ここから本文です。
平成15年3月24日命令書交付
(この命令は労働組合法に基づく和解の認定により失効しています。)
本件は,会社がX組合組合員に対し,
(1)組合バッジの不着用及び取外しを強要したこと,
(2)組合バッジ着用者を就業規則違反であるとして訓告,厳重注意に処したこと,
(3)平成5年度期末手当の支給に際し,上記(2)の処分等を理由として減額支給又はゼロ査定により支給したこと
が,不当労働行為であるとして争われた事件である。
組合バッジ着用は,一般顧客に重大な支障を及ぼすものではないが,会社が,労務の提供という側面から,これを就業規則違反とすることはやむを得ない。
しかし,国鉄時代に組合バッジ着用が問題となったことはなく,着用規制により,労使間に新たな対立が生じたことが認められる。
組合バッジの着用規制の問題については,国鉄時代の取扱いを変更し組合バッジ着用を規制するに至った手続において,組合に対し十分な配慮がなされないまま,組合員が圧倒的多数規制の対象になり,その後も会社は問題解決への努力を怠ったことから,組合において大量の処分者が発生した。
国鉄時代から,公式の席や文書等で,組合を非難してきた会社幹部らの発言は,国鉄分割民営化反対の方針をとり続け会社発足後も対立姿勢を変えない組合に対する嫌悪感・支配介入意思の表れである。その後の本申立てに近い時点の会長等幹部の発言にもみられるように,会社は依然として組合を嫌悪,敵視しており,これが組合バッジ着用規制の問題に影響を及ぼしていた。
また,秩序維持という目的から逸脱した取外し強要が行われ,訓告処分による不利益性の程度が違反内容と比較して著しく均衡を欠いていたことが認められる。
以上のことを考慮すると,会社が就業規則違反を理由として組合員を処分したことは,その主たる動機において支配介入意思があったとみるのが相当である。
平成5年当時,組合バッジ着用の就業規則違反者は減少していたことから,分割民営化直後の労使対立が激しかった状況とは相違する旨会社は主張するが,組合バッジ着用者の減少は,これまでの組合員に対する取外し強要や処分の結果生じたものであり,会社のこれまでの組合バッジ着用規制に係る意図や対応を不問に付すことはできない。
以上のとおり,平成5年に行われた組合バッジ着用を理由とする訓告処分は,これまでの労使関係並びに処分に至る状況及び処分による影響を総合的に考慮した場合,組合バッジ着用規制を巡る対立関係を契機とした組合運営に対する支配介入であり,労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
上記(1)で判断したとおり不当労働行為に該当するので,期末手当の額を減じられたことには理由がなく,是正されなければならない。
正当な組合活動をしたことを理由に不利益取扱いをしたとか,会社が組合の運営に介入したとする疎明はなく,本件期末手当支給に関し是正し救済しなければならない理由は見当たらない。
平成5年度期末手当の支給状況によれば,組合員のうち増額支給を受けた者はいなかったが,他組合に所属する社員のうち5分の2前後の者が増額支給を受けており,その間に格差が認められる。
期末手当の支給額算定に係る成績率査定は人事評定を基に決定されるが,その第一次評定を行う助役のほとんどは他組合に所属しており,人事評定が公正に行われたか否かには疑念が残る。
他方,上記ア,イ以外の組合員は,期末手当ごとに労使協定で決定された基準額が支給されており,増額支給を受けるためには,賃金規程に定める増率査定要件を充足する必要があるが,申立人らは,会社が期末手当を増額支給するための一要素とする各種施策の参加に消極的であり,増率査定を受け得る根拠が不十分である。
よって,社員が受け取る期末手当の支給額に格差があることをもって,組合間差別による不当労働行為であるとまでは言えない。
お問い合わせ先
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください