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普及技術1(平成29年度)
分類名〔水稲〕
水稲直播栽培べんモリ種子の送風加温処理による長期保存方法(PDF:436KB)
平成28年から,べんがら(酸化鉄)を主成分とするべんがらモリブデン(べんモリ)資材でコーティングした種子による水稲湛水直播栽培が普及している(平成29年全国1,500ha<前年の5倍>,東北約820ha<前年の6倍>,宮城県285ha<前年の4倍>)。この栽培は,べんモリ資材に含まれるモリブデンが有害な硫化物イオンの生成を抑制し苗立ちを安定化させ,資材成分の酸化鉄が,コーティング後に発熱しないことから催芽種子を用いることができる。しかし,苗立ちを促進させるためコーティング後の強制乾燥は行わないので,保存可能期間は短く,保管等が取り扱いにくい。
そこで,催芽をしない浸漬種子を用いて長期保存が可能で,取り扱いが容易となるコーティング後の乾燥方法等について成果が得られたので普及技術とする。
1)作業工程は,鉄コーティング種子同様に種子予措,浸漬処理,コーティング,送風加温(酸化促進処理は行わない),保管の順に行う(表1)。
表1 送風加温処理の作業工程
2)種子は,浸漬種子(積算温度50℃程度)を用いて,市販のべんモリ資材(資材量は種子の0.1倍重と0.3倍重)にてコーティングを行い,鉄コーティング用種子乾燥機で12時間送風後,12時間35℃加温により乾燥させる。送風加温処理における乾燥後のコーティング種子重量の目安は,0.1倍重は無処理籾の1.05倍,0.3倍重は1.10倍程度とする(図1)。
3)送風加温処理後は,資材の剥離とべたつきが少なくなり,播種時の播種部位の目詰まりが軽減され,資材の保管や運搬等の取り扱いが容易となる。低温(5℃保冷庫)保存することで,べんモリ資材量0.1倍重と0.3倍重ともに,発芽率90%以上を長期間確保することができ,効率的かつ大量に製造・保存ができる(図2,表2)
4)送風加温処理種子は,発芽勢が高く,室内乾燥やハウス乾燥と比較し,ほぼ同等の苗立ちが得られる(表2)。
1)使用したべんモリ種子は,2016年産の品種「ひとめぼれ」休眠打破未処理の種子を用いた。
2)べんモリ直播栽培の基本技術は,既知見の「水稲べんモリ直播マニュアル(農研機構2016)」または「宮城県水稲べんモリ直播栽培マニュアル(宮城県2018)」を参照する。
(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場水田利用部 電話0229-26-5106)
1)研究課題名及び研究期間
宮城県における先進的水稲省力・低コスト栽培技術の確立(平成28~29年度)
2)参考データ
図1 乾燥方法別の種子重
注1)平成28年産の品種「ひとめぼれ」休眠打破処理未実施,べんモリ市販資材(0.1倍重と0.3倍重)使用。
2)コーティングは種子を水温10℃で5日間浸漬処理後にコーティングマシン(ヤンマー製YCT15)で行った。
3)乾燥方法は2016年12月上旬に表1,表2の方法で行った。
4)種子重はコーティング翌日に千粒を3反復調査した。
5)図中の()内数字は乾燥籾の無処理に対する乾燥処理後の種子重量比
図2 べんモリ種子0.3倍重の保存日数別の発芽率推移
注1)図1で処理した種子を使用し,乾燥終了後,紙袋に入れ5℃で保存し20,30,57,85,116,203,232,268,323,378日後に発芽率(室内試験,シャーレ内に100粒置床,25℃明所恒温器で3反復、7日後調査)の調査を行った。
2)発芽率90%は横棒で記載
3)べんモリ種子0.1倍重は0.3倍重と同様の傾向
表2 乾燥方法の違いによる乾燥後種子の状態等
注1)資材剥離:多(種子袋を持ち上げ,剥がれ落ちる資材が明瞭に認められる),中(資材が認められる),少(資材がわずに認められる)。
2)べたつき:多(種子を触った際,べたつきが明瞭に認められる),中(認められる),少(わずかに認められるまたは認められない)。
3)かび:有(種子表面に糸状菌等の発生が認められる),無(認められない)。
4)種子袋の積み重ね:○(問題なく可能),△(ムレ,発芽,カビ等が発生する場合がある),×(ムレ,発芽,カビ等が発生する)。
5)保存:ハウス乾燥と送風の保存期間は乾燥時の水分や保管状況により異なる場合がある。
6)発芽勢:25℃明条件で置床4日後の値。発芽率:左記条件7日後の値。苗立率Aは室内ポット試験,苗立率Bはほ場試験,NTは未実施。
3)発表論文等
a 関連する普及に移す技術
a)水稲直播栽培における鉄コーティング種子の保存可能期間(第91号普及技術)
b)苗立がよく省力低コストな水稲湛水直播土中播種法への改善-べんがらモリブデン被覆種子の利用-(第91号参資料)
c)べんがらモリブデン被覆種子(べんモリ)を用いた水稲湛水直播土中播種技術(第91号追補)(第92号参考資料)
b その他
a)平成29年度東北農業試験研究成果情報(2018)
b)菅野博英・佐々木哲・庄山寿・山根和・原嘉隆(2017),べんがらモリブデン被覆種子(べんモリ)を用いた湛水直播栽培方法の検討 第2報被覆資材と乾燥方法,日作東北支部報60,P23-24.
c)宮城県水稲べんモリ直播栽培マニュアル(2018)
4)共同研究機関
小泉商事(株)
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