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令和2年10月6日命令書交付
<中央労働委員会関係命令・裁判例データベース>
労働委員会命令データベース(https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/mei/m12115.html)(外部サイトへリンク)
本件は,
(1)被申立人と業務契約を締結している会社の社長であり,外部の共済組合代表でもあるB社会保険労務士が,申立人の組合員に対し組合脱退届の用紙を配付したこと,
(2)申立人が申し入れた社内施設の利用を被申立人が拒否したこと,
(3)申立人の団体交渉申入れに対して被申立人が応じなかったこと,
(4)被申立人が申立人の組合費に係るチェック・オフを停止したこと,
(5)被申立人が申立人のA執行委員長に平成30年夏季賞与を支給しなかったこと
が労働組合法第7条第2号等の不当労働行為に該当するとして,救済が申し立てられた事件である。
(1)被申立人は,申立人の組合員に組合脱退届の用紙を配付すること,組合員を他の労働組合に加入させようと
すること,組合の団結を維持するために加入継続の意思確認を行う申立人の行為に対して抗議する文書を作
成し,申立人に配付するなどして組合員の脱退を既成事実化するための活動をすること,正当な理由なく組合
の施設利用を拒否することにより,申立人の運営に支配介入してはならない。
(2)被申立人は,申立人が申し入れた団体交渉に,速やかに,かつ,誠実に応じなければならない。
(3)被申立人は,本命令書写の交付の日以後,速やかに,チェック・オフに関して申立人と誠実に協議しなけれ
ばならない。
(4)被申立人は,A執行委員長に対する平成30年夏季賞与について公正かつ妥当に査定を行い,それに基づき支
給しなければならない。
(5)被申立人は,本命令書写しの交付の日から10日以内に,日本産業規格A列4番以上の大きさの白紙に,不当労
働行為と認定された行為を繰り返さない旨を記載した文書を,押印の上,申立人に対して交付しなければなら
ない。
(6)申立人のその余の申立てを棄却する。
被申立人は,共済組合と協調して行動しており,共済組合の説明会においてB社会保険労務士を通じ,組合員に脱退届用紙を配付するという行為を行い,A執行委員長を除くS工場の全組合員が脱退届を提出するという状況を招いたことが認められる。さらに,組合員がC組合に加入したという形態を取ることによりユニオン・ショップ協定に基づく組合員の解雇を回避するため,B社会保険労務士を介して組合員をC組合に加入させようとしたと認められる。その後も被申立人は,C組合と労働協約を締結し,団結を維持するために加入継続の意思確認を行う申立人の行為に対して抗議する文書を出すなど組合員の脱退を既成事実化するための活動を,共済組合及びC組合と協調して行っていることが認められる。
よって,B社会保険労務士及び共済組合によりなされた一連の行為は,これらの者が被申立人と無関係に行ったものではなく,申立人の弱体化を目的として被申立人と一体的に行われた行為と認められるから,被申立人による労働組合法第7条第3号の不当労働行為(支配介入)に該当する。
申立人が申し入れた交渉事項である,共済組合に関する事項や被申立人による組織介入の有無,労使関係のルールという事項は義務的団交事項に当たり,団体交渉に応じなかった被申立人の主張に正当な理由があるとは認めらないから,労働組合法第7条第2号の不当労働行為(団体交渉拒否)に該当する。
申立人の組合活動のため,社内施設利用の必要性が相当程度認められる一方で,当該組合活動により被申立人に生ずる支障の程度はさほど大きくない中で,被申立人が反組合的意思及び団結を妨げる意図の下,施設利用を拒否していることが認められることから,被申立人が申立人による社内施設の利用を拒否する行為は,施設管理権の濫用であると認められる。
よって,被申立人による社内施設の利用を拒否する行為は,労働組合法第7条第3号の不当労働行為(支配介入)に該当する。
前述した状況の下,チェック・オフ規定のある労働協約を締結している申立人に対して,チェック・オフ停止に関する連絡・確認を一切行わず,申立人を無視し,一方的にA執行委員長を除く全組合員のチェック・オフを停止した行為は,申立人に対して誠実に手続きを進めたとは言い難く,申立人の弱体化を目的とした行為であると認められるから,労働組合法第7条第3号の不当労働行為(支配介入)に該当する。
A執行委員長に係る平成30年夏季賞与の不支給は合理的な理由によるものであるとは認められず,被申立人が申立人及びその代表であるA執行委員長の組合活動を嫌悪し,申立人が本件救済申立てを行ったことで更に嫌悪を深めて不利益な取扱いをしたものと推認せざるを得ないから,被申立人が申立人のA執行委員長に平成30年夏季賞与を支給しなかったことは,労働組合法第7条第1号及び第4号の不当労働行為(不利益取扱い,報復的取扱い)に該当する。
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