは、人工衛星からの信号だけで位置を計算するために誤差が最大で100m以上あったが、DGPSは位置が既知の地上局(東北太平洋岸では金華山)からの信号も受信することにより、誤差が数m以下になり、人工魚礁等の位置を正確に示せる様になった。
天然で発生する養殖・放流用水産生物の幼稚仔(稚魚、稚貝)や胞子などを採取すること。栽培漁業センター等の種苗生産施設で行われている人工採苗に対する語。ウナギやハマチ等の稚魚は網で採取されるが、カキ、ホヤ等の付着性の動物や藻類は貝殻や人工繊維などに付着させて確保する。天然採苗は幼生の発生時期や集積が自然環境に支配されるため不確定な要素が多い。そこで、水産研究開発センタ-や気仙沼水産試験場では、カキやホタテガイの浮遊幼生の発生状況や分布を定期的に調査し、採苗業者に情報提供を行って採苗の安定化を図っている。
卵からふ化し、独立生活をするようになった動物の子供のことで、成体とは形態が著しく異なっている場合に用いる。カキやホタテガイ等の二枚貝類の場合はふ化後、間もなくアルファベットのDの形をした殻を持った幼生になり、D型幼生を呼ばれる。その後、2~3週間の浮遊生活を経て足を持つようになると着底生活や付着生活に移行するようになり、この時期の幼生を成熟幼生と呼ぶ。養殖対象種の有用二枚貝類の種苗を天然で確保するためには、成熟幼生がいつ、どこに高密度で分布するかを見極めなければならず、水産研究開発センタ-や気仙沼水産試験場では、浮遊幼生の分布調査を定期的に行い、採苗業者に情報提供を行っている。
魚貝類の産卵やふ化の適温範囲において、水温と産卵・ふ化までの日数との積で、ほぼ一定の値を示す。本県の重要養殖種であるカキの場合、春になって海水温が10℃以上になってから生殖細胞の分裂・増殖が盛んになることから、10℃を基準値θとし、以下の式により日々の海水温を積算してT=600℃を産卵開始の目安としている。
カキの養殖用種苗のことで、主にホタテガイの貝殻等に付着させた稚貝のこと。夏の産卵期に海中に付着基質(原盤)を垂下して、それに浮遊幼生を付着させて採取する。付着基質としては、ホタテガイの殻の中央にドリルで穴を開け、長さ2mの針金に60~80枚を通し、殻が密着しないように2~3cmの塩化ビニル管を間に挟み込むんだものを使用している。これをカキの浮遊幼生の発生・成長・集積状況を観測しながら、付着のピーク時を狙って一斉に投入(垂下)する。付着後は内湾の棚に移殖し、干出を与えながら弱い個体を淘汰して丈夫な個体に仕立て上げる。この作業を「抑制」という。
本県では主に石巻湾で生産されており、県内の他地域をはじめ、北海道、岩手、三重、新潟、岡山、福岡等の他県へも出荷され、各地のカキ養殖を支えている。かつてはフランスやアメリカにも出荷され、本県の重要な輸出産業でもあった。
カキの消化器官内に存在する大腸菌をはじめとする細菌類を塩素や紫外線等により滅菌した清浄な海水を吸わせることにより食品としての安全性を確保するもの。カキはむき身すると、鰓で呼吸は行うものの、体内に海水を積極的に取り入れないので、殻付きのまま浄化しなければならない。本県沿岸のカキ漁場は基本的には清浄海域*であり、浄化しなくてもカキが生食用として出荷することができる。
* 食品衛生法第7条に基づく生食用カキの成分規格及び宮城県生カキ取扱いに関する指導指針により、カキの採取海域が海水100ml当たり大腸菌群最確数70以下、カキのむき身の細菌数が1g当たり50,000以下、大腸菌E.coli最確数が230以下であることが確保されなければならない。なお、生食用殻付きカキに関しては浄化が義務付けられている。
他県においては、広島、三重、岩手の各県で古くから浄化が行われているが、その目的や手法はそれぞれ異なる。少なくとも三重や岩手では安全性の確保より、品質向上による付加価値を目的としている。本県では上記のように浄化の義務付けはないが、近年、海域によっては生産期直前に基準を満たさなかったり、生産期間中でも突発的に基準を上回る値がしばしば記録されるようになってきている。また、O-157等の病原性大腸菌やSRSVによる食中毒事件の頻発やHACCPの普及による国民並びに大手量販店の食品に対する安全性の意識が高まっているため、本県においても浄化施設を導入するカキ処理場が多くなってきている。
広島県の生食用カキや宮城県の生食用殻付きカキに関しては、カキ(殻付き)1,000個当たり毎分12リットル以上の清浄海水を22時間以上かけ流して浄化することと定めれているが、浄化の義務がない本県の生食用カキ(剥き身)に関しては浄化の基準が定められていない。現在、水産研究開発センタ-では宮城県産のカキに適した浄化手法を検討するため、浄化時間や滅菌海水の流量に関する種々の実験を行っている。
水深5~10mの岩礁域に形成されるアラメ・カジメ・ワカメ・コンブ類や、より浅所の岩上のホンダワラ類及び内湾の波の静かな砂地に生育するアマモ類は比較的大型で密に生育し、海中であたかも陸上の森林のような群落(海藻群落)を形成しており、藻場と呼ばれる。藻場は沿岸の魚介類にとり産卵や幼稚仔の生育の場として重要であり、特にアマモによる内湾の藻場をアマモ場、ホンダワラによる岩礁域の藻場をガラモ場と称している。また、ホンダワラ類は初夏になると岩上からちぎれ流れ藻となる。流れ藻は回遊魚の幼稚魚等の生育の場として重要である。
本県沿岸を含む三陸沿岸から鹿島灘にかけての岩礁域では、季節的な変動や海況による年変動があるものの、一般的に潮間帯(高潮線~低潮線の間)下部から水深7m付近まではアラメ群落が優占群落を形成している。アラメ群落の下部では小型の多年生海藻が比較的多く見られ、さらに深所では、直立する大型海藻がほとんど見られず、無節サンゴモ群落のみが岩礁に広がっており、サンゴモ平原とよばれている。このように浅所から深所にかけて、それぞれの海藻群落が帯状構造をなしているのが、この地域での一般的な景観と考えられる。
藻場を形成する大型の海藻種のうち、水深5~10mの岩礁域に形成されるアラメ・カジメ・ワカメ・コンブ類群落は、アワビやウニなどの主要な餌料海藻として重要な位置を占めている。これらの海藻については、人間の食料としての観点からの研究がなされ、養殖技術も確立されている。この技術を餌料海藻の海中林を造成する技術として応用し、アワビやウニの生息場所や海藻類の着生基盤を造成する漁場改良技術とも併せて体系化し、好適な餌料海藻に乏しい状況になった磯根漁場の生産性の向上を図りろうとするのが海中造林技術である。
沿岸岩礁域の藻場が海況の変化などの自然の生態学的要因により衰退してサンゴモ平原が浅所まで拡大し、藻場を構成するアラメ・カジメ・ワカメ・コンブ類を主要な餌料海藻とするアワビ・ウニなどの沿岸磯根資源が減少することによって、この区域を漁場とする採介漁業に被害が発生する「産業的な現象」を言う。
学術的には硬骨魚類のサケ目・サケ亜目・サケ科に属する一群の魚類で、サケ属・ニジマス属・イワナ属・イトウ属の4つがある。国内でさけます類といえば普通はこのうちサケ属をさし、シロサケ以外の魚種をますと言い習わしている。シロサケ以外には、カラフトマス、サクラマス、ベニザケ(ヒメマス)、ギンザケ(ぎんます)、マスノスケ(すけます)がいる。本県で天然繁殖したことのある魚種はしろさけとさくらますの2種類である。
この法律により、特にしろさけ資源の保護培養に関して、農林水産大臣がさけ及びますの人工ふ化放流を実施すること、さく河魚類の通路の保護及び内水面でのさけの採捕の禁止(罰則規定あり)が規定されている。
遡河性魚であるしろさけは、繁殖のために生まれ育った河川(母川)に回帰する習性があり、これを利用してさけ稚魚人工ふ化放流事業が実施されている。さけの繁殖保護自体は江戸時代から記録されているが、現在では、既に河川の改修・水質の変化などにより、国内では天然で繁殖して資源を維持できる条件を欠いており、そのためには人による管理が不可欠となっている。昭和40年代以降、ふ化したさけ稚魚に餌を与え、人工の飼育池で降海する時期まで保護育成するようになってから、さけ親魚の回帰数量が増加し、栽培漁業の見本と言われている。
沿岸におけるさけ・ますふ化放流事業を推進していくため、さけます類が遡上する河川の水系毎にふ化放流事業の実施団体と海面漁業団体・業者及び関係市町により設立された団体が水系さけます増殖協会で、増殖事業の啓蒙や親魚の河川遡上を助長するための定置網の一斉網揚げ、海産親魚提供などの協力を行っている。また、県段階では各水系協会、県レベルの漁業団体、魚市場により宮城県さけます増殖協会が設立され、各水系協会への補助や事業の啓蒙活動を行っている。
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