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令和3年2月19日命令書交付
(この命令は労働組合法に基づく和解の認定により失効しています。)
<中央労働委員会関係命令・裁判例データベース>
労働委員会命令データベース(https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/mei/m12175.html)(外部サイトへリンク)
本件は,法人(被申立人)による以下の(1)から(5)の行為が,それぞれ不当労働行為に該当するとして,当委員会に対し救済が求められた事案である。
職場復帰を求めるA組合員に対しこれを認めないことは同人にとって不利益な取扱いであることは明らかであり,たとえ給与が支払われていても,職場に就労できないことによる精神的な不利益及び職務上の経験を積む機会を失う職務上の不利益があるといえることから,法人がA組合員に対する自宅待機命令を継続していることには不利益性が認められる。
組合により掲載,配布されたホームページ及びビラの内容は概ね真実と認められ,法人の名誉・信用等への不相当な侵害や役員・管理職等に対する不相当な個人攻撃や誹謗中傷に及んでいるとまではいえない。また,その目的,態様も組合活動として社会通念上許容される範囲内のものであり,組合の活動は,労働組合の正当な行為であると認められる。
A組合員が勤務することによる法人業務への支障があるとする法人の主張はA組合員に対する自宅待機命令を継続する正当な理由とは認められないこと,及び法人は組合に対する嫌悪の情に基づき自宅待機命令を継続していると認められることから,法人は不当労働行為意思に基づいて自宅待機命令を継続していると言わざるを得ない。
以上を総合すれば,法人が,A組合員の自宅待機命令を継続していることは,労働組合による正当な組合活動をしたこと又は組合員であることの故をもって行った労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当する。
組合が申し入れたA組合員の職場復帰及び組合員の未払賃金に関する交渉事項は義務的団体交渉事項であり,これらの交渉事項について,議論が尽くされていたとは認められず,法人は団体交渉に応じる義務がある。また,事務的ミスにより申入書が伝わらなかったものであり恣意的に遅延したのではないとの法人の主張は,その状況から回答が遅延したことの正当な理由にはならない。
よって,組合が行った団体交渉申入れに回答期限までに回答せず,更に1か月以上回答しなかった法人の対応は,労組法第7条第2号の団体交渉拒否に該当する。
組合員の未払賃金に関する事項は義務的団体交渉事項であり,法人には,組合の要求や主張に対しその具体性や追求の程度に応じた回答や主張をなし,それらにつき論拠を示したり,必要な資料を提示したりする義務があるにもかかわらず,法人は,訴訟を提起することを理由に話合いや資料の提出に応じていない。さらに,法人は裁判で争うと主張しながら,実際に訴訟を提起したのは約10か月も後であるなど,その実質は,話合いや根拠資料の提出をいたずらに引き延ばしていただけであり,法人は誠実に団体交渉に応じているとはいえない。
そもそも,たとえ訴訟が係属し,当該訴訟と団体交渉の中心的争点が共通であるとしても,これが団体交渉に応じない正当な理由として肯定されるならば,使用者はいつでも提訴すれば団体交渉を拒否することができることになるから,法人の主張は,団体交渉に応じない正当な理由とは認められない。
よって,法人が,団体交渉において,訴訟を提起することを理由に未払賃金に関する交渉に応じないことは,労組法第7条第2号の団体交渉拒否又は不誠実団交に該当する。
法人の発言は,組合及びA組合員に対し,A組合員が職場に復帰したければホームページ掲載やビラ配布などの広報活動を行わないよう求めるものであり,組合活動に萎縮効果を与え,妨害するなどの影響を及ぼすものであったと認められる。
よって,団体交渉における法人の発言は,A組合員を復職させたければ組合に広報活動を止めるよう求めるものであって,労組法第7条第3号の支配介入に該当する。
法人が職員らを集めて行った組合の活動に関する発言は,労働組合活動一般に対する批判にとどまらず,申立人組合に対する批判を含んでいると認められ,また,組合に加入すれば非難や批判にさらされることとなると職員に感じさせ,組合へ加入することを威嚇し,法人内における組合活動を阻害する効果を有するものといえること等から,組合の組織,運営や組合活動に悪影響を与えるものであることが明らかである。
よって,法人が職員らを集めて行った組合の活動に関する発言は,労組法第7条第3号の支配介入に該当する。
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