普及に移す技術第93号/普及技術12
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普及技術12(平成29年度)
分類名〔農業土木〕
身近な低出力トラクタを利用してできる浅層暗渠の施工(PDF:676KB)
宮城県古川農業試験場
1 取り上げた理由
水田の汎用化利用には本暗渠の導入が不可欠である。本暗渠を施工する方法に,農家が所有する64kW(85ps)以上のセミクローラ型トラクタを利用して施工できる,浅層暗渠施工器が開発された。しかし,64kw(85ps)以上のトラクタを持つ農家に利用が限定されているため,現在普及が進んでいる37kw(50ps)から64kw(85ps)以下の低出力トラクタの利用が可能となれば,より多くの農家が利用できる。そこで低出力トラクタでも施工可能な浅層暗渠の施工方法を検討し,その結果,溝掘り機を使うことで施工が可能となったので普及技術とする。
2 普及技術
1)低出力トラクタを利用した浅層暗渠の施工は,暗渠施工位置に溝掘り機で概ね0.35~0.4cmの溝を掘削することで(図1),開削断面積が小さくなるとともに掘削時の抵抗値が低減し(図2),暗渠施工器本体にかかる負荷を低減でき,暗渠管を深さ0.45~0.5mに埋設する本暗渠の施工が可能となった(図3)。
2)低出力トラクタを利用した浅層暗渠の施工の判断目安は,溝掘り機による溝深度が概ね0.35m~0.4mであり,平均貫入抵抗値が概ね1.0MPa以下であることを確認する。このことで,掘削時の推定抵抗値が低減され,安定な施工となる(表1,図4)。
3 利活用の留意点
- 1)浅層暗渠施工器は,暗渠もみ殻疎水材の簡易開削充填機(通称モミタス)(第83号普及技術)を改良し,東北農業研究センターで開発した器械である(図5)。器械の制作図面等の器械の詳細は,東北農業研究センターHPに掲載されている。
刊行物(農研機構)(外部サイトへリンク)
- 2)溝掘りの際に発生する掘削土は,溝周辺に堆積させることで,開削作業時のトラクタ後輪で溝内に踏み入れることができ,本暗渠施工時の不要なもみ殻の投入を低減することができる(図1)。
- 3)溝掘り作業以外における全体の作業工程は,従来の方法と同じである(図5)。
- 4)試験ではロータリー式及びらせん式の溝掘り機を使用した。ロータリー式溝掘り機は,最大深度35cmタイプを使用した。1回目の掘削で30cm程度だったため,2回目に幅の拡張の掘削をし,次に深度を増加させるための掘削をし,計3回の掘削で深度平均0.38mを確保した(図6)。
らせん式溝掘り機は,最大深度30cmのタイプを使用した。らせん軸に10cmの延長オプションを取り付け施工し,1回の掘削で深度平均0.34~0.38cmを確保した(図3)。
- 5)浅層暗渠で使用するトラクタはセミクローラ型を使用する。
- 6)現地実証試験の概要は表2のとおり。現地ほ場の中に玉石や礫混じり層が含まれる場合は,施行工器が損傷する可能性があるので利用できない。
- 7)器械は一般の鉄工所で製作することができ,制作費は材料費と工賃を含めて110万円程度と見込まれる。本器械は大崎市の川名鉄工所で受注生産により製作可能となっている(2018年現在)。
- 8)貫入抵抗値の確認方法は,貫入式土壌硬度計(コーン2cm2)を使用する。貫入式土壌硬度計のレンタル料は33,750円/5日(2018年現在)。
(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場土壌肥料部 電話0229-26-5107)
4 背景となった主要な試験研究
1)研究課題名及び研究期間
汎用化水田の機能を発揮する効率的な排水改良技術の確立(平成28~平成31年度)
2)参考データ
3)発表論文等
- a 関連する普及に移す技術
- a)暗渠籾殻(疎水材)の簡易開削充填機[モミタス]の開発(第83号普及技術)
- b その他
- a)H26東北農業研究成果情報「トラクタで利用できる浅層暗渠施工器」
- b)道合ら(2017):低出力トラクタによる浅層暗渠の施工方法の開発と評価,平成29年度農業農村工学会大会講演要旨
4)共同研究機関
農研機構 東北農業研究センター
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