あれコレ!みやぎ・・・車いすバスケットボール日本選手権10連覇を成し遂げた「宮城MAX」
あれコレ!みやぎ・・車いすバスケットボール日本選手権10連覇を成し遂げた「宮城MAX」
宮城県のさまざまなオススメの場所や情報を「メルマガ・みやぎ」編集部がよりすぐってお届けするコーナーです。
今回は、仙台市をホームに活動する車いすバスケットボールチーム「宮城MAX」を紹介します。
車いすバスケットボールは、足などに障害のある選手が車いすに乗って行うバスケットボールです。使用するコート、リングの高さ、ボールなど、一般のバスケットボールと何ら変わりはありません。特有のルールとして、選手は障害の重い順に1.0から4.5までの持ち点があり、試合中の5人の合計点が14点を超えてはならない、ダブルドリブルがない、などがあります。
宮城MAXは、仙台市をホームタウンとし、17人の選手が所属する車いすバスケットボールのクラブチームです。全国各地の大会で数々の好成績を残し、今年5月には日本選手権10連覇という偉業を達成しました。地域の学校を訪問するなど、車いすバスケットボールの普及や障害者スポーツへの理解促進にも努めています。
今回は、キャプテンの豊島英(とよしまあきら)選手に車いすバスケの魅力や10連覇を成し遂げた宮城MAXの強さの秘訣(ひけつ)、今後の目標を伺いました。
- 編集部
10連覇、おめでとうございます!
年々優勝へのプレッシャーがかかると思いますが、それでも10連覇を成し遂げることができたのはなぜでしょう。
- 豊島キャプテン
毎年、優勝を目標にしていました。過去に4連覇したチームがあったので、連覇するようになってからは、5連覇が目標でした。それ以降は記録更新とともに、自分たちとの戦いで、昨年を超えるパフォーマンスをすることが目標にあります。特にここ3年は、強豪チームがそろっていて、どのチームが優勝するか分からないほど、高いレベルの苦しい試合が続きました。それでも勝てたのは、優勝し続けてきた自信や、鍛えてきたメンタリティー、ゲームの運び方など、自分たちの経験が糧となっています。
私も含め海外に短期間移籍してレベルアップを図る選手も多いので、チーム作りが始まったのは大会の1カ月前でした。メンバー一人一人が個人の能力を高めて大会に臨んだこと、何より連覇が途切れないよう皆が強い気持ちを持っているから、続けられているのだと思います。
- 編集部
海外に短期間移籍ですか。
- 豊島キャプテン
私はドイツのチームで半年間プレーしていました。海外の選手は、体のつくりや腕の長さ、体の大きさが日本人と違います。我の強さも。経験を積んで、もっと上手くなりたいと思い、自分からドイツチームに飛び込みました。通訳の方がいるわけではないので、自分でなんとか英語を理解してチームに溶け込みプレーしました。過去に私の他に1人が海外のチームに短期移籍していました。
- 編集部
ヘッドコーチを務める岩佐義明さんは、このチームを前人未到の10連覇に導いた方と伺いました。岩佐コーチの下でプレーするために移籍する選手も多いのではないでしょうか。
- 豊島キャプテン
現在、岩佐は宮城MAXから退き、女子日本代表のヘッドコーチをしております。9連覇まで宮城MAXを指揮していました。このチームでやりたいと思う選手が、移籍してくることがあり、毎年新しい選手の力が加わり変化してきました。私もこの環境を求めて移籍してきたその一人です。
- 編集部
キャプテンとしてチームをどのようにまとめ、導いていますか。
- 豊島キャプテン
宮城MAXには現役の日本代表選手やその元代表選手が多い反面、そのレベルまで届かない選手もたくさんいます。試合に出たい、優勝したい、優勝しなきゃ駄目、一人一人思っていることが違いますが、選手権10連覇のチームとして「負けられない」という意識をそれぞれが持っているので、私が何も言わなくても、皆が自然と高みを目指してそこに向かっていると思います。選手一人一人のハートの強さが宮城MAXの魅力だと思います。
- 編集部
岩佐コーチの指導力、選手の皆さんの「負けられない」という気持ちが宮城MAXをここまで強くさせ、10連覇を成し遂げるまでのレベルに達したのですね。
レベルが高いチームなので、入会するには条件がありますか。
- 豊島キャプテン
年齢制限等の条件はありません。高校生もいれば、40代の選手もいます。宮城MAXに入りたければ、基本的に受け入れています。特に今は、30代、40代の選手が多いので、若い選手に加入してほしいです。メルマガ読者の皆さん、宮城MAXは20代の若い選手とマネージャーを募集しています。ぜひ気軽にお越しください!
- 編集部
宮城MAXは、いつもどこの体育館で練習をしていますか。
- 豊島キャプテン
週3回、火曜日・木曜日・土曜日に仙台市内の体育館を中心に練習しています。ただ、仙台市内の体育館は予約が取れないことも多いので、練習日を変更したり、市外の体育館を借りたり、工夫しながら練習に励んでいます。場所によっては、ゴールを自分たちで設置しなければならず、そういった苦労はあります。
- 編集部
そこでマネージャーが必要になるんですね。
選手の皆さんは、働きながら車いすバスケを続けていますか。
- 豊島キャプテン
働きながらバスケをしている選手が大半です。私も数年前までは宮城県警で働いていました。5年ほど前からアスリート採用する企業が多くなり、日本代表に選ばれる選手たちの多くはアスリート採用によって、バスケに専念できる環境が整ってきたと感じています。私は株式会社WOWOWに採用され、月に一度の出社、それ以外は練習に励んでいます。
- 編集部
豊島キャプテンが車いすバスケを始めたのは中学生のころと伺いました。これだけ長くバスケを続けられる、車いすバスケの魅力を教えてください。
- 豊島キャプテン
車いすバスケの格好良さに引かれて始めました。初めは、上手になりたいという一心で練習に励んでいましたが、あるときから日本代表選手になりたい、代表になったら結果を出したいと、どんどん新しい目標ができるので、次の目標に向かって取り組み続けた結果、現在に至っています。
積み重ねた練習の日々や、宮城MAXのみんなで力を合わせて優勝を手にしたことも、思い返すととても良い思い出です。
- 編集部
このスポーツは、車いすを激しくぶつけ合いながらプレーするイメージですが、恐怖はありませんか。
- 豊島キャプテン
車いす同士がぶつかるのは車いすバスケでは日常茶飯事なので全然怖くありません。映像や、本で見るよりも、実際に見た方が激しさが伝わりますし、車いすバスケの魅力を肌で感じてもらえると思います。今年の日本選手権決勝には、約6,000人の観客が応援に来てくれました。車いすバスケは障害者スポーツの中でも人気スポーツだと思います。
- 編集部
小中学校等を訪問して、車いすバスケを体験する機会をつくり、講演をしていると伺いました。普段、触れることの少ない子どもたちとの時間はどうですか。
- 豊島キャプテン
車いすバスケの魅力や、車いすバスケをここまでやってきた経験談を講演することが多いです。ただ、プレーヤーとしては、車いすバスケットボールを知ってもらい、楽しんでもらう、一競技として見てもらえたらありがたいです。子どもたちに遊び感覚で試合をさせると、本気になって楽しそうにプレーをするので、スポーツはやはり良いなと気付かされます。初心に帰るきっかけや元気をもらいます。子どもたちに、「テレビ見ます」「応援しに行きます」と言ってもらえるととても嬉しくなります。
- 編集部
宮城MAXの今後の目標を教えてください。
- 豊島キャプテン
日本選手権で優勝し続けることが一番の目標です。あとは、今いる選手がレベルアップすること、選手の皆が一緒に上手になっていくのを手助けするのが私の役割だと思っています。連覇するに当たって、チーム全体が強くならないと、新しい選手も入ってきませんので。宮城MAXはこれからも進化し続けます!
編集部から一言
私が全身を使ってシュートして、やっと届くような高さにあるバスケットボールのリング。これを座った状態でシュートし、決められるのだから、すごい体格の筋肉質な方だと想像してインタビューに伺いました。ところが豊島キャプテンは、意外にもスマートな体格の爽やかな方でした。
車いすバスケをテーマにした漫画「リアル」で、なんとなくこのスポーツを理解していたつもりでしたが、豊島キャプテンの話を伺い、想像以上に熱いスポーツだと感じました。
仙台で試合が行われることは少ないそうですが、開催される際は、ぜひ観戦したいと思います。