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掲載日:2022年3月3日

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宮城労委平成21年(不)第2号事件

平成25年10月29日命令書交付

<中央労働委員会関係命令・裁判例データベース>
労働委員会命令データベース(https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/mei/m11305.html)(外部サイトへリンク)

1.事件の概要

(1)本件は,T社が会社解散に伴い組合員3名を解雇したことは偽装解散であり,労働組合法第7条第1号(不利益取扱い)の不当労働行為に該当するとして,救済申立てが行われた事件である。

(2)本件申立て後,組合は,T社と,T社から事業を引き継いだH社は実質的同一性を有しており,H社は組合員3名の使用者として,T社が行った不当労働行為の責任を負う旨主張して,H社を当事者とする追加申立てを行い,当委員会は,H社を当事者として追加した。

2.命令主文の要旨

本件申立てをいずれも棄却する。

3.判断の要旨

(1)T社の被申立人適格について

T社には清算時に残余財産が存在していたが,その時点で既に係属していた本件において,組合が主張する解雇が不当労働行為と認定され,バックペイないしポストノーティスを命じられた場合には,その実行可能性が十分存在していたと考えられるから,T社は組合に対し債務を負担する可能性が存在しないことが確定するまでは,残余財産を株主に分配して清算を結了することはできないと言わざるを得ない。
したがってT社の清算手続きは,実体的には結了しておらず,T社の被申立人適格は,これを認めるのが相当である。

(2)T社の不当労働行為意思について

T社は,以下のとおり,本件解雇について不当労働行為意思を有していたものとは認められない。

  • T社代表取締役Y1が組合に対し,漠然とした不信感ないしは嫌悪感を有していたとしても,その程度では不当労働行為の意思とまでは評価することはできない。
  • Y1の,現在の工場や設備などは解体撤去し,辞める人が出るのもやむを得ない旨の発言は,Y1が認識している範囲で今後の経過を説明したに止まり,解雇ないしは解雇の予告として何らかの法的効果が発生する意思表示とは到底考えられないし,Y1がこれらの発言をしたことから,同人において,申立人組合を嫌悪し排除する等の意思を有していたと認めることはできない。
  • 組合は,T社から提供された資料等を突き返しており,労働条件についての話し合いを拒否していると見られてもやむを得ない行動を取っている経過に照らすと,T社の姿勢だけが不当とも言えない。
  • T社は,H社に対する事業用資産等の譲渡によって,事業継続不可能な状態に陥ったことから,真に会社を廃止する意思に基づき会社を解散し,清算手続きを行ったものであり,解散理由が存在していたと認められる。
    したがって,会社の解散を理由とする本件解雇は,原則として客観的及び合理的な理由があり,さらに,従業員に対する退職金も支払われており,その他,本件解雇に手続き的瑕疵も認められないから,社会通念上相当として是認できる場合に当たるというべきである。

(3)T社とH社の実質的同一性について

T社とH社は,事業譲渡前にも事業譲渡後においても,組織,役員構成,目的,設立経過,営業実態等において別個の会社であり,解散したT社が,人的・物的関係において企業そのものの実態が変更されることなくH社に承継され,H社の経営等に対して事実上の支配力を及ぼし得ると評価できるような事情は認められないから,T社とH社の間に実質的同一性を認めることはできない。

(4)偽装解散妥当性について

T社代表取締役Y1が組合嫌悪等の意思に基づき,H社を支配下において,製品の製造に必要な機械,備品や商標権等を組合の影響力が及ばないH社に譲渡し,T社を事実上解散に至らしめ,従業員である組合員3名を解雇したという事情は認められないから,T社の解散は偽装解散とは認められない。

(5)H社の不当労働行為の成否について

T社による本件解雇が不当労働行為に該当しないため,T社の不当労働行為責任をH社が負うか否かについては判断する必要がない。

お問い合わせ先

労働委員会事務局審査調整課 審査班

宮城県仙台市青葉区本町3丁目8番1号(宮城県庁17階北側)

電話番号:022-211-3782,3786

ファックス番号:022-211-3799

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